オラパリブ+テモゾロミド併用療法は再発小細胞肺がんに初期試験で有望な結果

米国がん学会(AACR)ジャーナルのCancer Discovery誌で報告された第1/2相臨床試験の結果において、PARP阻害薬オラパリブ(リムパーザ)は化学療法剤テモゾロミド(テモダール)との併用によって、再発小細胞肺がん(SCLC)患者で臨床効果を示した。

ハーバード大学医学部およびマサチューセッツ総合病院がんセンターで医学助教授を務めるAnna Farago医学博士は、「小細胞肺がんは全肺がんの15%を占め、従来予後不良で、この悪性のがんに対しては新たな治療戦略が必要である。」と述べた。

「この併用治療は再発小細胞肺がん(SCLC)患者で望ましい結果を示し、一般に効果的な治療選択肢がほとんどなかったこれらの患者に対し、新たな可能性を持った治療戦略を提示した」。

PARP阻害薬は前臨床SCLCモデルおよび早期臨床試験で限られた効果しか示されなかったが、テモゾロミドのようなアルキル化剤などのDNA障害剤を添加することでPARP阻害薬の効果は増強される可能性があるとFarago医師は述べた。

この単群試験には、2015年10月から2018年4月までに治療歴のある小細胞肺がん患者50人が登録された。前治療の数は1回から7回までの範囲で、中央値は2回であった。

13人の患者は第2相試験の推奨用量(RP2D)の決定を目的として第1相用量漸増試験に登録された。

37人の患者が第2相試験の推奨用量で有効性の評価を目的として第2相拡大投与試験に登録された。

患者はオラパリブとテモゾロミドを21日サイクルの1日目から7日目に経口で服用した。このサイクルを疾患が進行するまたは許容できない毒性が発現するまで繰り返した。

第1相試験で4つの投与量が評価され、第2相推奨用量はオラパリブ200mgを1日2回、テモゾロミド75mg/m2を1日1回服用と決定した。

両試験において治療を受けた48人の評価可能な患者の奏効率は41.7%であった(部分奏効は20人、完全奏効は0人)。

本試験に登録された50人の患者の無増悪生存期間中央値および全生存期間中央値は、それぞれ4.2カ月、8.5カ月であった。

第2相推奨用量で治療を受けた評価可能患者(39人)の奏効率は41.0%であった。

本試験の両群を通じて、最も一般的な治療関連有害事象(AEs)は、血小板減少症(68%)、貧血(68%)、好中球減少症(54%)であった。

第2相試験で治験薬に関連する可能性があるグレード5の治療関連有害事象が2例発生した(1例は肺炎、1例は好中球減少性敗血症)。

「これら2例の有害事象は、われわれが患者に起こりうる毒性を知らせ、治療中の血球数を注意深く観察しなければならないことを示している。」とFarago医師は述べた。

「われわれのプロトコールでは、好中球数を維持/増加させる目的で化学療法治療ではよく使用される成長因子によるサポートを当初は実施していなかったが、治療サイクルの7日目以降に成長因子の投与が認められるようにプロトコールが変更された」。

オラパリブとテモゾロミド併用の効果を予測する可能性がある分子指標を特定するために、研究者らは22人の患者から得た患者由来異種移植(PDX)モデル32個を使用して共同臨床試験を実施した。

研究者らは4つの炎症反応遺伝子(CEACAM1、TNFSF10、TGIF1、OAS1)の特定の分子指標が発見コホートおよび検証コホートの両方で、感受性モデルと耐性モデルを区別することができることを発見した。

さらに、これらの遺伝子の基礎発現が低いことは、治験中のオラパリブ+テモゾロミド併用療法と小細胞肺がん患者の標準的な初回化学療法であるプラチナ-エトポシドの両方に耐性があることと関連していた。

「薬剤反応のバイオマーカーはさまざまながんで特定されているが、小細胞肺がんの治療に対する良好なバイオマーカーは見つかっていない。」とマサチューセッツ総合病院がんセンター腫瘍専門医のBenjamin Drapkin医学博士は述べた。

「われわれの動物モデルを使用した共同臨床試験は、標準的な初回化学療法、および治験中のオラパリブ+テモゾロミド併用療法の両方に対し、反応を予測する予後因子を特定するための重要な最初のステップであった。」

「このオラパリブとテモゾロミドの併用治療は再発小細胞肺がん患者において有意な臨床効果を示したため、標準治療と比較するためにランダム化比較試験で検証する必要がある」とFarago医師は言及した。

本試験は単一群で行われたため、これらの結果は本試験と同じ状況の他の治療選択肢と直接比較することはできないと、Farago医師は補足した。

本試験は以下の団体から支援を受けて実施された。
AstraZeneca、the National Cancer Institute、the V Foundation、the National Institutes of Health、Uniting Against Lung Cancer、the Lung Cancer Research Foundation、the American Society of Clinical Oncology、the Deutsche Forschungsgemeinschaft、the Howard Hughes Medical Institute、the National Foundation for Cancer Research、the Novartis-MGH Alliance

Farago医師はPharmaMar、AbbVie、Loxo Oncology、Stemcentrx、Genentech/Roche、Bayer、AstraZeneca、Bristol-Myers Squibb、Boehringer Ingelheimにおいてコンサルティングや顧問的役割を担っている。

Drapkin医師はNovartis、Abbvie、Merck、AstraZenecaから研究資金の援助を受けている。

翻訳担当者 沼田理

監修 川上正敬(肺癌・分子生物学/米国国立がん研究所)

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