アレクチニブが肺がんの無増悪生存期間を1年以上延長

ASCOの見解

「この第2世代分子標的薬治療が、脳転移を予防しながら進行肺がんの増殖を2年以上停止させたという事実は、この難病における並外れた結果です」と米国臨床腫瘍学会(ASCO)専門委員のJohn Heymach医学博士は述べた。「この進歩のおかげで、対象患者がより長く、より良く生きる手助けができる方向にわれわれは向かっています」。

第3相臨床試験の結果がALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対してより効果的な初期治療を示した。現在標準治療として使用されているクリゾチニブ(商標名:ザーコリ)に比べて、後発のALK阻害剤アレクチニブ(商標名:アレセンサ)は中央値で15カ月長く、がんの増殖を停止させたうえ、重篤な副作用も少なかった。

この研究は、今日の記者発表で紹介される予定で、2017年ASCO年次総会で発表されることになっている。

「これは、ALK陽性肺がんにおいてアレクチニブとクリゾチニブを比較した初めての国際共同治験であり、その状況における初期治療の新しい標準としてアレクチニブを確証するものである。アレクチニブは、患者の生活の質に大きな影響を及ぼすことがある脳転移の制御と予防に特に有益であった」と、マサチューセッツ州ボストンにあるマサチューセッツ総合病院がんセンターの胸部腫瘍学部長で筆頭研究著者であるAlice T. Shaw医学博士は語った。

NSCLC患者の約5%はALK陽性だが、これは当該患者がALK遺伝子と他の遺伝子とが融合した遺伝子再編成を有することを意味する。米国では、毎年約12,500人がALK陽性NSCLCと診断されている。

ALKを選択的に標的とする最初の薬剤であるクリゾチニブは米国食品医薬品局に2011年に承認された。大多数の患者がはじめはクリゾチニブの有益性を享受するものの、一般的に1年以内には再びがんが増殖を開始してしまう。アレクチニブはより強力で次世代型のALK阻害剤であり、当初はクリゾチニブ治療後も悪化した進行NSCLC患者用として2015年に承認された。

研究について

この非盲検臨床試験(ALEX)で研究者は、ステージIIIBまたはIVのALK陽性NSCLC患者303人を無作為にアレクチニブまたはクリゾチニブに割り付けた。当該患者は、進行NSCLCの全身療法歴がなかった。

主な知見

アレクチニブは、クリゾチニブと比較してがんの進行または死亡のリスクを53%低下させた。独立した審査によると、アレクチニブは無増悪期間を中央値で約15カ月延長した(無増悪生存期間の中央値は、アレクチニブ群で25.7カ月、クリゾチニブ群で10.4カ月であった)。

「進行肺がんの進行をこれほど遅らせることが可能だとは誰も想像しなかった。肺がんの分子標的薬治療のほとんどは無増悪生存期間の中央値がおおよそ12カ月だ」とShaw氏は述べた。

2つの治療はいずれも血液脳関門を通過するが、脳への浸透により優れているアレクチニブの方がクリゾチニブよりも脳転移の予防に有効だった。12カ月経過時点での脳転移の発生率は、アレクチニブ群(9%)がクリゾチニブ群(41%)より有意に低かった。

全体として、重篤な副作用はクリゾチニブ(50%)よりアレクチニブ(41%)の方が起こりにくかった。アレクチニブの最も一般的な副作用は倦怠感、便秘、筋肉痛および浮腫だったが、クリゾチニブは胃腸障害および肝臓酵素の異常だった。

次の段階

研究者らは、この研究に参加した患者の追跡調査を継続し、アレクチニブで治療した患者がクリゾチニブで治療した患者よりも長く生存するか確認することにしている。一方、複数の臨床試験が進行中で、初回治療としての他の次世代ALK阻害剤とクリゾチニブの比較が行われている。

この研究はF.Hoffmann-La Roche社の資金を受けた。

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翻訳担当者 関口百合

監修 吉松由貴(呼吸器内科/飯塚病院)

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