FDAが進行肺がんの治療にニボルマブの適応拡大を承認
米国食品医薬品局(FDA)ニュース
扁平上皮および非扁平上皮非小細胞肺がんでニボルマブの延命効果が明らかに
米国食品医薬品局(FDA)は、本日、進行性(転移性)非小細胞肺がんで、プラチナ製剤の化学療法を施行中または施行後に増悪した患者の治療にニボルマブ(商品名:オプジーボ)を承認した。米国では、肺がんは、がんによる死亡原因の上位を占め、2015年には、221,200人が新たに診断され、158,040人が死亡すると推定される。肺がんで最も多い非小細胞肺がん(NSCLC)は、さらに、がん細胞の種類によって扁平上皮細胞と、腺がんを含む非扁平上皮細胞と呼ばれる2つの主要なタイプに分けられる。ニボルマブは、PD-1/PD-L1(免疫細胞および一部のがん細胞の表面にあるタンパク質)として知られる細胞経路を標的とすることによって作用する。ニボルマブは、この経路を阻害することにより、がん細胞を攻撃する免疫系の働きを促進する。FDAは今年これまでに、プラチナ製剤の化学療法を施行中または施行後に増悪した進行扁平上皮NSCLC患者の治療にニボルマブを承認している。本日の承認は、ニボルマブの適応を非扁平上皮NSCLC患者の治療にまで拡大するものである。
FDA医薬品評価研究センター血液腫瘍製品室長のRichard Pazdur医師は、「PD-1/PD-L1経路に関してや、この経路が肺がんやその他のがんに及ぼす影響に関して、まだわからないことがたくさんあります。ニボルマブは、一部の非小細胞肺がん患者の全生存率に効果があることが示されましたが、さらに、腫瘍のPD-L1の高発現によって、最も奏効する患者が予測できるように思われます」と言う。
今回の適応拡大に対する安全性および有効性は、プラチナ製剤の化学療法および適切な生物学的療法を施行中または施行後に増悪した進行NSCLC患者582人が対象となった国際共同非盲検ランダム化試験で明らかにされている。参加者には、ニボルマブまたはドセタキセルが投与された。主要評価項目は全生存率、副次的評価項目は、客観的奏効率(腫瘍の完全または部分的な縮小を経験した患者の割合)であった。ニボルマブ投与群の平均生存期間が12.2カ月であったのに対して、ドセタキセル投与群では9.4カ月であった。加えて、ニボルマブ群の19%が腫瘍の完全または部分的な縮小をきたし、その効果が平均17カ月続いたのに対し、ドセタキセル群では、奏効した患者は12%で、奏効期間は平均6カ月であった。
試験全体では、ニボルマブ群の生存期間の方がドセタキセル群よりも長かった一方で、あるサブグループの腫瘍検体を評価した結果、NSCLCの腫瘍におけるPD-L1の発現状況が、ニボルマブによって延命の可能性が高くなる患者を特定するのに有用であることが示唆された。そこで、FDAは本日、PD-L1のタンパク質の発現量を検出し、ニボルマブの投与が最も有益である患者を医師が判定するのに役立つように、PD-L1 IHC 28-8 pharmDx検査を合わせて承認した。
ニボルマブの最も頻度の高い副作用は、倦怠感、筋骨格痛、食欲低下、咳および便秘であった。このほか、ニボルマブが免疫系に及ぼす影響によって生じる(免疫介在性副作用として知られる)重篤な副作用を引き起こす可能性がある。このような重度の免疫介在性副作用は、肺、大腸、肝臓、腎臓、ホルモン産生腺および脳をはじめとする健康な器官に現れる。
FDAは、ニボルマブが既存薬に比べて大幅な改善が期待できることが示唆された予備的な臨床結果に基づいて、ニボルマブを「画期的治療薬」に指定した。ニボルマブはさらに、重篤な疾患の治療にあたって、承認申請の時点で安全性または有効性に著しい改善が期待できる薬剤に認められる優先審査の適用を受けた。ニボルマブの適応拡大は、処方薬ユーザーフィー法に基づいてFDAによる審査の完了を予定していた2016年1月2日より約3カ月早く承認された。
FDAは、同じくPD-1/PD-L1経路を標的にするメルク製造のKeytruda[キートルーダ](pembrolizumab[ペムブロリズマブ])というもうひとつの薬を、PD-L1の発現が認められるNSCLCの治療に限定して先週迅速承認した。
ニボルマブは、ニュージャージー州プリンストンを拠点とするブリストル・マイヤーズ スクイブ社が発売する。PD-L1 IHC 28-8 pharmDx検査はカリフォルニア州カーピンテリアのDako North America Inc.社が販売する。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
肺がんに関連する記事
STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効
2024年11月18日
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる
2024年11月7日
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)
2024年10月17日
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長
2024年10月16日