早期肺がんの検出が血液検査で可能となるか?
ASCOの見解
「私たちは簡単な血液検査で早期肺がんが検出できる状況に一歩近づいています。血液由来の無細胞DNAが広い範囲のがん検出に使用できるようになるには道のりがありますが、この研究は今後の試験の開発のための基本要素になります」とASCOの専門委員でASCOフェローのDavid Graham医師は述べた。
進行中の循環無細胞ゲノムアトラス(CCGA)の大規模研究の初期報告では、血液検査で早期の肺がんを検出できる可能性があるという予備的知見が示された。これは浮遊性あるいは無細胞DNAの血液検査解析を、がんの早期検出のツールとして検討する最初の試験の一つである。
この結果は本日のプレスブリーフィングで取り上げられ、2018年ASCO年次総会で発表される。
「私たちは、ゲノム配列決定を用いて血液検体から早期肺がんを検出できる可能性があるというCCGA研究の初期結果に高揚しています」。ダナファーバーがん研究所内科学およびマサチューセッツ州ボストンのハーバード医科大学助教授であり本研究筆頭著者であるGeoffrey R. Oxnard医師は述べた。「現在の医療システムで容易に実施可能な肺がんの早期検出検査は、世界的にニーズにかなうものではないからです」。
肺がんが早期に診断されると生存率が有意に高くなる。米国では、米国予防医学専門委員会(USPSTF)が重喫煙歴を有する人々に対し、年に一度の低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)による肺がんスクリーニングを推奨しているが、スクリーニングは十分に活用されていない(年次総会アブストラクト#6504参照)。世界的に、LDCTは費用の問題と健康に関するインフラの不足のために採用が限られている。
診察時の簡単な採血で血液検査を行うことができれば、肺がんスクリーニング率が向上する可能性があるが、このような検査が広く行われるようになる前に、大量のデータやがんの診断を受けたことがない人々を対象とした研究によるさらなる妥当性の検討が必要であろう。
血液由来の無細胞DNAの解析は、すでに標的療法(コバス EGFR 変異検査など)の選択に活用されているが、そのような「リキッドバイオプシー」は進行した肺がん患者のみに用いられている。最近まで無細胞DNA解析が肺がんの早期検出に適していることを示す証拠は限られたものであった。
研究について
CCGA研究では米国とカナダの141施設の予定された15000人(70%ががんを有し、30%ががんでない)から12000人を超える被検者を組み入れた。本報告はCCGA研究の、当初から事前に計画されていたサブ研究のものであり、約1700人の患者の血液検体に対し3つのプロトタイプの配列決定分析法を実施した。サブ研究にはすべてのステージにわたる20の異なるタイプのがんが含まれる(追加の早期結果は乳がん、消化器がん、婦人科がん、血液腫瘍、および他のがんについて2018年ASCO年次総会で別々に発表される。アブストラクト#536 、#12021、#12003参照)。
研究者らはこの最初のサブ解析で、ステージ1~4の肺がん患者127人において、3つの異なる分析法ががんを検出する有用性を調査した。
早期がんの検出検査の開発に使用できる可能性がある、がん定義のシグナル(突然変異や他のゲノム変化)を検出するためにデザインされた3つの分析法は以下の通りである。
• 単一塩基変異体および小さな挿入または欠失などの非遺伝性(体細胞)突然変異を検出するための標的となる配列決定
• 体細胞遺伝子転写数の変化を検知する全ゲノム配列決定(WGS)
• 異常なcfDNAメチル化(エピジェネティック変化)を検出するためのcfDNAの全ゲノム重亜硫酸塩配列決定(WGBS)
主要な知見
肺がん患者127人の中で、肺がんの生物学的シグナルはすべての分析法にわたり同等であり、さらにシグナルはがんのステージに伴い増加した。98%特異性でWGBS分析法は早期肺がん(ステージ1~3A)の41%および進行期がん(ステージ3B~4)の89%を検出した。WGS分析法も同様に効果的で早期がんの38%および後期がんの87%を検出し、標的分析法も早期がんの51%および進行期がんの89%を検出した。
初期の結果では、全3つのプロトタイプの分析法で肺がんを検出する上で、偽陽性率は低値であることが示された(偽陽性とは、がんではないにもかかわらず、検査でがんであると示されることをいう)。サブ研究で580の対照検体(研究への登録時点にがんを有していない被検者から採取したもの)の5検体(<1%)で3つの分析法すべてにがんのようなシグナルを示した。この5人の被検者のうち2人は後にがんの診断を受け(1人はステージ3の卵巣がん、1人はステージ2の子宮内膜がん)、検査が早期がんを検出しうる可能性を明らかにした。
この研究で肺がん患者では、血液検体から検出された体細胞変異(非遺伝性)の54%を超える変異が、腫瘍由来ではなく白血球由来であることも明らかになった。これらの変異は自然な加齢のプロセス(いわゆる不確定なクローン性の造血、すなわちCHIP)による可能性が高く、がんの早期検出を目的とした血液検査を開発する際に考慮することが重要であるとOxnard医師は指摘した。
次の段階
研究者らは同じサブ研究の一部としてCCGAからの約1000人の参加者からなる独立したグループでこれらの結果を検証している。
「これらは有望な早期結果です。そして次のステップとしては、より大規模なグループの被検者を対象に分析法を最適化して結果を確認することです」とOxnard医師は述べた。検体数の増加に伴い、機械学習のアプローチで分析法の成績向上が期待できると同医師は指摘した。
本研究はGRAIL, Incにより資金提供を受けた。
研究の概要
疾患 | 肺がん |
試験の相、種類 | ゲノム試験、がんスクリーニング対象のリキッドバイオプシー |
試験参加の患者数 | サブ検査で臨床上評価可能な被検者1627人 そのうち肺がん患者127人がこの肺がんのサブ解析に含まれていた |
主要な知見 | 3つのプロトタイプの分析法により血液検体から早期肺がんを検出できる |
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原文掲載日
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