ASCO最新の知見、米国がん学会(AACR)年次総会で発表されたTAPUR試験について
協力企業の支援期間延長により、実際的試験からのより多くの知見が腫瘍学分野にもたらされる
2019年米国がん学会(AACR)の会期中、ポスターセッションにて3件の完了済みコホート試験より得られた知見が発表された。この3件のコホート試験は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)のTargeted Agent and Profiling Utilization Registry(TAPUR)試験によるものであり、非小細胞肺がん、乳がん、転移性大腸がんに関する知見を報告するものである。さらに、TAPUR試験に現在参加中の製薬会社7社が試験への支援に関する契約を更新し、今後1~3年に渡り試験薬の無償提供が行われる。
TAPUR試験では参加者の腫瘍(例、進行固形腫瘍すべて、多発性骨髄腫、あるいはB細胞性非ホジキンリンパ腫)、腫瘍のゲノム変異、およびそのゲノム変異に対応する標的薬に基づいてグループ分けを行った。試験は2段階に分けて行われ、患者の治療に対する反応性についてモニタリングを行った。治療効果に応じて、ステージIで試験終了(患者10例で反応が2件未満であった場合)、あるいはさらに試験を続けて薬物活性のシグナルを確認するためにステージIIに移行することとした。
「この種の試験を行う場合、効果を示さない薬剤を知ることは、反応性のシグナルを確認することと同様に重要となります」、とASCOの最高医学責任者であるRichard L. Schilsky医師(FACP、FASCO)は述べた。「各患者の治療に対する反応性を確認することでがんの標的治療を行う際、一番効果のある標的薬を知るための知識体系が増え続けています。患者、参加臨床施設の腫瘍学チームメンバー、およびこの試験を支援してくださる製薬企業のすべてに感謝しています」。
TAPUR試験は分子標的型がん治療薬の評価を目的としてデザインされ、米国食品医薬品局(FDA)が、承認された適応以外に用いることができる可能性がある利用法を探求するために臨床転帰に関するデータを集めている。腫瘍のゲノム変異を伴う進行がん患者にとっては、その変異がTAPUR試験で利用する薬剤の標的となり得る場合、TAPUR試験は臨床試験に参加するチャンスとなる。
2019年米国がん学会(AACR)年次総会は3月29日~4月3日の間にアトランタのGeorgia World Congress Centerで開催される。次の抄録2件はいずれもポスターセッション 「第2/3相の臨床試験(“Phase II-III Clinical Trials)パート1」(4月2日午前8時~正午)で発表予定であり、16週の試験参加期間の後に抗腫瘍活性が認められないことから試験を終了したTAPUR試験コホートについて検討している:
TAPUR 試験参加患者に関する拡大コホートおよび閉鎖コホートに関する全リストはTAPUR試験ウェブサイト(TAPUR.org)上「News」セクションで確認できる。
現在のところ、TAPUR試験には、20州113施設が参加し、試験治療薬の投与を受けた患者は1,400名近くいる。現在、製薬会社7社(AstraZeneca、 Bayer、 Bristol-Myers Squibb、 Eli Lilly and Company、 Genentech、 Merck、 Pfizer)が患者に様々な薬剤および分子標的薬治療薬(一部併用投与)を無償にて提供している。 ASCOは利用できる適切な分子標的薬治療薬の数を増やすことを目標としている。
FDAおよび Friends of Cancer Research (Friends)との共同研究の結果に基づき、ASCOはTAPUR試験の年齢に関する適格性基準18歳(2017年)から12歳に下げた。これによって進行がん青年患者に試験参加のチャンスがもたらされることとなる。先月、FDAはASCOおよびFrendsより提供された情報に基づき、臨床試験適格基準拡大に関する企業向けガイダンスについて最終決定を下した。
TAPUR試験は ClinicalTrials.gov(ClinicalTrial.gov 番号:NCT 02693535)に登録されている。ClinicalTrials.govでは、採用・除外基準およびそれ以外の情報が確認できる。TAPUR試験のウェブサイトでは試験参加に関心を持つ研究者や医療施設向けの情報だけでなく、患者向け情報(全般的な適格基準や参加臨床施設など)が提供されている。また、研究チームへの問い合わせ先もウェブ上に公開されている。
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