経過観察にウェブアプリ利用で肺がんの生存期間が延長
*この要約には抄録に記載がない更新情報も含まれる
プレスリリース
ウェブを介した経過観察アプリケーション(商標名:Moovcare)が進行肺がん患者の生存期間を改善することが、フランスの多施設ランダム化第3相試験によって示された。研究者らは、患者が評価した臨床症状出現との関連を経時的に解析した。標準的な経過観察を受けた患者群の全生存期間中央値が12カ月であったのに対し、アプリを利用した患者群では19カ月であった。生活の質(QOL)についても、アプリケーションを利用した患者の方が良好であった。本研究は本日(6月6日)記者会見に取り上げられ、2016年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会にて発表される予定である。
「この便利でシンプルなオンラインアプリを利用した個別化経過観察を通して、合併症や再発の徴候を発見し、より早期に適切なケアを提供できます」と、フランスのル・マンにあるInstitut Inter-regional de Cancérologie Jean Bernardの研究者であり、筆頭研究著者であるFabrice Denis医学博士は述べた。「この取り組みは、経過観察の新時代の扉を開きます。担当医の診察までの間に、患者との継続的なフィードバックのやり取りが可能となるのです」。
本研究について
初回の化学療法、放射線療法、外科手術を終えたIII/IV期の肺がん患者133人を、ウェブを介した経過観察群と、標準的な経過観察群とにランダムに割り付けた。標準的経過観察群では、医師による診察と3~6カ月ごとの(あるいは研究者の判断によってはより頻繁に)CT検査を行った。
ウェブアプリ群の患者も同様のスケジュールで医師の診察を受けたが、CT検査の予定回数は3分の1とされた。患者はウェブアプリを用いて、毎週症状の自己評価を行った。患者の代わりに介護者のデータ入力も可能であった。アプリケーションは12の症状を分析し、腫瘍医にその結果を報告した。アルゴリズムが症状の特定の変化を評価し、医師に注意喚起のEメールを送信した。医師は、支持療法を含めたがん治療の適応検討のための検査や診察の必要性を確認した。
重要な知見
1年の時点で、ウェブアプリ群では75%の患者が生存していたが、標準的経過観察群での生存患者は49%であった。良好な結果のため、本研究は予定されていた中間解析の時点で中止となった。
再発率は両群同様で、それぞれ標準群51%、ウェブアプリ群49%であった。再発時の患者の健康状態(全身状態)はウェブアプリ群が良好で、患者の大多数(74%)が再発時の推奨治療をすべて受けることができた。対照的に、標準的経過観察群では、がん再発時の最適な治療を十分に受けた患者はわずか3分の1であった。
QOLは、標準的なQOL質問票FACT-L、FACT G、TOIを用いて評価され、ウェブアプリ群が全般に良好であった。ウェブアプリを使った経過観察では、画像検査/人・年の平均数値も50%低減した。
この知見は、通信医療を利用した経過観察に関する他の2つの研究結果と一致している。しかしながら、著者らによれば、本研究はウェブを介した経過観察対標準的経過観察で、生存期間に大きな改善がみられた初のランダム化試験である。また、有症状再発または合併症の早期検出を目的としたアルゴリズムが、早期の支持療法や治療の誘因として利用されたのも今回が初めてであった。
さらに、患者が報告した症状の評価は医師にとって負担にはならなかった。平均して、腫瘍医が患者60人の追跡に要した時間は1週間にわずか15分で、患者が病院に電話をかけてくる頻度も自動的に減少した。
肺がんについて
肺がんは、世界的にもっとも頻度の高いがんである。2012年には、世界で180万人が肺がんと診断され、推定159万人が死亡した[1]。米国では、今年、224,000人が肺がんと診断される見通しだ[2]。外科手術、化学療法、放射線療法、分子標的療法、免疫療法の進歩に関わらず、肺がんは依然として重篤な疾患である。著者らによると、肺がん再発時のほとんどすべて(80~90%)に症状がある。
本研究は、アプリケーションMoovcareの開発者であるthe Institut de Cancérologie de l’Ouest / Sephira Inc.、ivan Innovationの助成を受けた。
抄録の全文はこちら
1http://globocan.iarc.fr/old/FactSheets/cancers/lung-new.asp Accessed May 25, 2016.
2http://seer.cancer.gov/statfacts/html/lungb.html Accessed May 25, 2016.
原文掲載日
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