FDAが、未治療のALK陽性の転移性肺がんにセリチニブを承認

米国食品医薬品局(FDA)は2017526日、FDA承認済みの検査によって未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性と判定された転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の患者を対象に、セリチニブ(商品名:ジカディア、ノバルティスファーマ社)の適応拡大を承認した。

セリチニブは、20144月、進行した、またはクリゾチニブ不耐容の転移性ALK陽性NSCLC患者を対象に迅速承認された。163人が登録された単群試験で、盲検独立中央審査委員会(BIRC)の査定による全奏効率(ORR)が44%となったことが根拠であった。

今回の承認は、未治療ALK陽性NSCLC患者を対象としたランダム化多施設非盲検実薬対照試験ASCEND-4NCT01828099)から得られたデータに基づいている。全患者は、中央検査室によるVENTANA ALKD5F3)検査で同定されたALK再配列の根拠を有することが求められた。

ASCEND-4では、376人を(11)に、セリチニブを750mg11回病勢進行まで経口投与する群(n=189)と、プラチナ製剤+ペメトレキセド併用化学療法群(n=187)に無作為に割付けた。化学療法群は、1日目にペメトレキセド(500 mgm2)と、シスプラチン(75mgm2)またはカルボプラチン(AUC 5-6)のどちらかを投与し、21日間を1サイクルとして4サイクルまで実施した後、ペメトレキセドによる維持療法を行った。

ASCEND-4では、BIRCの査定による無増悪生存期間(PFS)の改善が、ハザード比(HR0.5595% CI: 0.42, 0.73, p<0.0001)で示された。PFSの推定中央値は、セリチニブ群で16.6カ月(95% CI: 12.6, 27.2)、化学療法群で8.1カ月(95% CI: 5.8, 11.1)であった。確定ORRは、セリチニブ群で73%(95% CI: 66, 79)、化学療法群で27%(95% CI: 21, 34)であった。奏効期間の推定中央値は、セリチニブ群では23.9カ月(95% CI: 16.6, 推定不可[NE])、化学療法群では、11.1カ月(95% CI: 7.8, 16.4)であった。全生存データはまだ得られていない。

ベースライン脳スキャンで測定可能な中枢神経系(CNS)病変が認められた患者における、BIRCの神経放射線学者の査定による頭蓋内病変の全奏効率は、セリチニブ群では57%(95% CI :37, 76)、化学療法群では22%95% CI: 9, 42)であった。CNSの奏効期間中央値は、セリチニブ群では16.6カ月(95% CI: 8.1, NE)、化学療法群では推定不可(95% CI: 1.5, NE)であった。

最も多くみられた有害反応(ASCEND-4のセリチニブ群患者の25%以上に発生)は、下痢、悪心、嘔吐、疲労、腹痛、食欲減退、および咳嗽であった。セリチニブ群患者の38%に重篤な有害反応が認められた。12%にセリチニブ投与中止の原因となった有害反応が発生した。1%以上の患者でセリチニブ中止の原因となった有害反応は、クレアチニン増加、アミラーゼ増加、リパーゼ増加であった。有害反応によって、セリチニブ群患者の77%が投与を中断し、66%が投与薬を減量する必要があった。

セリチニブの推奨投与量は経口で750mg11回、食事の1時間以上前、または2時間以上後に服用する。

添付文書の全文は、Highlights of Prescribing Information ZYKADIAに掲載されている。

FDAは今回の承認に先立ち、セリチニブを、脳転移を有するALK陽性の転移性NSCLC患者に対する初回治療薬として画期的治療指定薬として承認した。この申請には優先審査が適用された。FDAの促進プログラムの詳細は、業界向けのガイダンス「重篤疾患のための迅速承認プログラム医薬品および生物学的製剤(Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)」で閲覧できる。

医療従事者は、医薬品および医療機器の使用との関連が疑われるすべての重篤な有害事象を、http://www.fda.gov/medwatch/report.htmのオンラインフォームへの入力、オンライン上の宛先フォームに料金受取人払いでFAX1-800-FDA-0178)または郵送、もしくは電話(1-800-FDA-1088)のいずれかの方法で、FDAMedWatch Reporting Systemに報告すること。

Oncology Center of Excellenceのツイッターのフォローはこちらから@FDAOncology

翻訳担当者 粟木 瑞穂

監修 峯野知子(薬学・分子薬化学/高崎健康福祉大学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)の画像

世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)

特集:術前・術後の免疫療法、HER2およびEGFR遺伝子変異を標的とした治療など、肺がん治療における有望な臨床的進歩テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは...
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長の画像

肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解「過去15年間にわたり、ミシシッピ・デルタ中心部における質改善の取り組みは、この高リスク集団の...
RET融合陽性非小細胞肺がんに対するセルペルカチニブ治療は東アジアの患者に有効の画像

RET融合陽性非小細胞肺がんに対するセルペルカチニブ治療は東アジアの患者に有効

食道がん、上咽頭がん、肺がんの治療の進歩ーASCOブレークスルー会議新しい治療法が生存とQOLの改善に役立つ食道がん、上咽頭がん、肺がんにおける新たな研究の進展を詳述する3つの...
電子タバコと紙タバコの二重喫煙で、肺がん発症リスクが4倍に増加の画像

電子タバコと紙タバコの二重喫煙で、肺がん発症リスクが4倍に増加

電子タバコと従来の紙巻タバコを併用して喫煙する人は、紙タバコの喫煙のみの人に比べて肺がんを発症する可能性が4倍高かった。この結果はオハイオ州立大学総合がんセンター、アーサーG・ジェーム...