ポジオチニブはEGFRおよびHER2エクソン20挿入変異に対して臨床的に有効

転移性非小細胞肺がんに対して有望な新規チロシンキナーゼ阻害剤

米国テキサス州ヒューストンにあるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター胸部・頭頸部腫瘍内科部門のJohn V. Heymach医師の研究チームは、転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の上⽪成⻑因⼦受容体EGFRおよびHER2のエクソン20挿入変異に対し、ポジオチニブが臨床的に有効であると確認したとNature Medicine誌で発表した。本研究では、これらの変異によって生じる立体構造の変化に対応できるチロシンキナーゼ阻害剤の分子的特徴が明らかにされた。

上⽪成⻑因⼦受容体(EGFR)遺伝子変異陽性、非小細胞肺がん(NSCLC)の最も活性のある変異は既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)に感受性があるが、EGFRおよびHER2のエクソン20挿入変異陽性の患者はこれらに耐性を持ち、有効な治療法がないと、著者らは研究背景として説明した。

研究チームには、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、ダナファーバーがん研究所、コロラド大学がんセンター、エール大学医学部、シドニー・キメル総合がんセンターおよびニューヨーク大学ランゴン医療センターの研究者らが参加した。

本研究では、コンピューター内での計算、細胞、マウスを用いた実験により、エクソン20挿入変異によって生じる立体構造の変化モデルを作り、有効な阻害薬を特定した。3Dモデリングから、立体構造の変化により薬剤結合ポケットの大きさが制限されるために、サイズが大きく剛性の阻害剤の結合が制限されることがわかった。ポジオチニブはサイズが小さく柔軟性があるため、これら立体構造の変化に対応することができ、最も頻繁なEGFRおよびHER2エクソン20挿入変異に対して有効であった。

さらに、EGFRまたはHER2エクソン20挿入変異 陽性NSCLC由来の細胞や患者由来異種移植マウスモデル、および遺伝子改変マウスモデルにおいて、ポジオチニブは、既存のEGFR チロシンキナーゼ阻害薬より活性が強かった。

第2相試験では、ポジオチニブにより、EGFRエクソン20挿入変異があるNSCLC患者11人で客観的奏効率64%を確認した。

本研究は複数の助成金を受けた。本臨床試験はSpectrum Pharmaceuticals社の援助を受けた。

ポジオチニブは韓国の韓美薬品社が開発した。韓美薬品社は2014年8月、中国における独占的ライセンス権を中国のLuye Pharma社に許可し、2015年2月には韓国以外の世界各国での独占的ライセンス権をSpectrum Pharmaceuticals社に許可した。

参考文献:

Robichaux JP, Elamin YY, Tan Z, et al. Mechanisms and clinical activity of an EGFR and HER2 exon 20–selective kinase inhibitor in non–small cell lung cancer. Nature Medicine, Published online 23 April 2018. doi:10.1038/s41591-018-0007-9

翻訳担当者 有田香名美

監修 川上正敬(胸部・頭頸部腫瘍内科/MDアンダーソンがんセンター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

処方薬+カウンセリングの統合ケアにより禁煙成功率が上昇の画像

処方薬+カウンセリングの統合ケアにより禁煙成功率が上昇

肺がん検診(高リスク喫煙者対象)を受ける喫煙者にとって、薬物療法と集中的なカウンセリングの組み合わせが最適な禁煙介入であることが研究から判明 肺がん検診を受ける喫煙者が薬物治療...
医療従事者への共感研修で肺がんへの偏見をなくすの画像

医療従事者への共感研修で肺がんへの偏見をなくす

喫煙歴のある人が肺がんと診断されると、この病気にしばしば関連するスティグマ(偏見、差別)のために、罪悪感や羞恥心を抱くことがあります。このスティグマによって、患者と医療従事者の...
米FDAがALK陽性局所進行/転移非小細胞肺がんにensartinibを承認の画像

米FDAがALK陽性局所進行/転移非小細胞肺がんにensartinibを承認

2024年12月18日、米国食品医薬品局(FDA)は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤の投与歴のないALK陽性の局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者を対象に...
肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えることで転帰が改善する可能性の画像

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えることで転帰が改善する可能性

世界的に肺がんはがんによる死亡原因のトップであるが、その心理的、身体的な影響についてはほとんど研究されていない。オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院および...