頭頸部がんサバイバーに対する肺がん低線量CT検診を提唱

頭頸部がん患者は肺がんリスクが特に高いので、年に1回、低線量のコンピュータ断層撮影(CT)による定期検査を行うべきであると研究者らは提唱している。

デトロイトにあるウェイン州立大学医学部のJohn Cramer医師は、ロイター ヘルスに電子メールで次のように述べた。「頭頸部がんサバイバーの肺がんリスクの高さに驚愕しました。頭頸部がんサバイバーにおける肺がんリスクはわずかに高いだろうと考えていましたが、データで劇的な違いが示されました。

頭頸部がん既往の喫煙者における肺がんリスク増大は顕著で、それは頭頸部がん治療後何年も持続します」。

Cramer医師は、「年1回の低線量胸部CTによる肺がん検診は、胸部X線検査よりもがん発見率が有意に高い」と言う。低線量CTは、X線検査とは異なり、肺がんによる死亡率を低下させることが示されている。「私は、望ましい検診として、低線量CTを強く勧めます」。

JAMA Otolaryngology-Head and Neck Surgery誌で報告されているように、Cramer医師らは、53,000人以上の参加者が登録された全米肺検診臨床試験(National Lung Screening Trial:NLST)の特別二次分析を行い、肺がんリスクが高い55~74歳までの患者を対象に、低線量CTと胸部X線検査によるスクリーニングを比較した。

主要評価項目は、二次原発性肺がんの発生率であった。

まず、研究チームは頭頸部がんサバイバーと頭頸部がん既往なし参加者とで、画像上の異常所見の発生率および肺がん全体の発生率を比較検証した。

年齢、性別、人種、年間の喫煙本数で調整後、肺がん発生率は頭頸部がんサバイバーでは10万人年当たり2,080人(2.1%)となり、頭頸部がん既往なし参加者の10万人年当たり609人(0.6%)と比べて高かった。調整後の率比は2.54であった。

次に、二次性原発肺がんの発生率と全生存期間を比較した。発生率は、低線量CT群が10万人年当たり2,610人、胸部X線群が10万人年当たり1,594人であった(率比1.55)。

頭頸部がんサバイバー171人(平均年齢67歳、男性77%、白人90%)においては、全生存期間は、低線量CT群が7.07年、胸部X線群が6.66年であった。特筆すべきことは、低線量CT群で35人(42.7%)、胸部X線群で24人(27.0%)が1回以上のスクリーニング検査で肺がんが疑われたことである。

著者らは次のように語る。「今回発表したデータおよび全米肺検診臨床試験(NLST)の別の報告書に基づき、喫煙指数(1日箱数×年数)20以上で50歳以上の頭頸部がんサバイバーは、肺がん根治治療を受けるのに十分な健康状態にあれば、年1回、低線量CTによる肺がん検診を受けるべきだと提唱します」。

Cramer医師は次のように述べた。「現在、肺がん検診対象の喫煙者のうち、検診が適切に行われている人はわずか14%です。この結果から、頭頸部がん患者をケアするすべての臨床医は、これら喫煙患者に対して検診が適切に行われるように働きかけるべきです。

今回の結果は、本質的な限界があるランダム化試験の二次分析であることを強調しておきたい。最も重要な点は、頭頸部がんサバイバーの参加人数が少なかったことです」。

関連論説の共著者であるミズーリ州セントルイス大学病院のSean Massa医師は、ロイター ヘルスへの電子メールで次のようにコメントしている。「現行のガイドラインでは、主に患者の喫煙量をもとに肺がん検診を推奨していますが、他のがん罹患歴など、それ以外の要因は考慮されていません。

肺がん検診の画像診断法には、低線量CTが適していることがNLSTや別の研究で実証されています。これらのスクリーニング検査は、患者が検診のガイドラインを満たしていれば、通常、保険でカバーされますが、すべての施設が必要な技術を備えているわけではありません」。

そして、Cramer医師と同様に次のことを指摘した。「大半の対象患者で検診が行われていないのが現状です。頭頸部がんに携わる医療従事者は、同疾患患者の肺がんリスクが高いことを認識し、喫煙歴に基づいて年1回の検診を行うことが重要です」。

さらに次のように語った。「最後に、これらのガイドラインがすべての患者に当てはまるわけではないことに留意しなければなりません。例えば、肺がんの治療を受けることができない、または受けたくない患者には、スクリーニングをしても利益はありません」。

出典:https://bit.ly/3myUyFK 、 https://bit.ly/3mzRZ6D  JAMA Otolaryngology-Head and Neck Surgery誌オンライン版 2021年10月28日

翻訳担当者 平 千鶴

監修 小宮武文(腫瘍内科/Parkview Cancer Institute)

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性の画像

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性

世界的に肺がんはがんによる死亡原因のトップであるが、その心理的、身体的な影響についてはほとんど研究されていない。オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院および...
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライトの画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト

ESMOアジア会議2024は、アジア地域における集学的腫瘍学に特化した年次イベントである。新しい治療法、特定のがん種の管理に関する詳細な議論、アジア全域を対象とした臨床試験、アジア地域...
米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認の画像

米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認

2024年12月4日、米国食品医薬品局は、以下の成人を対象にzenocutuzumab-zbco[ゼノクツズマブ-zbco](Bizengri[販売名:ビゼングリ]、Merus NV社...
STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効の画像

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...