早期肺癌の術後化学療法、生存期間延長
http://cancer.gov/clinicaltrials/results/early-lung-cancer0604
(Posted:6/5/2004 Updated: 06/27/2005)早期非小細胞肺癌において、術後化学療法は手術のみに比べ、全生存率を上げると、2つの大規模無作為試験で判明した。この結果は、これまで早期非細胞肺癌患者の術後化学療法の意義についての議論の解決に貢献し、標準治療を変えると思われる。
要約
2件の大規模無作為化試験によると、一部の早期非小細胞性肺癌患者に対し術後化学療法を行ったところ、手術のみの患者と比較して全体生存期間が改善されたとの結果が示された。この結果は、一定の早期肺癌患に対し術後化学療法を行う価値についての議論を解決する一助となり、また治療の基準が変更される可能性もある。
出典 ニューオリンズで開催されたアメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会(2004年6月5日)
背景
早期非小細胞性肺癌患者が術後に化学療法を受ける是非について議論がかわされてきた。こういった患者では再発のリスクが高いが、以前行われた術後化学療法の臨床試験では相反する結果であったり、患者に対するごくわずかのベネフィットが示されただけであった。しかし、今回実施された2件の大規模無作為化試験では術後化学療法が一定の患者における全体生存期間を明らかに延長させたということが決定的に示された。
試験1 (Cancer and Leukemia Group B [癌および白血病グループB])
この試験では344例(全員がステージIB腫瘍の完全切除を受けている)を術後に化学療法を行わないグループあるいは術後にpaclitaxel(タキソール)およびcarboplatinによる化学療法を行うグループのいずれかに無作為割付した。化学療法を行うグループで有意に生存率が高いことが明らかになったため試験は予定より早く終了した。この試験はブラウン大学医学部、ロードアイランド病院のGary M. Strauss医師の主導で行われ、米国国立癌研究所の臨床試験協力グループのひとつである Cancer and Leukemia Group B (癌および白血病グループB)が調整を行った。
試験1の結果
術後化学療法を受けた患者における全体生存期間は、術後に化学療法を受けなかった患者の期間を有意に上回っていた。4年後、術後化学療法を受けた患者の71%が生存していたのに対し、手術のみを受けた患者で生存していたのは59%であった。研究者の報告によるとあらゆる原因からなる死亡のリスクが38%低下したことを意味する。特に肺癌による死亡リスクは化学療法を受けた患者で49%低下した。
治験責任医師によると、化学療法の副作用に対する忍容性は高かった。もっとも重篤な副作用は好中球減少症(感染と戦う白血球の一種である好中球の減少)であった。治療関連の死亡例はなかった。(プロトコル概要参照)
試験2 (National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group [カナダ国立癌研究所臨床試験グループ])
試験に参加した482例はステージIBまたはステージⅡの腫瘍摘出を受けた患者であった。患者は2つの治療群(術後に化学療法を受けない群とcisplatinとvinorelbine投与を受ける群)に無作為割付された。試験はカナダ国立癌研究所臨床試験グループのTimothy Winton医師の主導で、米国国立癌研究所が支援する臨床試験グループの協力により実施された。(プロトコル概要参照)
試験2の結果
化学療法を受けた患者群の5年生存率が約69%であったのに対し、手術のみを受けた患者群では54%であった。全体生存期間は化学療法を受けた患者で94ヶ月、化学療法を受けなかった患者では73ヶ月であった。治療中に見られた副作用は好中球減少症、倦怠感、嘔気などで、治療後も継続した副作用は聴力損失、しびれ、知覚障害(手足の焼け付くようなあるいは刺すような感覚)であった。治療関連の死亡は2例であった。(注:この試験の最終結果は後にNew England Journal of Medicineの2005年6月23日版で発表済み。ジャーナル要旨参照))
コメント
上記の点をふまえ、この最終結果が、これらの臨床試験で解析されたような特別の群に属する肺癌患者における術後化学療法の価値に関する不確実性を解決するものと期待される。
(エリザベス 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修 )
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