肺がんサバイバーの性的健康
Narjust Duma医師は、ウィスコンシン大学の血液腫瘍内科の教職員である。胸部悪性腫瘍の臨床と研究に重点的に取り組んでいる腫瘍内科医であり、特に女性の肺がんに関心を持っている。Duma医師は、肺がん女性の性的健康を評価した現時点で最大規模の研究であるSHAWL Study(Sexual Health Assessment in Women with Lung Cancer;肺がん女性の性的健康の評価)の主任研究者である。Duma医師のTwitterはこちら。
肺がんは、米国では依然として男女ともにがんによる死因の第1位ですが、検出と治療の進歩により、治療終了後も長期間生存できる可能性が高まっています。現在、米国には推定384,000人の肺がんサバイバーがおり、これは成人がんサバイバー全体の4%を占めています。そして、この数は増加しています。
肺がんのサバイバーシップは、診断を受けた日から始まり、その人の人生の最後まで続きます。息切れから、肺がんが原因と思われる心の傷まで、肺がん患者に特有のいくつかの側面があります。しかし、肺がんとともに生きる、さらには肺がんを乗り越えて生きるうえであまり語られない1つの側面は、性的健康です。性の問題は、肺がん患者と肺がんサバイバーによくある問題です。しかし、肺がんの人は、生殖器のがんの場合に比べて、この話題についての情報を得る機会が著しく少ないのが現状です。
セクシュアリティは、人の自己意識の重要な部分であり、対人関係を維持し、苦しみを和らげ、人生の意義を見つける助けとなる重要な表現形態です。セクシュアリティは性交渉だけを指すものではありません。他の形の愛情表現、たとえばキス、自慰(マスターベーション)、さらには抱擁や性的な会話といった他の形での親密さの表現も含まれます。セクシュアリティは、思考、感情、行動を通じて経験され、表現されます。肺がんの治療や、肺がんの診断を受けた後に起こる精神的苦痛は、セクシュアリティのすべての側面に影響を与える可能性があります。
息切れ、疲労、ボディイメージの問題、性欲(リビドー)の低下、および精神的な苦しみは、多くの場合、肺がん患者の性的健康に影響を及ぼす要因となります。これらの症状は治療中に悪化することもよくあります。研究者は、性の問題はほとんどの肺がん患者に影響を与えていると推定しています。また、データによると、そのような性の問題のほとんどは治療が終了しても改善されず、何も対処しなければ肺がん患者が長期にわたって性の問題を抱える可能性もあります。
腫瘍科の診察は時間的に制約がある場合が多く、がん治療、他の副作用の可能性、および最新のCTスキャンの結果が主題となるため、診察中に性の問題が話されることはあまりありません。このため、残念なことに、患者は自分の性的健康は重要ではなく、対処する必要がないと感じてしまうことがあります。しかし、性的健康の問題は、疼痛などの症状の増加や悪化と関連しています。性的健康の問題はまた、家庭内のパートナーシップの緊張を高め、カップル間の距離を広げるおそれもあります。
性的健康について医師と話をする
肺がんの人がセクシュアリティについて相談する際に妨げとなる障壁がいくつかあります。
・医師の側での適切なトレーニングの不足
・セクシュアリティは性交渉のみに関するものだという思い込み
・65歳以上の人は活発な性生活に興味がないという思い込み
・治療ができない問題であるいう考え
・この話題について話すことへの不快感
しかし、性機能障害の治療を受けた肺がんの人は、生活の質の向上やパートナーとのコミュニケーションの改善を報告しています。だからこそ、性的健康上の悩みについて治療チームとコミュニケーションをとることが非常に重要なのです。
性的健康に関わる話は、患者と医者のどちらから持ちかけてもかまいません。誰が話を始めるかに関係なく、性的健康の問題に取り組むべきです。医師や医療チームの他のメンバーとこの問題に初めて取り組むときには、さまざまな感情が沸き起こるかもしれません。ほとんどの医師は、性的健康についての質問に積極的に返答するでしょう。対処すべき問題に基づいて、理学療法士から家族カウンセラーまで、さまざまな専門家を紹介をしてくれることもあります。
性生活について医療チームに相談する際に気をつけたい3つのこと
1. 性生活の問題は医学的な症状であることを忘れない
これは、医師の診察や治療が保険でカバーされる可能性があることを意味します。性的健康の専門家の診察を受ける前に、加入している保険会社に連絡して、保険の適用範囲と自己負担額を確認しましょう。性の問題の多くが、膣用潤滑剤、カウンセリング、理学療法士が考えた自宅エクササイズなどの安価な治療法で解決できることが長年の間にわかってきました。たとえば、肺がんの人の中には、性交時の体位を変えることで、息切れが緩和され、性生活が改善される人もいます。
2. 治療チームとの会話にパートナーにも同席してもらうかどうかを検討する
これは、医師とともに性的健康の問題に取り組む前に行うべき重要な決定事項です。一部のカップルにとってはこれが困難なこともあり、この決定を行うにはコミュニケーションが不可欠です。パートナーのいない患者も性的健康の問題を抱えている可能性があることを知っておくことも重要です。また、セクシュアリティは性交渉だけではないことを認識することも重要です。性生活にマスターベーションが欠かせないという人も多くいます。
3. 治療チームとの性的健康についての話の切り出しかたを考える
肺がんとともに生きるということは、セクシュアリティをあきらめなければならないということではありません。がんになる前に深い性的関係や親密な関係を築いていた場合、その関係を治療中や治療終了後も続けることができます。セクシュアリティは、精神的なつながりと親密さの表現に関わっています。
治療チームとの会話を始める際には、以下のようなフレーズが役立つかもしれません。
・「肺がん患者には性的健康上の問題がよくあると読んだので、そのことについて少しお話したいです」
・「この治療がセクシュアリティに与えうる影響を教えてください」(新しい治療を始める前に)
・「この話題について話すのは難しいのですが、がんが私の性的活動に与えている影響についてお話したいと思います」
・「肺がんと診断されてから、パートナーとの肉体的関係が変わりました。このことについて相談して解決策を見つけたいです」
・「性欲が減退しています。このことについて相談できますか?」
・「治療を始めてからパートナーと一緒にいることが難しくなりました。これが私の悩みです」
・「自分自身やパートナーとの性的な関係を回復する方法を教えてください」
このような質問をすることで、医師に迷惑がかかることはありません。医師は、性的健康の問題に取り組もうと患者が思ってくれることを望んでいます。がん治療チームとこの話題について話すのが気まずい場合には、主治医に相談することもできます。
肺がんと診断されたからといって、性生活や性的活動が重要でなくなるわけではないことを忘れないでください。セクシュアリティは、アイデンティティ、対人関係、そして最愛の人とのコミュニケーション手段の一部です。肺がんとともに生きている、または肺がんを乗り越えて生きている場合、健康の重要な一面であるこのセクシュアリティの保ちかたついて、医師と相談することが重要です。
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