非小細胞肺がんへのリキッドバイオプシーは、組織生検と同程度に有効

FDA承認薬が存在する4つの変異をより正確に同定し、最初の検査から治療開始までの期間を短縮することができる。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが主導した多施設共同研究により、進行非小細胞肺がん(NSCLC)におけるガイドライン推奨バイオマーカーの検出において、Guardant360と呼ばれるリキッドバイオプシー検査が標準的な組織生検に匹敵することが明らかになった。治療開始までの時間を短縮し、分子標的療法による治療が可能な患者をより多く識別できるようになる可能性がある。

分子標的療法は化学療法よりも奏効率が高いことが多く、30%の肺がんをうまく治療できることから、この研究結果は重要である。この研究結果は、3月29日から4月3日にアトランタで開催されるAACR年次総会2019のメディアプレビューで公表された。多施設共同研究は、胸部・頭頸部腫瘍内科の教授であるVassiliki Papadimitrakopoulou医師により主導された。

Papadimitrakopoulou氏は、「NSCLC患者の治療法を選択する際には、どの患者が分子標的療法によく反応する遺伝子変異を有するかを知っておくことが重要である。分子標的療法は化学療法や免疫療法に比べて奏効率が30%高くなる可能性がある。従来は、遺伝子変異を調べる唯一の方法として、組織生検に頼るしかなかった。組織生検は侵襲的で、重篤な合併症を生じる可能性があるとともに 、長時間を要し、関連する標的可能な変異をすべて調べるには十分でないことが多い」と述べた。

いくつかの参加機関で実施された今回の包括的なリキッドバイオプシー研究では、Guardant360により、血中のセルフリー腫瘍DNA(cfDNA)を使用して、282人の患者の変異を検査した。この研究において、7つの既知の予測バイオマーカーROS1、BRAF、RET、MET、ALK、EGFRおよびERBB2の遺伝子変異、および1つの予後バイオマーカーKRAS変異が検出された。標準的な組織生検によるサンプリングでは、少なくとも1つの予測バイオマーカーを60人の患者で同定したのに対して、Guardant360は77人の患者で同定した。7つの予測バイオマーカーのいずれも有していなかった残りの193人の患者の中で、リキッドバイオプシー検査が92人の患者においてKRAS変異を同定したのに対して、 標準的な組織生検は24人で同定した。

EGFR、ALK、ROS1およびBRAF遺伝子の変異または融合遺伝子を標的とした治療法は、米国食品医薬品局によってすでに承認されている。

Papadimitrakopoulou氏は、次のように述べた。「ガイドライン推奨の検査は通常、NSCLC患者の8%に実施されているにすぎない。これでは、医師が治療法を決定するために不可欠な情報がすべて提供されることにはならない。今回の研究は、高感度で特異的なリキッドバイオプシーがこれらの患者の標準治療の一部であるべきであることを示している」。

研究報告によれば、検査依頼から最終報告までにかかる時間の中央値は、組織生検による検査では15日間であったのに対し、リキッドバイオプシーによる検査では9日間であった。

Papadimitrakopoulou氏は、次のように述べた。「進行NSCLCは多くの場合、命に関わる病態であることから、できるだけ早い時期に治療を始めることが重要である。われわれの研究結果は、検査から治療開始までの期間を大幅に短縮できることを示している」。

この研究の限界は、標準的な組織を用いた遺伝子型検査と比較されたが、組織検体を用いた次世代シークエンシング検査とは比較されなかったことである。研究結果は、Guardant360検査にのみ適用され、他のリキッドバイオプシー検査には適用されなかった。この研究について、患者転帰の分析を後日、別途報告することが予定されている 。

前述の機関以外で本研究に参加した機関は、以下のとおり:Princess Margaret Cancer Centre, Toronto; Center for Cancer and Blood Disorders, Fort Worth, Texas; Guardant Health, Inc., Redwood City, Calif.; Tennessee Oncology, Chattanooga, Tenn.; Genesis Cancer Center, Hot Springs, Ark.; City of Hope Cancer Center, Duarte, Calif.; and Miami Cancer Institute, Miami.

本研究への資金提供者: Guardant Health, Inc.

Papadimitrakopoulou 氏からの情報開示はない。

翻訳担当者 中野駿介

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性の画像

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性

世界的に肺がんはがんによる死亡原因のトップであるが、その心理的、身体的な影響についてはほとんど研究されていない。オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院および...
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライトの画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト

ESMOアジア会議2024は、アジア地域における集学的腫瘍学に特化した年次イベントである。新しい治療法、特定のがん種の管理に関する詳細な議論、アジア全域を対象とした臨床試験、アジア地域...
米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認の画像

米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認

2024年12月4日、米国食品医薬品局は、以下の成人を対象にzenocutuzumab-zbco[ゼノクツズマブ-zbco](Bizengri[販売名:ビゼングリ]、Merus NV社...
STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効の画像

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...