KRAS阻害薬ソトラシブ抵抗性のKRAS変異肺がんに対し、アファチニブ追加が有効な可能性
KRAS阻害薬ソトラシブ(販売名:Lumakras)および汎ErbBチロシンキナーゼ阻害薬アファチニブ(販売名:ジオトリフ)の併用療法は、KRAS阻害薬単剤投与を含む前治療後に病勢が進行したKRAS変異陽性、非小細胞肺がん患者の治療に有効であることが示された。このCodeBreaK 101第1b相試験の中間結果は、米国がん学会(AACR)、米国国立がん研究所(NCI)、欧州がん研究治療機関(EORTC )共催の「分子標的とがん治療法」バーチャル国際会議(2021年10月7日~10日開催)で発表された。
「KRASは最近まで創薬不可能な標的とみなされており、KRAS G12Cに対する初の直接的阻害薬としてソトラシブが米国食品医薬品局の承認を受けたことは、肺がんの分子標的治療における重要な布石です」と、発表者のDavid R. Gandara医師(カリフォルニア大学デービス校 総合がんセンター内科学名誉教授、胸部腫瘍学部長)は語る。
「ソトラシブに対する反応、無増悪生存期間、および全生存期間は、従来の標準治療と比較して優れていますが、ソトラシブを軸とする併用療法では有効性転帰が向上し、耐性が回避される可能性があります」。
本試験はCodeBreaK 101多群マスター試験の一環であり、多様な分子標的・非標的抗がん剤とソトラシブとの併用療法を評価する。
増幅、変異または過剰発生によるErbB/HER系上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼの活性化は、KRAS阻害薬に対する耐性メカニズムである可能性が提示されてきた。「汎HER系阻害薬であるアファチニブは、ソトラシブとの併用に特に適しており、また前臨床試験では最も優れた併用効果を示しました」と、Gandara氏は付け加えた。
本試験では、治療で病勢が進行したKRAS p.G12C変異陽性の進行非小細胞肺がん患者が登録された。前治療にはKRAS G12C阻害薬も含まれる。患者に対してソトラシブおよびアファチニブを1日1回投与し、安全性、忍容性、および有効性を評価した。
2021年7月時点で登録された患者33人のうち、10人にソトラシブ960 mgおよびアファチニブ20 mgを投与し(コホート1)、23人にソトラシブ960 mgおよびアファチニブ30 mgを投与した(コホート2)。治療期間中央値は64日であった。
「併用療法の副作用は各薬剤単独の場合の事前報告と一致しており、想定外の毒性は認められませんでした」とGandara氏は述べた。治療関連有害事象(TRAE)として、消化管系(下痢、悪心、嘔吐)が最も多く報告された。各用量コホートの患者30%が重度のTRAEを発症し、下痢が最も多くみられた。
Gandara氏の報告によると、客観的奏効率、すなわち完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を示した患者の割合は、コホート1で20.0%、コホート2で34.8%であった。病勢コントロール率、すなわちCR、PR、安定(SD)のいずれかを示した患者の割合は、両コホートでそれぞれ70.0%、73.9%であった。ソトラシブによる前治療を受けた患者5人のうち、3人が安定、1人が病勢進行を示し、1人が有害事象により試験から撤退した。
「ソトラシブ+アファチニブ併用療法は、高い病勢コントロールを含む抗腫瘍効果を示し、ソトラシブ単独前治療で進行した患者において、HER系阻害薬+KRAS阻害薬併用療法の合理性の根拠を明確に示しました」とGandara氏は述べる。
Gandara氏らは、ソトラシブ+アファチニブ、ソトラシブ+アファチニブ+他のHER系阻害薬、ソトラシブ+他のHER系阻害薬の組合せをさらに評価したいと考えている。「これら薬剤の併用療法は、ソトラシブ単剤療法と比較して、耐性プロファイルが異なるのかを知ることが重要になるため、研究は継続中です」。
本研究の限界は、併用療法の有効性をすべて判定するには、さらに長期間の追跡調査が必要なことである。
本研究はアムジェン社から資金提供の支援を受けている。
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