【ASCO2024年次総会】限局型小細胞肺がんの化学放射線療法後のデュルバルマブは生存率を改善

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解(引用)

「限局型の小細胞肺がん(SCLC)患者の標準治療は1980年代から大きく変わっていません。この試験では、患者に従来の化学療法と放射線療法後に免疫療法を追加したところ、生存期間が長くなり、がんの再発の可能性が低くなりました」 - Lauren Byers医師、MDアンダーソンがんセンター胸部/頭頸部腫瘍内科教授兼胸部部門長。

研究要旨

目的限局型(非転移性)小細胞肺がん(LS-SCLC)
対象者過去42日以内に化学放射線療法を完了した限局型小細胞肺がん患者730人
主な結果化学放射線療法後のデュルバルマブによる地固め療法は、現在の標準治療と比較してLS-SCLC患者の生存期間延長に貢献
意義2024年、米国では約234,580人が新たに肺がんと診断され、約125,070人が死亡するとアメリカがん協会は推定している。これらの肺がんの約15%は小細胞肺がん(SCLC)である。
SCLC患者の約3分の1は限局型と診断される。化学放射線療法による積極的な治療にもかかわらず、限局型SCLCの5年相対生存率は18%から30%である。

化学放射線療法後のデュルバルマブによる地固め療法(最初の治療でがんの増殖が止まった後に短期間行う治療)は、現在の標準治療である化学放射線療法単独と比較して、限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)患者の生存期間を延長するのに有効であることを示す新しい研究結果が発表された。本研究は、5月31日から6月4日までイリノイ州シカゴで開催される2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

研究について

「局所進行切除不能および転移性非小細胞肺がん(NSCLC)や、最近では早期切除可能NSCLCで免疫療法の進歩が見られます。また、進行あるいは転移性の小細胞肺がん(SCLC)でも進歩が見られます。本試験は、免疫療法が限局型(非転移性)のSCLC患者に有効であることを示した初めての試験です」と、David R. Spigel医師(本試験の筆頭著者であり、Sarah Cannon Research Institute(テネシー州ナッシュビル)の最高科学責任者)は述べた。

この第3相ADRIATIC試験の中間解析は、デュルバルマブ投与群(264人)とプラセボ投与群(266人)の転帰を比較したものである。すべての患者は過去42日以内に化学放射線療法を完了していた。一部の患者は、脳内のがんの進行を抑えるために、予防的頭蓋照射と呼ばれる頭部への直接放射線療法も受けた。

主な知見

・ 2024年1月15日現在、全生存期間(OS)中央値はデュルバルマブ群で約56カ月、プラセボ群で約33カ月であった。
・ 無増悪生存期間(PFS)中央値はデュルバルマブ群で約17カ月、プラセボ群で約9カ月であった。
・ 36カ月OS率はデュルバルマブ群で約57%、プラセボ群で約48%であった。
・ 24カ月PFS率はデュルバルマブ群で約46%、プラセボ群で約34%であった。

重度の副作用発生率は両群とも同程度であった(24%)。副作用のため治療を中止した患者は、デュルバルマブ群約16%に対してプラセボ群では11%であった。放射線療法および免疫療法の既知の副作用である肺臓炎を発症した患者は、デュルバルマブ群約38%に対してプラセボ群では30%であった。グレード3または4の重度の肺臓炎の発生率は、両群間で同程度であった(デュルバルマブ群3.0%、プラセボ群2.6%)。

次のステップ

研究者らは、デュルバルマブとトレメリムマブを併用した患者でより良い結果が得られるかどうかを評価するため、試験参加者の追跡調査を継続する予定である。また、LS-SCLC患者において、これらの薬剤でより良好な治療成績が得られるグループがあるかどうかを調べるために、さまざまな患者群を分析する予定である。

本研究はアストラゼネカ社から資金提供を受けた。

  • 監訳 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日

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