高リスク肺がん患者へは、低線量CTによる年次検診が必要ない可能性

デューク大学医療センター

大部分の高リスク肺がん患者において、初回検査で疾患の疑いがなければ、低線量CT検査を毎年受ける必要がない可能性があると、デュークがん研究所が主導した試験により示された。

研究者らは、過去にヘビースモーカーであったとしても初回の低線量CT検診が陰性であれば、肺がん発生率は減少する傾向にあることを発見し、このことから検診回数を減らしても問題がない可能性があるとした。

「これは公共政策に大いに関係する。患者の検診を毎年実施しないことで、医療費を数百万ドル抑えることができるとともに、患者の放射線被ばくや検診での偽陽性判定によってもたらされる不利益 が減らせる」と、試験主著者であり、デューク放射線学James and Alice Chen Professor(訳注:デューク大学の称号)であるEdward F. Patz, Jr.医師は、3月21日に公表されたLancet Oncology誌電子版で述べた。

Patz医師らは全米肺検診試験のデータを解析した。この試験は大規模前向き試験であり、喫煙歴のある参加者について、肺がんの早期発見を目的として年1回の低線量CT検診を3回受ける群と、年1回の胸部レントゲン撮影を3回受ける群のいずれかに無作為に割り付けて実施された。

参加者の年齢は55~74歳であり、換算で30年間の喫煙経験(1箱/1日/30年間、2箱/1日/15年間など)を有していた。

研究者らは、低線量CT群において、初回スクリーニングが陰性判定であった試験参加者を同定した。その後、この初回低線量CT陰性群と、初回スクリーニングで異常が検出された低線量CT群とを比較し、肺がん発生率および肺がん関連死における両群の差を評価した。

初回低線量CTスキャンが陰性であった当初参加者19,066人のうち、最後の追跡調査時に肺がんと診断されたのは444人(2%)であった。

スクリーニング陰性判定後、予定された1回目の年次検診前の1年間に、参加者17人(初回低線量CT陰性群の0.09%)が肺がんと診断された。

さらに参加者75人(初回低線量CT陰性群の0.4%)が1回目と2回目の年次検診の間に肺がんと診断された。(監訳者注:62人が検診発見がん、13人が中間期がん;見逃しがん)、初回スクリーニングで肺がんと診断された参加者が1%であったのに対し、初回スクリーニング陰性であった参加者のうち、1回目の年次検診で肺がんが見つかったのは0.34%であった。

研究者らは、初回スクリーニング陰性判定後に1回目の年次検診を実施しなかった場合、試験終了までに低線量CT群の肺がん死亡者数は最大28人増加し、10万人当たりの年間死亡者数では186人から212人への増加となると推定した。(監訳者注:上記の1回目と2回目の間に診断された75人中、生存していた28人全員が死亡すると仮定)

「われわれの解析は、初回スキャンが陰性だった参加者には年次検診の必要がない可能性を示唆している。リスク予測と費用対効果のモデルづくりにこれらのデータを組み込み、検診ガイドラインを改善することが可能だ」とPatz医師は述べた。

同医師は、肺がん低線量CT検診の精度改善によっても年次検診の回数を大幅に減らせるだろうと付け加えた。

試験が実施された7年間において、全米肺検診試験で低線量CT受診者の40%近くが偽陽性の判定を受けている。

Patz医師以外の共著者は以下のとおり。 Erin Greco, Constantine Gatsonis, Paul Pinsky, Barnett S. Kramer, and Denise R. Aberle

翻訳担当者 岐部幸子 

監修 斎藤 博(検診研究部/国立がん研究センター)

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