ゾリンザ®は、進行性NSCLCの治療に用いるパラプラチン®とタキソール®併用の有効性を高める

キャンサーコンサルタンツ
2009年11月

初回治療を受けるステージ3B~4期の非小細胞性肺癌(NSCLC)患者を対象に、パラプラチン® (カルボプラチン)とタキソール® (パクリタキセル)にゾリンザ® (ボリノスタット)を併用すると効果が改善することが、多施設米国臨床試験に関わる研究者らによって報告された。本試験の詳細は、Journal of Clinical Oncology誌の2009年11月23日付電子速報版に掲載された[1]。

ゾリンザ™はヒストン脱アセチル化酵素の低分子阻害剤で、皮膚T細胞リンパ腫の治療に米国食品医薬品局(FDA)から認可されている。再発NSCLC患者を対象としたゾリンザ単独投与の第2相試験の結果、腫瘍縮小効果はみられなかったが、腫瘍増殖抑制期間の延長が認められた[2]。この所見から、NSCLCの治療として既知の活性化学療法剤にゾリンザを併用する試験が行われることとなった。

本試験は、未治療の進行性NSCLC患者94人を対象に、タキソールとパラプラチンに追加併用したゾリンザを評価する、第2相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であった。奏効率はゾリンザ投与群で34%、プラセボ投与群では12.5%であった。無増悪生存期間中央値は、ゾリンザ投与群で6.0カ月、プラセボ投与群では4.1カ月であった(p=0.48)。全生存期間は、ゾリンザ投与群で13.0カ月、プラセボ投与群では9.7カ月であった(P=0.17)。

コメント:ゾリンザは、タキソールとパラプラチンを併用する治療法の有効性を高めると考えられ、毒性の有意な増強はともなわないとみられる。

参考文献:
[1] Ramalingam SS, Maitland ML, Frankel P, et al. Carboplatin and paclitaxel in combination with either vorinostat or placebo for first-line therapy of advanced non-small-cell lung cancer. Journal of Clinical Oncology [early online publication]. November 23, 2009.
[2] Traynor AM, Dubey S, Eickhoff JC, et al. Vorinostat (NSC#701852) in patients with relapsed non-small cell lung cancer: a Wisconsin Oncology Network phase II study. Journal of Thoracic Oncology. 2009;4:522-526.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 山下 裕子

監修 後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効の画像

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させるの画像

先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解(引用)
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)の画像

世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)

特集:術前・術後の免疫療法、HER2およびEGFR遺伝子変異を標的とした治療など、肺がん治療における有望な臨床的進歩テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは...
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長の画像

肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解「過去15年間にわたり、ミシシッピ・デルタ中心部における質改善の取り組みは、この高リスク集団の...