ALK陽性肺がんに対するクリゾチニブの効果が予測できる可能性
ALK遺伝子異常に起因する非小細胞肺がんに対してクリゾチニブ(ザーコリ)による治療を受けている患者では、治療開始後最初の2カ月のALK遺伝子のコピー数増加を伴う血中循環腫瘍細胞(CTC)数の減少と無増悪生存期間の延長が相関することが、米国がん学会(AACR)の機関誌であるCancer Research誌に掲載された研究結果により明らかになった。
「NSCLCの約4%はALK遺伝子再構成と呼ばれる遺伝子異常に起因します」とフランス、ヴィルジェイフにあるパリ・サクレー大学国立保健医学研究所(INSERM)ギュスタフ・ルーシーがん研究所の循環細胞チームリーダーであるFrançoise Farace博士は述べた。「ALKを標的とした治療薬であるクリゾチニブの承認によりALK遺伝子再構成に起因するNSCLC患者の転帰が向上しましたが、奏効期間は数カ月~数年と大きなばらつきがあります」。
「本研究では、クリゾチニブ治療開始前と治療開始後2カ月の時点でCTC中のALK遺伝子コピー数を分析しました。われわれは、この経時的分析によりクリゾチニブの有効性を予測するバイオマーカーが得られる可能性を示しました」とFarace博士は続けた。「このことは重要です。なぜなら、現在のところ、クリゾチニブが長期間にわたって有効である可能性が高い患者とそうでない患者を区別する方法はないからです。後者には、最近開発された新しいALK標的治療薬による治療を検討しなければなりません」。
Farace博士らは、ALK遺伝子再構成NSCLC患者39人を前向きに本研究に組み入れた。クリゾチニブ治療開始前にすべての患者から血液検体を採取した。このうち29人の患者から約2カ月後にも血液検体を採取した。残りの患者10人は別の施設でフォローアップケアを受けており、分析のための経時的な血液検体入手ができなかった。
血液検体からCTCを濃縮した後、ALK遺伝子再構成およびALK遺伝子のコピー数増加について検体を分析した。治療開始前および治療開始後2カ月の時点で、ALK遺伝子再構成とALK遺伝子のコピー数増加の両方が全患者のCTC中で認められた。
この異なった時点でのCTC数の分析により、ALK遺伝子のコピー数増加を伴うCTC数の経時的な変動が無増悪生存期間と統計学的に有意な関連を示す測定値の1つであることが明らかになった。無増悪生存期間の中央値は、ALK遺伝子のコピー数増加を伴うCTC数が減少した患者13人では14.0カ月であったのに対し、横ばいまたは増加患者16人では6.1カ月であった。さらに、多変量分析において、ALK遺伝子のコピー数増加を伴うCTC数が減少した患者は横ばい・増加した患者よりも疾病増悪しない確率が4.5倍高かった。
「本研究はALK標的薬剤の効果予測に関する予備的なコンセプト実証(POC)試験であり、臨床で使えるようになるまでには、さまざまな施設でより大規模な検証のための研究を行わなければなりません。しかし、今回の結果は、リキッド・バイオプシーを用いることにより、治療に対する効果をリアルタイムにモニタリングし、患者個々のレベルに最適な治療を行える可能性を示しています」とFarace博士は述べた。
Farace博士によると、本研究の主な限界は、CTCは血中に微量しか存在しないこと、CTC中におけるALK遺伝子コピー数増加の同定は複雑で、極めて特殊なノウハウと高度な技術上の専門知識を要することである。したがって、この検査法をより大規模に用いるには技術進歩を要するとFarace博士は述べた。
本研究はフランス財団、 the Fondation ARC pour la Recherche sur le Cancer、革新的医薬品イニシアティブ11th Call CANCER ID、フランス国立がんセンター、およびフランス国立研究機構から資金援助を受けた。Farace博士には申告すべき利益相反はない。
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