FDAがEGFR T790M変異陽性の転移非小細胞肺がんにosimertinibを承認

米国食品医薬品局(FDA)は2017330日、上皮成長因子受容体(EGFRT790M変異陽性の転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療薬として、osimertinib[オシメルチニブ](商品名:Tagrisso[タグリッソ]、アストラゼネカ株式会社)を通常承認した。本剤は、FDA承認済みのEGFR T790M変異検出法で陽性が確認され、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤投与中あるいは投与後に病勢進行が認められる患者を適応としている。

オシメルチニブは、411人を対象にした2件の単一群臨床試験で奏効率 (ORR)が59%であったことを受け、EGFR T790M変異陽性の転移NSCLC患者の治療に対し、201511月に迅速承認された。

今回の承認は、EGFRチロシンキナーゼ阻害療法の初回治療後に病勢進行を認めたEGFR T790M変異陽性の転移NSCLC患者を対象にしたランダム化多施設共同非盲検実薬対照試験AURA3NCT012151981)の結果にもとづいている。試験参加者はすべて、コバスEGFR変異検出キットを用いた検査を中央検査機関で実施し、T790M変異陽性が証明された患者であった。

AURA3試験では、419人の患者がオシメルチニブ80 mg 11回経口投与群(n = 279)またはプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法群(n = 140)に、2:1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法群では、pemetrexed(ペメトレキセド)500 mgm2+カルボプラチンAUC5、またはペメトレキセド500 mg/m2+シスプラチン75 mgm21コースを21日として1日目に最長6コースまで投与した後、ペメトレキセドによる維持療法を行った。化学療法群のうち、試験責任医師および盲検化した独立第三者評価機関の両方が放射線学的評価で病勢進行と判断した患者には、進行を認めた時点でオシメルチニブを投与した。

AURA3試験では、試験責任医師の評価にもとづく無増悪生存期間(PFS)が改善し、ハザード比は0.30であった(95% 信頼区間: 0.23, 0.41; p<0.001)。推定PFS中央値はオシメルチニブ群10.1カ月、化学療法群4.4カ月であった。試験責任医師の評価に基づく奏効率は、オシメルチニブ群65%95% 信頼区間: 59%, 70%)、化学療法群29%95% 信頼区間: 21%, 37%)であった(p<0.0001)。推定奏効期間中央値は、オシメルチニブ群11カ月(95% 信頼区間: 8.6, 12.6)、化学療法群4.2カ月(95%信頼区間: 3.9, 5.9)であった。

試験治療開始前の脳スキャン時に測定可能な中枢神経系(CNS)病変を認めた患者における、独立第三者評価機関の評価に基づく中枢神経系の奏効率は、オシメルチニブ群57%95%信頼区間 : 37%, 75%)、化学療法群25%95% 信頼区間: 7%, 52%)であった。中枢神経系における奏効期間中央値はオシメルチニブ群では到達せず( 範囲:1.4~12.5カ月)、化学療法群で5.7カ月(範囲:1.4~5.7カ月)であった。全生存に関する十分なデータは未だ得られていない。

オシメルチニブを投与した患者833人を対象に、重篤な副作用について評価した。最も重篤な副作用は、間質性肺疾患/肺臓炎(3.5%)、QTc間隔延長(0.7%)、心筋症(1.9%)および角膜炎(0.7%)であった。最も発現率が高かった副作用(患者の20%以上に発現)は下痢、発疹、皮膚乾燥、爪毒性および疲労であった。

オシメルチニブの推奨用量は80 mgで、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで、空腹時・食後問わず11回経口投与する。投与開始前に、FDA承認済みの検査法で、がん組織検体または血漿検体(がん組織検体が入手不能な場合)がEGFR T790M変異陽性であることを確認する必要がある。

処方情報の完全版はhttp://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_

docs/label/2017/208065s006lbl.pdfを参照。

FDAはこれまでの画期的治療薬の優先承認審査制度にもとづき、また、希少疾病用医薬品指定にもとづき、EGFR T790M変異陽性NSCLC患者の治療に対しオシメルチニブを承認した。FDA迅速承認プログラムについては業界ガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム—医薬品およびバイオ医薬品(Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されており、http://www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinformation/guidances/ucm358301.pdf で閲覧可能である。

医療従事者は、あらゆる医薬品および医療機器の使用との関連が疑われるすべての有害事象をhttp://www.fda.gov/medwatch/report.htmから所定の様式でオンライン提出、FAX1-800-FDA-0178)、ホームページ記載の住所に郵送、または電話(1-800-FDA-1088)のいずれかの方法でFDAMedWatch Reporting Systemに報告すること。

翻訳担当者 佐々木真理

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

免疫療法薬2剤併用+化学療法はSTK11/KEAP1変異肺がんに有効の画像

免疫療法薬2剤併用+化学療法はSTK11/KEAP1変異肺がんに有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させるの画像

先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解(引用)
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)の画像

世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)

特集:術前・術後の免疫療法、HER2およびEGFR遺伝子変異を標的とした治療など、肺がん治療における有望な臨床的進歩テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは...
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長の画像

肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解「過去15年間にわたり、ミシシッピ・デルタ中心部における質改善の取り組みは、この高リスク集団の...