リアルワールドデータでは、免疫療法薬は高齢肺がん患者の生存期間を改善しない
高齢の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療に免疫療法の導入が急速に進んでいるが、生存率は臨床試験でみられたものよりも顕著に低いことがメディケア適用患者のデータから明らかになっている。
ハーバード大学医学部(ボストン)のKenneth L. Kehl博士らは、JAMA Network Open誌オンライン版に掲載された論文のなかで、ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)が進行非小細胞肺がんの一次治療として承認された最初のチェックポイント阻害薬であると説明している。複数の臨床試験の結果に基づいて、診療ガイドラインでは現在、初回からこのような薬剤を用いた免疫療法が推奨されている。
しかし、研究者らは、「要となる臨床試験の登録基準を満たしていなかった可能性がある高齢患者の治療パターンと転帰は依然として不明である」と述べている。
研究チームは、2016年から2020年の間に肺がんの緩和的全身療法を初めて受けた66歳から89歳までのメディケア適用患者のデータを検証した。19,000人以上の患者を平均18カ月間追跡した。
治療レジメンには、ペムブロリズマブ単剤療法、シスプラチン/カルボプラチン(プラチナ製剤)+ペメトレキセド併用療法、プラチナ製剤+タキサン併用療法、プラチナ製剤+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ併用療法などがあった。
ペムブロリズマブを含む治療レジメンの導入率は、2016年には一次治療の0.7%であったが、2018年の第3四半期には42.4%にまで増加した。患者のなかでも年齢が高く、リスク層別化指数スコアが高い患者には、化学療法よりもペムブロリズマブを単剤投与する傾向がみられた。
傾向スコア調整後、ペムブロリズマブに関連する生存率は、プラチナ/ペメトレキセドまたはプラチナ/タキサンに関連する生存率とほぼ同様であった。さらに、プラチナ製剤/ペメトレキセド/ペムブロリズマブの化学免疫療法を受けた患者は、プラチナ製剤/ペメトレキセドの化学療法を受けた患者と同様の調整生存率を示した。
ペムブロリズマブ単剤療法を受けた患者の調整前生存期間中央値は11.4カ月であり、「KEYNOTE-024試験でペムブロリズマブを投与された参加者の生存期間よりも約15カ月短かった」。
同様に、プラチナ製剤/ペメトレキセド/ペムブロリズマブの化学免疫療法を受けた患者の調整前生存期間中央値は12.9カ月であり、「 KEYNOTE-189 試験でプラチナ/ペメトレキセド/ペムブロリズマブを投与された参加者の生存期間よりも約10カ月短かった」。
「新しい抗がん剤は、数百人の患者を対象とする臨床試験を経て承認されるが、承認後、このような薬剤は毎年、数万人の患者に影響を及ぼし、そのなかには、臨床試験では少数であるため過小評価された、フレイルやさまざまな併存疾患のある患者が多く含まれている」と研究者らは指摘している。
以上の結果は、「実地医療での予後の検討に影響を与えるほか、変革をもたらす治療戦略の価値や臨床的有用性を評価するうえで、患者選択動態を理解することの重要性を裏付けるものである」と研究者らは結論づけている。
Kehl博士にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
引用:https://bit.ly/3uRFjJ0、JAMA Network Open誌 オンライン版2021年5月21日
翻訳担当者 渡邉純子
監修 川上正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)
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