サリドマイドはエトポシドおよびカルボプラチン療法による小細胞肺癌患者に有益ではない

キャンサーコンサルタンツ
2009年8月

サリドマイド(サロミド®)と化学療法の併用は、小細胞肺癌患者の生存を改善せず、かつ化学療法のみの治療に比べ血栓が生じるリスクが高いことが、英国の研究者らによって報告された。研究の結果は、Journal of the National Cancer Institute誌の8月号に掲載された。[1]

小細胞肺癌(SCLC)は全肺癌の約15-20%を占める。SCLCの治療には通常は化学療法が用いられるが、治療後多くの癌は再発または進行する。

サリドマイドは血管の発達を抑制する薬剤である。この薬剤は癌の酸素と栄養分を奪うことによって癌の発育を阻止或いは抑制する可能性がある。サリドマイドは多発性骨髄腫の治療を承認されている。

先に発表されたフランスの研究では、化学療法にサリドマイドを追加すると、進展型SCLC患者の生存が改善されることが報告されていた。この臨床試験は、はじめにPCDE(シスプラチン、シクロホスファミド、エトポシドおよびドキソルビシン)として引用される投薬計画の化学療法を最初に受けた119人の進展型SCLC患者を対象として実施された。患者は化学療法の各段階で予防的にNeupogen®(フィルグラスチム)を投与された。患者がPCDEに対して抗腫瘍効果を示した場合は、その後、患者は、追加のプラセボを加えたPCDE或いは、サリドマイドとPCDEによる治療を受けた。1年後、サリドマイド投与群は49%が生存したのに対し、PCDE単独投与群はわずか30%であった。サリドマイド投与群は1年後も半数近くが生存していたのに対し、PCDE単独投与群のそれは約9ヶ月であった。

SCLCの治療において化学療法と併用するサリドマイドを評価するために、英国の研究者らは、第3相の臨床試験を724人の患者を対象として実施した。うち約半数は限局型SCLCで、残りの半数は進展型SCLC患者であった。

全患者がエトポシドおよびカルボプラチンによる化学療法を3週間おきに6クール受けた。加えて、サリドマイドのカプセル、またはプラセボを最長2年間にわたって毎日投与を受けた。

● 全生存期間は、プラセボ投与群は10.5ヶ月、サリドマイド投与群は10.1ヶ月だった。癌の進行がなかった患者数も、両グループでほとんど差はなかった。

● 病期別の分析では、サリドマイドは進展型SCLC患者の全生存期間を悪化させることがわかった。限局型SCLC患者の場合、全生存期間に特筆すべき影響はもたらさなかった。

● 血栓発生率(主に肺塞栓および深部静脈血栓症)は、サリドマイド投与群がプラセボ投与群よりも高かった。血栓は、サリドマイド投与群の19%、プラセボ投与群の10%で発生した。

コメント:以上の結果から、化学療法にサリドマイドを追加は、エトポシドおよびカルボプラチン療法による小細胞肺癌患者には有効でなく、さらに悪影響を及ぼしうることがわかる。しかしながら、フランスの研究では、4剤による導入化学療法後にサリドマイドが投与されていれば、サリドマイドが有効であることが暗示される。したがって、サリドマイドがSCLCの治療に確固として無益であるとは結論できない。

参考文献:
[1] Lee SM, Woll PJ, Rudd R et al. Anti-angiogenic therapy using thalidomide combined with chemotherapy in small cell lung cancer: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Journal of the National Cancer Institute. 2009;101:1049-1057.


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翻訳担当者 横山 加奈子

監修 古瀬 清行(呼吸器内科)

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