FDAが特定の遺伝子陽性固形がんおよび非小細胞肺がんにエヌトレクチニブを承認

2019年8月15日、米国食品医薬品局(FDA)は、神経栄養因子受容体チロシンキナーゼ(NTRK)融合遺伝子陽性で既知の獲得耐性変異を有さず、転移がみられるか外科的切除が重篤な合併症を起こす可能性が高く、治療後に病勢進行したか適切な標準治療がない成人および12歳以上の小児の固形がん患者に対して、エヌトレクチニブ(販売名:ROZLYTREK、Genentech Inc.社)を迅速承認した。

本日、FDAは、ROS-1陽性の転移性非小細胞肺がん(NSCLC)成人患者に対してもエヌトレクチニブを承認した。

NTRK陽性がんにおける有効性は、3つの多施設単群臨床試験、ALKA試験、 STARTRK-1 (NCT02097810)試験 、 STARTRK-2 (NCT02568267)試験のうちのいずれかにおいて、さまざまな用量およびスケジュールでエヌトレクチニブを投与された54人の成人患者を対象に評価された。94%の患者には1日1回エヌトレクチニブ600mgが経口投与された。試験登録前に、各施設または中央の研究室で核酸ベースの診断法によって、NTRK融合遺伝子が陽性であることが確認された。

第三者審査により決定された成人患者54人の奏効率は57%(95%信頼区間[CI] : 43~71)であった。奏効期間は、68%の患者で6カ月以上、45%の患者で12カ月以上であった。がん腫としては、肉腫、NSCLC、乳腺相似分泌がん、乳がん、甲状腺がん、直腸がん、が多く含まれていた。

ROS-1陽性の転移性非小細胞肺がん(NSCLC)における有効性は、同じく3つの臨床試験でさまざまな用量およびスケジュールでエヌトレクチニブを投与された51人の成人患者を対象に評価された。90%の患者には、エヌトレクチニブが1日1回600mg経口投与された。奏効率は78%(95%CI: 65~ 89)で、奏効期間は55%の患者で12カ月以上であった。

エヌトレクチニブの最も重篤な副作用は、うっ血性心不全、中枢神経系への影響、骨折、肝毒性、高尿酸血症、QT間隔延長、および視覚障害である。20%以上の患者に認められた一般的な副作用は、疲労、便秘、味覚異常、浮腫、眩暈、下痢、悪心、知覚異常、呼吸困難、筋肉痛、認知障害、体重増加、咳、嘔吐、発熱、関節痛、視覚障害であった。

エヌトレクチニブの推奨用量は、成人のNTRK融合遺伝子陽性固形がん患者またはROS-1陽性NSCLC患者で1日1回600mgの経口投与である。12歳以上の小児のNTRK融合遺伝子陽性の固形がん患者では、添付文書に体表面積に基づいた推奨用量が示されている。

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NTRK陽性がんに対しての継続的な承認のためには、臨床的有用性が検証試験で確認され示されることが条件となる可能性がある。エヌトレクチニブは優先審査、画期的治療薬、オーファンドラッグ(稀少疾病用医薬品)として指定を受けた。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、業界向けガイダンス「重篤疾病のための迅速承認プログラム―医薬品およびバイオ医薬品」に記載されている。

翻訳担当者 日ノ下満里

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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