FDAがEGFR T790M変異陽性肺がんにosimertinibを承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

新たな診断薬を用い、新治療薬が標的とする特定の遺伝子変異を同定する

速報

米国食品医薬品局(FDA)は、11月13日、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する経口治療薬osimertinib[オシメリチニブ](商品名:Tagrisso)を迅速承認した。Osimertinibは、腫瘍内に特定の上皮成長因子受容体(EGFR)変異(T790M)を有し、他のEGFR阻害薬による治療後に病勢が進行した患者を適応とする。

肺がんは米国におけるがん関連死の主要因であり、米国国立がん研究所(NCI)は、2015年に新たに肺がんと診断される米国人は221,200人、本疾患による死亡者数は158,040人と推定している。肺がんのうち最も多い種類であるNSCLCは、肺の組織にがん細胞が生じたものである。EGFR遺伝子はがん細胞の増殖および進展に関与するタンパク質である。

「肺がんの分子基盤や肺がんが前治療に対する耐性を獲得する理由が急速に解明されてきています」とFDA医薬品評価研究センターの血液腫瘍製品室長であるRichard Pazdur医師は述べている。「今回の承認によって、EGFRのT790M耐性変異が陽性を示す患者にとって、新たな治療法が加わります。osimertinibは、本剤による治療を受けた患者の半数以上で腫瘍サイズを縮小させる有意な効果が認められた臨床試験の確かな根拠に基づき承認に至りました」。

FDAはこのほか、11月13日、osimertinibの標的とされるEGFR抵抗性変異の種類を検出する初めてのコンパニオン診断薬(コバスEGFR変異検出キットv2)を承認した。新たに承認された新型キット(v2)により、初期のコバスEGFR変異検出キット(v1)を用いて検出される臨床上重要な変異に、T790M変異が加わる。

「安全で有効なコンパニオン診断薬ならびに薬剤の承認は、がん治療において引き続き重要な進歩であります」とFDA医療機器・放射線保健センターの体外診断薬・放射線保健室長であるAlberto Gutierrez博士は述べた。「コバスEGFR変異検出キットv2が利用できるようになり、この重要なEGFR遺伝子変異を検出するニーズが満たされることになりました。これによって、治療効果が変わってくる可能性があります」。

osimertinibの安全性および有効性は、EGFR T790M変異陽性を示す進行性NSCLCを有し、他のEGFR阻害薬による治療後に病勢が進行した患者計411人を対象とする2つの多施設共同単一群臨床試験により実証された。これら2件の試験において、初めの試験で対象となった患者の57%および第2の試験で対象となった患者の61%で、完全退縮あるいは部分退縮が認められた(客観的奏効率とされる腫瘍サイズの減少に基づく)。

本適応に対する継続承認は、検証的試験をさらに実施することが条件となる可能性がある。

最も多く認められたosimertinibの副作用は、下痢、乾皮症などの皮膚および爪の変化、発疹、および爪の周囲の感染や発赤である。本剤の使用によって、肺の炎症や心臓の損傷など重篤な副作用が発現する可能性がある。また、発育中の胎児に悪影響を及ぼす可能性がある。

FDAは、Astra Zeneca社に対し、osimertinibを画期的治療薬および希少疾病用医薬品に指定し、優先審査の対象にすると通達した。画期的治療薬の指定は、当該薬が既存薬を上回る顕著な改善をもたらす可能性が、承認申請時に予備試験結果により示されている場合に、重篤な疾患の治療を目的とした医薬品に対して与えられる。優先審査は、重篤な状態における治療の安全性および有効性を有意に改善することが示される医薬品の申請が対象となる。また、希少疾病用医薬品の指定により、税控除やユーザーフィー免除、市場優先権など、希少疾病用医薬品の開発を支援し奨励するための財務的な優遇措置が得られる。

osimertinib承認は、FDAの迅速承認プログラムに基づく承認であった。本プログラムは、患者に対する臨床効果を合理的に予測しうる代替エンドポイントに対し医薬品が有効性を示した場合、その臨床データに基づいて、重篤な疾患あるいは生命を脅かす疾患に対する治療薬の承認を可能にする制度である。本プログラムにより、製薬会社が検証試験を実施している最中であっても、患者は有望な新薬を早期に利用することができる。

osimertinibは、米国デラウェア州ウィルミントンに拠点を置くAstra Zeneca Pharmaceuticals社が製造販売している。コバスEGFR 変異検出キットv2は、米国カリフォルニア州プレザントンに拠点を置くRoche Molecular Systems社が製造販売している。

米国食品医薬品局(FDA)は、連邦政府保健福祉省内に設けられた機関で、国民の健康促進と保護を目的に、医薬品、動物用医薬品、ワクチンおよび生物製剤や医療機器の安全性と有効性の確保に努めている。FDAは、米国の食糧供給の確保や食品安全、化粧品、健康補助食品、電磁波を放出する製品の安全性を保証し、たばこ製品を規制する責務も担っている。

翻訳担当者 菊池明美

監修 廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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