ニボルマブ+イピリムマブ、肺がんCheckMate-227試験で無増悪生存期間を達成
一次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ併用療法が、高腫瘍遺伝子変異量を有する進行非小細胞肺がん患者の無増悪生存期間(PFS)を改善
米国がん学会(AACR)
進行非小細胞肺がん(NSCLC)と新規診断され、高腫瘍遺伝子変異量(TMB、10変異/ Mb超の変異がある)の患者のうち、ニボルマブ(オプジーボ)+イピリムマブ(ヤーボイ)を投与された患者は、標準治療である化学療法を受けた患者と比較して、無増悪生存期間が有意に改善したとのCheckMate -227第3相臨床試験のデータが、4月14~18日に開催された2018年度米国がん学会(AACR)年次総会で発表された。
本研究は発表と同時に New England Journal of Medicine誌に掲載される。
「肺がんは、世界中でもがんによる死亡を引き起こす最大要因であり、新規診断された進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の大半において、長い年月にわたり、化学療法が標準治療とされてきました」と、スローンケタリング記念がんセンター助手Matthew Hellmann医師は言う。 「PD-1免疫療法は、こうした患者集団に対する重要な新規治療選択肢として最近登場したものの、NSCLC患者全体のごく少数にしか奏効しません」。
「このような状況から、治療成績を改善するための重要な機会が2つもたらされました。ひとつは有効な併用療法を開発して免疫療法に奏効する患者集団を拡大すること、もうひとつは奏効を予測する有効なバイオマーカーを特定することです」とHellmann氏は説明した。
「高TMBのNSCLC患者に対して、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法が化学療法と比較して無増悪生存期間が改善したこと、抗PD-1単独療法と比較して無増悪生存期間が増加すること、持続的奏効をもたらすこと、一次治療時に化学療法を使わなくてよいこと、そして必要であれば、二次治療時の有効な選択肢として化学療法を残しておくことができること、などが本研究結果で示されました」とHellmann氏は付け加えた。
「これら診療を変えるデータは、ニボルマブ+イピリムマブの併用療法が高TMBのNSCLC患者に対する一次治療の選択肢になることを証明しています」とHellmann氏は述べる。本研究から、TMBは新規に診断されたNSCLC患者において、検査すべき重要かつ信頼性の高いバイオマーカーと見なされると同氏は付け加えた。
CheckMate -227試験とは、ステージ4または再発非小細胞肺がん(NSCLC)で、前治療歴のない患者を対象に、ニボルマブ単剤、ニボルマブ+ イピリムマブ併用、およびニボルマブ +プラチナ製剤2剤(PT-DC)併用とPT-DC療法を比較した大規模非盲検ランダム化第3相臨床試験である。この中で、免疫療法の併用療法とPT-DC療法を比較したデータが今回報告された。「本研究で発表した最初の主要評価項目は、高TMB患者における無増悪生存期間でした。高TMBはPD-L1発現とは無関係に利用できる新しいバイオマーカーで、NSCLC患者の約45%を特徴づけるものです」とHellmann 氏は述べた。
高TMBレベル患者299人のうち139人がニボルマブ+イピリムマブ併用療法を受け、160人が化学療法を受けた。
最短11.5カ月のフォローアップの後、免疫療法薬併用治療を受けた患者は、PT-DC治療を受けた患者と比較して病勢が進行した人の割合が42%少なかった。「1年後の無増悪生存率はほぼ3倍の43%対13%であり、1年奏効持続率も68%対25%で免疫療法薬併用治療を受けた患者が上回っていました」とHellmann氏は述べる。ニボルマブ+イピリムマブ治療を受けた患者の奏効率は45.3%、それに対してPT-DC治療を受けた患者の奏効率は26.9%であった。
ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群の忍容性は良好であり、安全性プロファイルは同レジメンを用いた過去の実績と類似していた。治療に関連するグレード3~4の副作用は併用療法群31%であり、対する化学療法群は36%であった。
「免疫療法で治療効果を得られるかどうかの予測バイオマーカーとしてTMBが重要であることを示唆するデータが急速に集まってきたため、CheckMate -227試験の研究デザインを修正しました。PD-L1発現により選別した患者におけるニボルマブ+イピリムマブ療法を検証する当初の研究デザインに加えて、10変異/Mbを高TMBと定義した上で、高TMB患者に対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法群対化学療法群の試験結果も主要評価項目のひとつに組み込みました」とHellmann氏は言う。
「いまだ最終結果解析には至っていない全生存率のデータが得られれば、高TMBのNSCLC患者に対する一次治療選択肢としてのニボルマブ+イピリムマブ併用療法の臨床的有用性の理解がより進むでしょう」とHellmann氏は述べた。
本研究はBristol Myers Squibb(BMS)社および小野薬品工業株式会社の支援を受けた。Hellmann氏は、BMS社、Genentech/Roche社、AstraZeneca社、Merck社、 Janssen社、 Novartis社、Mirati Therapeutics社、Shattuck Labs社の有償コンサルタントである。
*監修 者コメント 田中 謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/九州大学病院 呼吸器科):
全生存期間の延長効果があるかどうかが発表されていないことに加え、本研究で用いられた
「腫瘍遺伝子変異量 (TMB)」の測定方法は未だに定まっていないため、ニボルマブ+イピリム
マブ併用療法が実際の臨床に導入される時期は未定です。
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