化学療法が進行性中皮腫患者の生存やQOLを改善しない可能性

キャンサーコンサルタンツ
2008年5月

多施設共同ランダム化臨床試験に携わったイギリスとオーストラリアの研究者らは、進行性胸膜中皮腫に対する化学療法が生存やQOLを改善しない可能性があると結論した。この試験の詳細は2008年5月17日号のLancet誌に掲載された。

胸膜中皮腫は、アスベストに曝露することによりひき起こされる稀で致死的な癌のひとつである。米国では年間約2,500件の新たな症例が発生する。この疾患は診断の時点で進行していることが多いため、胸膜中皮腫患者の平均的な生存期間は1年を大きく下回っている。最近の諸試験により、化学療法の方が支持療法よりもQOLを改善し、生存期間を延長しうることが示唆されている。

最新の試験では、進行性胸膜中皮腫患者409人を対象に、積極的な対症療法(ASC)を2種類の化学療法レジメンのうちのひとつ(マイトマイシン、vinblastineおよびシスプラチン[MVP] または ビノレルビン(Vinorelbine)単剤)と比較した。以下の表にこの試験の主な観察結果をまとめる。

 

ASC

MVP

Vinorelbine

患者数

奏効

0%

10%

16%

安定

0%

62%

59%

死亡

97%

96%

95%

生存期間中央値

7.6カ月

8.5カ月

9.5カ月

無増悪生存期間

5.1カ月

5.1カ月

6.2カ月

QOLのパラメータに関しては3つのグループに群間差は認められなかった。著者らは、支持療法に化学療法を追加しても、生存やQOLに影響を及ぼさなかったと結論した。しかし、ビノレルビンは支持療法やMVP化学療法よりも効果的である可能性が示唆された。

コメント:

上記のデータは中皮腫が現行の化学療法をもってしても致死的であることを示している。この試験結果が化学療法剤の選択が適切でなかったためで、ゲムシタビンをベースとした化学療法を用いていれば結果は異なっていたであろうという議論もありうるが、ほとんどの試験で、この疾患に対する化学療法の利点はほんのわずかであることが示されている。

参考文献: 
Muers MF, Stephens RJ, Fisher P, et al. Active symptom control with or without chemotherapy in the treatment of patients with malignant pleural mesothelioma (MS01): a multicentre randomized trial. The Lancet. 2008;371:1685-1694.


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翻訳担当者 片岡

監修 小宮 武文(NCI研究員)

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