癌のフォトダイナミックセラピー(光力学的療法):Q&A

NCIファクトシート

Key Points

・フォトダイナミックセラピー(PDT)とは、光増感剤または光感受性薬とよばれている薬剤と特定のタイプの光を組み合わせることで癌細胞を殺す治療法です。(Question1Question2参照)。

・米国食品医薬品局(FDA)により、一部の癌の症状を治療したり緩和するためのPDTでの使用にポルフィマーナトリウム(商標フォトフリン)とよばれる光感受性薬が承認されました。(Question3参照)。

・ポルフィマーナトリウムによる治療を受けている患者は、治療後6週間以上は直射日光や明るい室内光を避ける必要があります(Question5参照)。

・研究者らにより、PDTの効果を改善し一部の癌だけでなく他の癌に適用できるような方法が引き続き研究されています。(Question6参照)。


1.フォトダイナミックセラピーとは何ですか?

フォトダイナミックセラピー(以下PDT)とは光感受性薬光感受性薬または光増感剤とよばれる薬剤および特定のタイプの光を用いる治療法です。光感受性薬に特定の波長の光が当たると、近くの細胞を死滅させるある種の酸素が生成されます。(1、2、3)

それぞれの光感受性薬は特定波長の光により活性化されます(3、4)。波長により身体のどのくらい深いところまで光が届くかが決まります(3、5)。このように医師は特定の光感受性薬と光の波長を用い、身体の異なる部位にPDT治療を行います。

2.PDTは癌の治療においてどのように用いられていますか?

癌治療としてのPDTの最初の段階では、光感受性薬を血管内に注入します。薬剤は全身の細胞に吸収されますが、正常細胞に比べ癌細胞中により長く留まります。注入してから約24時間後から72時間後の間(1)に正常細胞からは薬剤の大部分が排泄されますが癌細胞には留まります。この間に腫瘍細胞に光を当てます。腫瘍細胞中の光感受性薬は光を吸収し、近くの癌細胞を破壊する活性酸素を生成します。(1、2、3)

PDTは、直接癌細胞を殺すだけでなく腫瘍細胞を2つの方法で縮小もしくは破壊すると考えられています。(1、2、3、4)光感受性薬により腫瘍内血管が損傷され、その結果癌細胞は必要な栄養を受け取る事ができなくなります。さらに、PDTは免疫系を活性化することで腫瘍細胞を攻撃します。

PDTで用いる光は、レーザー光または他の光源です(2、5)。レーザー光は光ファイバーケーブル(光を伝達する細い繊維)を通して発せられ、身体内部に到達します(2)。例えば、光ファイバーケーブルは内視鏡(体内の組織を観察するために使われる薄くて軽い管)を通して肺や食道まで挿入され、これらの臓器の癌細胞の治療が行われます。他の光源として発光ダイオード(LED)があり、皮膚癌のような表面の腫瘍の治療に用いられます(5)。

PDTは通常外来の処置として行われます(6)。またPDTは繰り返し行われ、外科治療、放射線治療、化学療法などの他の治療と組み合わせて行われることもあります(2)。

3.最近では、どのようなタイプの癌にPDTによる治療が行われていますか?

現在のところ、米国食品医薬品局(FDA)は食道癌および非小細胞性肺癌を治療するため、もしくは症状を緩和するために、ポルフィマーナトリウム(商標フォトフリン)とよばれる光感受性薬のPDTでの使用を承認してきました(7)。癌により食道が閉塞されるとき、または食道癌をレーザー治療のみでは満足に治療が行えないときポルフィマーナトリウムは食道癌の症状を緩和する目的で承認されています。ポルフィマーナトリウムは、通常の治療が適さない非小細胞性肺癌の治療に、または非小細胞性肺癌が気道を閉塞している患者の症状緩和に用いられています。2003年、バレット食道(食道癌になる可能性がある状態)患者の前癌性 病変の治療でのポルフィマーナトリウムの使用がFDAにより承認されました(8)。

4.PDTの限界にはどのようなものがありますか?

ほとんどの光感受性薬の活性化に必要な光は3分の1インチ(1cm)以上通過することができません。このため、PDTは通常皮膚の直下や内臓および内腔の上皮に存在する腫瘍の治療に用いられています(3)。またPDTは、大きな腫瘍の場合奥まで通過することができないためこれらの腫瘍の治療の効果は弱くなります(2、3、6)。PDTは局部の治療で概して広がっている癌(転移癌)の治療に用いる事はできません(6)。

5.PDTには合併症や副作用はありますか?

治療後約6週間は、ポルフィマーナトリウムにより皮膚や目の過敏症が生じます(1、3、6)。そのため患者は6週間以上直射日光や明るい室内光を避けるようアドバイスされます。
光感受性薬は腫瘍内に集まる傾向があり、光の活性化は腫瘍に集中します。その結果、正常な組織の損傷は最小限に抑えられます。しかし、PDTにより腫瘍の近くの組織でやけど、腫張、痛み、そして瘢痕化が引き起こされることがあります(3)。他にはPDTで治療される部位に関連する副作用があります。咳、嚥下障害、胃痛、呼吸時の痛みまたは息切れなどでこれらの副作用は一時的なものです。

6.PDTの将来はどういうものでしょうか?

研究者らによりPDTの効果の改善と他の癌への適用のための方法が引き続き研究されています。脳、皮膚、前立腺、頚部、腹腔内(腸、胃、肝臓を含む腹部の空間)の癌へのPDTの適用を評価するため、臨床試験(調査研究)が行われています。他の研究では、より強力(1)かつより特異的に癌細胞を攻撃し(1、3、5)、組織の深部までまたは大きな組織に達することが可能な光により活性化される(2)光感受性薬の開発に力が注がれています。また装置(1)および活性化のための光の照射(5)を改善する方法が、研究者らにより検討されています。

Selected References参考文献の抜粋

  1. Dolmans DEJGJ, Fukumura D, Jain RK. Photodynamic therapy for cancer. Nature Reviews Cancer 2003;3(5):380?387.
  2. Wilson BC. Photodynamic therapy for cancer: Principles. Canadian Journal of Gastroenterology 2002;16(6):393?396.
  3. Vrouenraets MB, Visser GWM, Snow GB, van Dongen GAMS. Basic principles, applications in oncology and improved selectivity of photodynamic therapy. Anticancer Research 2003;23:505?522.
  4. Dougherty TJ, Gomer CJ, Henderson BW, et al. Photodynamic therapy. Journal of the National Cancer Institute 1998;90(12):889?905.
  5. Dickson EFG, Goyan RL, Pottier RH. New directions in photodynamic therapy. Cellular and Molecular Biology 2003;48(8):939?954.
  6. Capella MAM, Capella LS. A light in multidrug resistance: Photodynamic treatment of multidrug-resistant tumors. Journal of Biomedical Science 2003;10:361?366.
  7. U.S. Food and Drug Administration (December 2003). Approved claims for palliative line therapy. Retrieved December 29, 2003, from: http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/onctools/
    linelist.cfm?line=Palliative.
  8. U.S. Food and Drug Administration (August 2003). FDA approves photofrin for treatment of pre-cancerous lesions in Barrett’s esophagus. Retrieved December 29, 2003, from: http://www.fda.gov/bbs/topics/ANSWERS/2003/ANS01246.html (*日本語訳

翻訳担当者 South

監修 平 栄(放射線腫瘍科)

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原文掲載日 

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