ゲフィチニブが2-3A期の肺腺がんにおいて再発までの期間を延長

「この試験は、化学療法よりも副作用がはるかに少ない分子標的療法が有効な肺がん患者のタイプを明らかにするものです」と、ASCO次期会長のBruce E. Johnson医師は語った。また、「プレシジョン医療を、進行した肺がん患者だけでなく、より早期の患者にも用いることできることを示す、明白なエビデンスでもあります」とも述べた。

肺がん術後の再発予防に対して、分子標的薬ゲフィチニブは標準治療である化学療法よりも効果が高いとみられている。第3相臨床試験では、上皮成長因子受容体(EGFR)陽性2-3A期非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、再発までの期間はゲフィチニブ投与群の方が化学療法群よりも約10カ月長かった。この試験は、シカゴで開催される2017年ASCO年次総会で発表される。

「ゲフィチニブによる術後補助化学療法はいずれ、活性型EGFR遺伝子変異がある2-3A期肺がん患者に対する重要な選択肢として考慮されるようになる可能性があり、EGFR検査はこの比較的早期の肺がん患者の標準検査とみなされるようになるかもしれません」と、中国、広州の広東総合病院、広東肺がん研究所所長でこの論文の主執筆者であるYi-Long Wu医師は述べた。また、「単に再発までの期間を計測する無病生存期間ではなく、全生存期間を完全に計測できるまで、こうした患者を追跡する予定です」と語った。

2-3A期のNSCLC患者は再発率が高く、5年生存率は40%にとどまる。NSCLCと診断される全患者のうち、根治をめざした腫瘍切除術の対象となるのは約25%である。その中の約30%(全世界で約140,000人)は、腫瘍にEGFR変異があり、EGFR標的療法による術後補助化学療法によって再発率の低下が期待できる。

この研究について

術後、腫瘍に活性型EGFR変異があると確認された患者222人を、ゲフィチニブ投与群と化学療法(ビノレルビン+シスプラチン)群にランダムに割付けた。ゲフィチニブ群は24カ月間毎日ゲフィチニブを服用し、化学療法群は抗がん剤を3週間に1回4サイクル投与する標準療法を受けた。著者らによると、化学療法は、通常、長期間にわたると忍容性が良好ではなくなるため、投与期間を短くしたという。全患者について、再発について約3年間追跡調査した。

「最近行われた分子標的薬による術後補助化学療法の試験2件では、NSCLCにおける利益は証明されませんでした。試験のデザインに1、2および3期のNSCLCが含まれていたことが一因でした」とWu医師は語った。「これまでの試験では、患者にEGFRの過剰発現(過剰活性)が現れるかどうかを調べるだけで、EGFRの変異には注目していませんでした。私たちの試験では、活性型EGFR変異をもつことが確認された患者を組み入れており、分子標的療法の利益が他の試験では示されなかったのに私たちの試験では示された原因はこうした理由によると考えています」。

ゲフィチニブはEGFRによるシグナル伝達を阻害し、変異した過剰活性EGFRをもつがんにのみ有効である。この薬剤は、進行NSCLC患者に対する3次療法として、2003年に初めてFDAに承認されたが、現在、EGFR変異をもつ進行NSCLCに対する初回療法として承認されている。

主な知見

再発(無病生存)期間中央値は、ゲフィチニブ投与群では28.7カ月、化学療法群では18カ月だった。試験期間中に死亡した患者は76人(全登録患者の34.2%)で、内訳は、ゲフィチニブ群は41人、化学療法群は35人だった。

重度の副作用を経験した患者は、ゲフィチニブ群(12%)の方が化学療法群(48%)よりもはるかに少なかった。ゲフィチニブ群で最も多くみられた重度の副作用は肝酵素上昇だったが、化学療法群では嘔吐、悪心、血球数減少、貧血など、生活の質に影響する重度の症状が多かった。

次の段階

外科的切除した肺腫瘍の保存組織検体があるので、EGFRに加えて、ゲフィチニブ反応性または抵抗性のバイオマーカー候補を探すための総合的バイオマーカー分析が計画されている。治療転帰の解析の完成度を高める計画もあると、Wu医師は話した。

この研究は、中国胸部腫瘍グループ(CTONG)およびAstraZeneca China社から資金提供を受けた。

翻訳担当者 粟木瑞穂

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部付属病院)

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