術前ニボルマブ+化学療法は切除可能な肺がんの病理学的完全奏効を改善
切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術前療法として、化学療法+ニボルマブ(販売名:オプジーボ)併用で、病理学的完全奏効(pCR、主要評価項目)率が24%と有意に改善した一方、化学療法単独群では2.2%で、併用療法による全毒性や手術遅延は増加しないとの第3相試験CheckMate-816結果が、4月10日~15日開催のAACRバーチャル年次総会2021第1週で発表された。
「切除可能な肺がんの標準治療法は、腫瘍を取り除く手術です。それでも、多くの患者さんに肺がんが再発しており、そうなると通常は、治癒の見込みがなくなります」。ジョンズホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンターおよびブルームバーグ~キンメルがん免疫療法研究所の准教授であるPatrick Forde氏(医学士)は述べた。「手術前(ネオアジュバント)または手術後(アジュバント)にプラチナベースの化学療法を行うと、5年時点の生存率が向上しますが、わずか5%にすぎません」と述べた。
「第3相試験として初めて、抗PD-1免疫療法薬が早期NSCLCの転帰を改善する可能性を示しました。術前化学療法とニボルマブを併用した場合、病理学的完全奏効(pCR)の顕著な改善と、全般的に良好な忍容性が認められ、手術実施可能性への影響はなく、非常に有望です」とForde氏は述べた。「術前化学療法でpCRを達成した患者は、そうでない患者よりも長生きするという明確な傾向が、複数のレトロスペクティブ研究でこれまでに蓄積されたデータからわかります」と述べた。
CheckMate-816試験では、ステージ1b~3aの切除可能な非小細胞肺がんの成人患者で、EGFR遺伝子やALK遺伝子に既知の活性化変異が認められない患者を、ニボルマブとプラチナ製剤による2剤併用化学療法群(179人)および化学療法単独群(179人)のいずれかに無作為に割り付け、その後手術を行った。病理学的完全奏効(pCR)は、手術後に切除された肺がんの検体と、採取されたリンパ節を検査した時点で、残存腫瘍がない状態と定義された。
本試験では主要評価項目を達成し、pCR率はニボルマブ+化学療法併用群では24%に上昇し、化学療法単独群では2.2%であった。この改善は、がんステージ、非小細胞肺がんの種類、PD-L1の状態、腫瘍変異負荷の状態など、すべてのサブグループで男女ともに一貫していた。
ニボルマブ+化学療法併用群は、病理学的主要奏効率(肺およびリンパ節の残存腫瘍が10%以下と定義)も36.9%と、化学療法単独群の8.9%と比較して有意に向上した。術前の画像上の客観的奏効率は、ニボルマブ+化学療法併用群の54%に対し、化学療法単独群は37%であった。
「病理学的完全奏効(pCR)は、肺とリンパ節の両方で病理学的中央審査により評価し、病理医には検体がどちらの群であるかを知らせませんでした。そのため、術前療法としての免疫療法を評価した他の初期試験と比較して、pCRの評価はユニークでより厳格なものとなりました」とForde氏は述べた。
ニボルマブ+化学療法併用群では83%の患者が根治的手術を受けたの対して、化学療法単独群では75%であった。「驚くべきことに、術前化学療法にニボルマブを追加しても、治療に関連する有害事象は増加せず、手術の延期や中止につながる有害事象の発生率も低かったのです。これにより、併用療法による副作用が患者の根治的手術に悪影響を与えないことが確認されました」とForde氏は述べた。
「病理学的完全奏効(pCR)が有意に改善し、毒性の有意な増加や手術実施可能性の低下が認められなかったことから、術前化学療法としてのニボルマブ+化学療法併用は、再発リスクの高い切除可能な非小細胞肺がん患者にとって、実行可能な選択肢であると考えられます」とForde氏は述べた。「これまで術前化学療法は、術後療法ほど多く実施されていませんが、CheckMate-816の結果から治療が大きく変わる可能性があると信じています」。
Forde氏は、CheckMate-816の主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)の結果は有望であるが、当試験は、第2の主要評価項目である無イベント生存率については引き続き成熟していくと注意を促している。
本試験は、Bristol Myers Squibb社が治験依頼者となっている。Forde氏は、過去にBristol Myers Squibb社で無報酬のコンサルタントを務めたことがあり、同社は彼の所属機関に研究資金を提供したことがある。またForde氏は、Amgen社、AstraZeneca社、Janssen社、第一三共株式会社、Novartis社のコンサルタントを務めたことがある。AstraZeneca社、Novartis社、協和発酵工業株式会社は、Forde氏の所属機関に研究資金を提供したことがある。
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