FDAがHER2変異非小細胞肺がんにトラスツズマブ デルクステカンを迅速承認

2022年8月11日、FDA(米国食品医薬品局)は、FDAが承認した検査法により活性化ヒト上皮成長因子受容体2HER2(ERBB2)変異が検出された切除不能または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)で、全身療法歴のある成人患者を対象としたトラスツズマブ デルクステカン(販売名:エンハーツ、第一三共株式会社)の迅速承認を行った。本剤は、HER2変異NSCLCに対して承認された初めての薬剤である。

また、FDAはエンハーツのコンパニオン診断薬として、Life Technologies Corporationの Oncomine™ Dx Target Test(組織)およびGuardant Health社のGuardant360® CDx(血漿)を承認した。血漿検体に変異が検出されない場合は腫瘍組織の検査を行わなければならない。

エンハーツは複数の試験において6.4 mg/kg用量(n=152)で評価されたが、ランダム化用量設定試験において5.4 mg/kg用量(n=102)と判断された。奏効率は、用量間で一貫していた。高用量群では間質性肺疾患/肺臓炎の増加が認められた。承認された推奨用量である5.4 mg/kgを3週間ごとに静脈内投与した場合の有効性の結果は以下のとおりである。

迅速承認のための有効性は多施設共同マルチコホートランダム化盲検用量最適化試験であるDESTINY-Lung02に基づいている。適格患者は、全身療法後に増悪した切除不能または転移性HER2変異非扁平上皮NSCLCを有する患者である。腫瘍検体における活性化HER2(ERBB2)変異の存在に基づいてエンハーツによる治療を行う患者を選択した。対象患者には、許容できない毒性または病勢進行が認められるまでエンハーツ5.4 mg/kgを3週間ごとに静脈内投与した。

DESTINY-Lung02で主要な有効性が確認された52人の年齢中央値は58歳(30~78歳)で、女性は69%であった。アジア人79%、白人12%、その他の人種10%であった。主要有効性評価項目は、RECIST v1.1を用いた盲検下独立中央判定による客観的奏効率(ORR)および奏効期間(DOR)とした。確認されたORRは58%(95% CI: 43, 71)およびDORの中央値は8.7カ月[95% CI: 7.1,推定不能(NE)]であった。

臨床検査値異常を含めた主な有害反応(発現率20%以上)は、悪心、白血球数減少、ヘモグロビン減少、好中球数減少、リンパ球数減少、血小板数減少、アルブミン減少、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、疲労、便秘、食欲減退、嘔吐、アルカリホスファターゼ増加、および脱毛症であった。添付文書には、間質性肺炎および胚・胎児毒性のリスクについて医療従事者に助言する枠囲み警告が記載されている。

エンハーツの全処方情報はこちらを参照。

監訳:川上 正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)

翻訳担当者 三宅 久美子

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性の画像

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性

世界的に肺がんはがんによる死亡原因のトップであるが、その心理的、身体的な影響についてはほとんど研究されていない。オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院および...
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライトの画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト

ESMOアジア会議2024は、アジア地域における集学的腫瘍学に特化した年次イベントである。新しい治療法、特定のがん種の管理に関する詳細な議論、アジア全域を対象とした臨床試験、アジア地域...
米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認の画像

米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認

2024年12月4日、米国食品医薬品局は、以下の成人を対象にzenocutuzumab-zbco[ゼノクツズマブ-zbco](Bizengri[販売名:ビゼングリ]、Merus NV社...
STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効の画像

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...