ダコミチニブがEGFR陽性肺がんに有効な可能性
ASCOの見解
「EGFR標的療法が導入されてから15年近くたち、その時以来多数の患者の生存期間延長に役立っています。これらの治療薬の第二世代はより有効的ですが、より重い副作用を引きおこす可能性もあります。そのため、患者とその主治医はリスクと利益を天秤にかける必要があります」と、ASCO専門委員であるJohn Heymach医学博士は語った。
第3相臨床試験により、新たに進行上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)と診断された患者を対象とした新しい治療法の可能性が示された。第二世代EGFR阻害薬ダコミチニブは、この疾患に対する標準分子標的治療薬の一つであるEGFR阻害薬ゲフィチニブ(商品名 イレッサ)と比較して、中央値で5.5カ月以上、がんの成長を遅らせた。
本試験は本日、記者会見で紹介するとともに、2017年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表する予定である。
毎年、世界中で約14万人(米国だけで1万5000人)がEGFR遺伝子変異陽性NSCLCと診断されている。EGFR遺伝子変異陽性がんでは、遺伝子変異によって活性化したEGFRタンパク質ががん細胞の成長を促進する。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は、新たにEGFR遺伝子変異陽性NSCLCと診断された患者向けの標準治療薬である。本試験はEGFR TKI、2剤を直接比較した初の第3相試験である。
「われわれは数年前、分子標的療法が化学療法に取って代わった頃にEGFR遺伝子変異陽性肺がん対象の治療パラダイムを変更しました。本試験はこれらの患者にダコミチニブがさらに有効な治療薬である可能性を示しました。しかし、患者は治療法を選択する際に副作用の可能性に対処する必要性を承知しておかなければなりません」と、本試験の筆頭著者であり、香港中文大学(中国、香港)の臨床腫瘍学部教授および学部長であるTony Mok医師は述べた。
ダコミチニブはその化学的性質により、ゲフィチニブやエルロチニブなどの第一世代の阻害薬よりも効果的にEGFRを阻害するため、腫瘍の成長を長く阻止し続けることができる。その一方で、健康な組織にある正常なEGFRもより強く阻害するため、皮膚発疹、座瘡、下痢などの副作用をより多く引き起こす。
試験について
この第3相臨床試験には、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCのステージ3Bまたはステージ4と新たに診断された452人を無作為にダコミチニブ投与群またはゲフィチニブ投与群に割り付けた。患者登録はアジアおよび欧州で行った。
主な知見
ダコミチニブを投与した患者は、ゲフィチニブを投与した患者よりもがんの進行またはがんによる死亡の可能性が41%低かった。無増悪生存期間はダコミチニブ群が14.7カ月であったのに対して、ゲフィチニブ群は9.2カ月であった。全生存期間中央値を評価するにはより長い追跡期間が必要である。
ダコミチニブ群にもっともよくみとめられた重度(グレード3)の副作用は、座瘡(患者のうち14%)、下痢(患者のうち8%)であった。副作用のため、患者の約60%がダコミチニブ投与量を減らした。ゲフィチニブ群にもっともよくみとめられた重度(グレード3)の副作用は肝酵素異常(患者のうち8%)であった。
「ダコミチニブはアファチニブ(商品名 ジオトリフ)と同様に、皮膚および胃腸管における副作用が増加する問題を共有する、より強力な第二世代阻害薬の一つです。それでも、本試験でみとめられた作用を考えれば、これら患者集団に対するこの有効な治療法を検討すべきです」と、Mok氏は述べた。もう一つの第二世代EGFR阻害薬であるアファチニブはすでにEGFR遺伝子変異陽性NSCLCの初回治療薬としてFDAから承認されている。ダコミチニブはまだどの適応症に対しても承認されていない。
資金:ファイザー社とSFJ Pharmaceutical Groupが共同開発契約を結び、複数の試験サイトにわたってARCHER 1050試験を実施している。
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