進行肺がんの一次治療デュルバルマブ、第3相MYSTIC試験

第3相NEPTUNE試験の拡大とアジアを中心とした新たな第3相PEARL試験の開始で強化される中国の薬事承認申請の機会

2017年1月17日、AstraZeneca社は、非小細胞肺がん(NSCLC)の一次治療におけるがん免疫療法の後期臨床開発プログラムの最新情報を発表した。第3相MYSTIC試験の評価項目と統計解析計画の改定も含まれる。

MYSTIC試験は当初、標準化学療法に対するdurvalumab[デュルバルマブ]単剤療法、およびデュルバルマブとtremelimumab[トレメリムマブ]併用療法の有用性について、無増悪生存期間(PFS)に注目して評価するよう設計されていた。

今回の変更により、MYSTIC試験は、PD-L1発現腫瘍を有する患者に対するデュルバルマブ単剤療法、およびデュルバルマブ +トレメリムマブ併用療法、さらに全患者に対するデュルバルマブ + トレメリムマブ併用療法のPFSおよび全生存期間(OS)を標準化学療法と比較して評価する。

MYSTIC試験の評価の中心をデュルバルマブ+ トレメリムマブ併用療法の利益の探索とする一方、評価項目にデュルバルマブ単剤療法のOSとPFSが追加された。AstraZeneca社によると、この変更は、先日の医学学会で発表されたデュルバルマブ単剤療法での顕著な有効性など最近の内外のデータや、激しい競争の環境下において、今が重要な好機であるという点に基づいているという。

募集患者の増員(2016年2月に複数の主要評価項目として生存期間(OS)を追加したこととともに報告)と、この試験のイベントベースの性質を反映して、主要評価項目終了予定時期 を新たに設定した。その結果、MYSTICのPFSデータは2017年中頃に、最終OSデータは遅くとも2018年に収集が完了すると予想している。MYSTICにはさらに、OSに関する未公開の中間解析がいくつか含まれる。

さらに、現在実施中の第3相NEPTUNE試験は、中国のNSCLC一次治療患者を対象としたデュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法の薬事承認申請を支援するため、中国の患者の組み入れを拡大する。グローバルコホートはすでに募集定員にほぼ達しており、この拡大によって2018年と予想されているグローバルコホートのOSデータの収集完了時期が遅延することはない。AstraZeneca社はさらに、腫瘍にPD-L1が発現しているNSCLC一次治療患者を対象としてデュルバルマブ単剤療法と標準化学療法を比較する新規第3相PEARL試験を開始した。PEARL試験は中国を主としたアジア諸国を中心に実施される。この地域ではNSCLCの罹患率が高いためだ。

変更点はすべて、clinicaltrials.gov.など臨床試験ウェブサイトの更新情報に反映される。

MYSTIC試験は、EGFRおよびALK野生型の進行/転移NSCLC患者に対する一次治療として、デュルバルマブおよびトレメリムマブの併用療法またはデュルバルマブ単剤療法と、プラチナ製剤による標準化学療法を比較するランダム化非盲検国際多施設共同第3相試験である。

NEPTUNE試験は、EGFRおよびALK野生型の進行/転移NSCLC患者に対する一次治療として、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法と、プラチナ製剤による標準化学療法を比較するランダム化非盲検国際多施設共同第3相試験である。

PEARL試験は、EGFRとALKが野生型であってPD-L1を発現する進行または転移NSCLC患者に対する一次治療として、デュルバルマブ単剤療法と標準化学療法を比較するランダム化非盲検多施共同設第3相試験である。この試験はアジア諸国におけるデュルバルマブの有効性と安全性を調べるために始められた。対象国にはNSCLC患者数が現在最高レベルの国々が含まれており、中国だけで、2030年の新規患者数は110万人を超えると予想されている。

デュルバルマブはPD-L1に対するヒトモノクローナル抗体治験薬である。デュルバルマブは、2016年にPD-L1陽性手術不能または転移尿路上皮がん患者に対して米国食品医薬品局(FDA)の画期的治療薬指定を、2015年にPD-L1陽性転移頭頸部扁平上皮がん患者の治療に対して優先審査指定を受けた。尿路上皮がんの二次治療に対するデュルバルマブの生物製剤承認申請はFDAに受理され、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)の目標審査期間 は2017年の第2四半期までとなった。

翻訳担当者 粟木 瑞穂

監修 吉松由貴(呼吸器内科/飯塚病院)

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