ペムブロリズマブが進行非小細胞肺がんの一部でこれまでの生存率を改善

ASCOの見解
「これらのデータは、5年以上生存可能な患者集団が存在するという点で、免疫療法で治療した他のがんにおいてみられるデータと類似しています。今までよりも多くの患者について、もはや生存期間を月単位で計算する必要がないということは、実に注目すべきことです。しかし、すべての進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の転帰を改善するにはまだ長い道のりがあります。これらの患者を特定する方法を確定する手助けとなる、さらなる研究が待ち望まれます」と、ASCOエキスパートであるDavid L. Graham医師、FACP(米国内科学会フェロー)、FASCO(米国臨床腫瘍学会フェロー)は語った。

第1b相KEYNOTE-001臨床試験の5年生存データによれば、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)は安全かつ有効であり、進行非小細胞肺がん(NSCLC)における生存率を実質的に上昇させた。特に、化学療法による治療歴のない人々の23.2%と治療歴のある患者の15.5%は5年後も生存しており、PD-L1発現の高い患者において最も大きな利益がみられた。このことは、進行非小細胞肺がんの5年生存率が、平均5.5%であった免疫療法以前の時代と比較して、著しく改善されたことを示している。研究者らによると、この試験は、ペムブロリズマブによる治療を受けた進行非小細胞肺がんを有する人々を対象とした、現在では最も長いフォローアップ試験である。

この試験は、本日の記者会見で取り上げられ、ASCO2019年次総会で発表される。同時にJournal of Clinical Oncology誌に掲載される予定である。

「進行非小細胞肺がんの診断に関しては、かつて一様に予後が悪いとされていました。しかしこの見通しはもはや適切ではありません」と、試験の筆頭著者で、カリフォルニア州ロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部准教授であるEdward B. Garon医師、理学修士は語った。「この試験において、7年間経過しても生存している患者が存在するという事実は、非常に注目すべきことです。ペムブロリズマブ投与後2年間経過良好であった患者の大半が、5年以上生存するという証拠も存在します」。

ペムブロリズマブは、PD-1と呼ばれる、T細胞の表面上のタンパク質と結合する。PD-1はPD-L1などのリガンドと結合し、免疫応答を阻害する。ペムブロリズマブは、PD-1を阻害することで、T細胞を活性化して腫瘍細胞を攻撃する。

ペムブロリズマブは、2014年9月に進行メラノーマ(悪性黒色腫)に初めて米国食品医薬品局(FDA)の承認を受け、2015年10月には進行非小細胞肺がんに承認された。その後2016年10月に、ペムブロリズマブは、EGFR遺伝子変異およびALK遺伝子変異陰性で、細胞におけるPD-L1発現が50%以上である進行非小細胞肺がん腫瘍の初回治療に承認された。

ごく最近の2019年4月には、ペムブロリズマブは、外科的切除も放射線照射も不可能な腫瘍を有する3期非小細胞肺がん患者、またはPD-L1発現率が1%超でありEGFR遺伝子変異もALK遺伝子変異も有しない進行非小細胞肺がん患者への初回治療に拡大承認を受けた。

試験について

KEYNOTE-001試験が組入れを開始した2011年には、免疫療法は広く利用可能ではなく、参加者の大半は全身投薬または標的療法による治療歴があった。この試験には、進行非小細胞肺がんを有する550人が参加し、そのうち未治療の患者は101人、治療歴のある患者は449人であった。すべての患者にペムブロリズマブ2mg/kg体重を3週ごと、もしくは10mg/kg体重を2週または3週ごとに投与した。しかし近年、プロトコルは、実際の臨床における標準的な投薬計画である、体重にかかわらず200mgの投与を3週ごと、に変更された。

主な知見
患者を、中央値で60.6カ月または約5年追跡した。この時点で、登録者の18%(参加者100人)は生存していた。5年生存率は、治療歴のある人では15.5%であったのと比較し、治療歴のない人では23%であった。

PD-L1発現率が高いと生存期間が最も長いと予測されることが、研究者らにより見出された。特に、

  • 治療歴のない人々において、5年生存率は、PD-L1発現50%未満では15.7%であったのと比較し、PD-L1発現50%以上では29.6%であった。
  • 治療歴のある人々において、5年生存率は、PD-L1発現1~49%では12.6%であったのと比較し、PD-L1発現50%以上では25%であった。発現率が1%未満の人々の5年生存率は、わずか3.5%であった。

前治療を受けた後にペムブロリズマブを投与された人々の42%に、中央値16.8カ月間持続する奏効がみられた。ペムブロリズマブを初回治療として投与された人々の23%に、中央値38.9カ月間持続する奏効がみられた。

免疫関連の副作用は、登録者の17%に発生した。最も高頻度に認められた副作用は甲状腺機能低下症であった。甲状腺機能低下症では、免疫系が身体の甲状腺を攻撃する。認められた最も重篤な副作用は、肺組織の炎症である肺臓炎であるが、あまり高頻度には認められなかった。

次のステップ
今後、どの患者がペムブロリズマブにより最も利益を得られるのかより明らかにし、また、免疫系が腫瘍を攻撃する際の障壁を同定することでその克服につながるよう試みられるだろう、とGaron医師は報告した。研究者らは、ペムブロリズマブと従来のまたは他の免疫療法による有力な併用療法を探索したいと願っている。

この試験は、米国ニュージャージー州ケニルワースにあるMerck & Co., Inc.社の子会社である、Merck Sharp & Dohme Corp.社から資金提供を受けた。

試験の概要
・試験の要点:免疫療法により、PD-L1発現50%以上の進行非小細胞肺がんを有する人々の生存期間が延長した。
・試験の種類:第1相臨床試験
・対象患者数:550人
・試験の治験薬:ペムブロリズマブ

主な知見  
ペムブロリズマブを初回治療として使用した患者の5年生存率は免疫療法以前の時代の4倍となった(23.2%対5.5%)。治療歴のある患者では、ペムブロリズマブにより生存率は15.5%に改善した。

副次的知見
本試験の両患者集団において、5年生存率は、PD-L1発現1~49%の患者よりも、PD-L1発現50%以上の腫瘍を有する患者で最も高かった(初回治療群では29.6%対15.7%、既治療群では25%対12.6%)。

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翻訳担当者 串間貴絵

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学奈良病院)

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