PD-L1高発現の肺がん(NSCLC)初回治療にアテゾリズマブが有用

特定の転移非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とする少規模臨床試験において、初回治療としてのアテゾリズマブ(販売名:テセントリク)は、プラチナベース全身化学療法群と比較して、全生存期間中央値を7カ月強(41%)延長することが、Roche 社とGenentech社が出資するIMpower110試験の中間報告で示された。

本試験は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)が高発現し、かつ上皮成長因子受容体(EGFR)と未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)がいずれも野生型(変異無し)であるNSCLC患者のみを対象とし、試験結果はNew England Journal of Medicine誌で発表された。

米国では毎年150万人以上の人が肺がんと診断されており、その20%から30%の患者が本試験条件による治療対象となると思われる、と主著者であり、エール大学がんセンター臨床腫瘍学部長であるRoy Herbst医師はロイター・ヘルスの電話インタビューで述べた。

IMpower110試験には患者572人が参加したが、そのうちの205人が試験対象となった。いずれもステージ4の非扁平上皮または扁平上皮肺がんと診断され、全身化学療法を受けたことがない患者であった。

本試験結果を受け、米国食品医薬品局(FDA)は本年5月18日、上述の患者を適応とする1次治療薬としてアテゾリズマブを承認した。

テセントリクという商品名で販売されているこの薬剤は、「免疫チェックポイント阻害薬」として作用するモノクローナル抗体薬である。薬剤が標的とするPD-L1タンパク質は、腫瘍細胞表面にあり免疫機構のT細胞が腫瘍を攻撃するのを妨げる。PD-L1タンパク質が中和されればT細胞も正常化する。

同様の患者を適応とする同種薬のペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ、Merck社)は、5年前にFDA承認済みである。

Herbst医師は「これらの薬は非常によく似ています」と述べており、医師らがアテゾリズマブを1次治療に使用するかどうか議論の余地が残る。

全生存期間は、従来の化学療法群が13.1カ月であったのに対して、アテゾリズマブ投与群では20.2カ月であった(P=0.01)。

PD-L1発現頻度を問わず、EGFR/ALK野生型患者の全生存期間中央値は、アテゾリズマブ投与群の方が長い傾向だったが、統計学的に有意ではなかった。

205人のPD-L1高発現患者の無増悪生存期間は、アテゾリズマブ投与群で8.1カ月、化学療法群で5.0カ月であった。

12カ月の全生存率は、本剤投与群で64.9%、化学療法群で50.6%で、追跡期間中央値は15.7カ月であった。

頻度の高い副作用は疲労と脱力感であった。

試験対象患者全員におけるグレード3または4の副作用の発現率もアテゾリズマブ投与群が良好であった。対照群では52.5%であったのに対し、本剤投与群では30.1%であった。

上述の2社は、19カ国144施設のデータ収集、分析、解釈に協力した。

Herbst医師は肺がん治療を始めた当初を振り返り「あの頃は肺がん領域に携わることを誰もがためらいました。生存期間の中央値は2〜3カ月、せいぜい6カ月でした。1年を超えれば驚いたものです。今やこれらの薬で数年も生存する患者を目の当たりにしています」。

さらに良好な治療成績を目指して「われわれはチェックポイント阻害薬を他剤と併用して、今回の進歩からさらに前進しなければなりません」と彼は述べた。

引用:https://bit.ly/2Gea5IE、 The New England Journal of Medicine誌、2020年9月30日オンライン版 

翻訳担当者 山本哲靖

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学奈良病院)

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

【ASCO2024年次総会】進行肺がんの早期緩和治療で遠隔医療と対面ケアの有効性は同等の画像

【ASCO2024年次総会】進行肺がんの早期緩和治療で遠隔医療と対面ケアの有効性は同等

ASCOの見解(引用)「進行非小細胞肺がん患者において、早期の緩和ケアは生存期間を含む患者の転帰を改善することが研究で示されています。この大規模ランダム化試験で、遠隔医療による...
【ASCO2024年次総会】進行肺がん(NSCLC)、ロルラチニブで無増悪生存期間が最長にの画像

【ASCO2024年次総会】進行肺がん(NSCLC)、ロルラチニブで無増悪生存期間が最長に

ASCOの見解(引用)「これらの長期データの結果は並外れて良く、この研究でALK陽性非小細胞肺がん患者に対する一次治療薬としてのロルラチニブ(販売名:ローブレナ)の優れた持続的...
【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性の画像

【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性

ASCOの見解(引用)「LAURA試験は、切除不能なステージIII疾患におけるEGFR標的療法の役割を明確にした最初の試験である。本試験ではオシメルチニブと現在の標準治療である...
周術期ニボルマブ+化学療法が肺がんの転帰を改善の画像

周術期ニボルマブ+化学療法が肺がんの転帰を改善

周術期におけるニボルマブ+化学療法併用により、化学療法単独と比較して疾患の再発、進行、または死亡の確率が有意に低下することが第3相試験で明らかに

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター...