FDAがアレクチニブをALK陽性肺がんの治療薬として優先審査に指定

キャンサーコンサルタンツ

米国食品医薬品局(FDA)は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤であるアレクチニブ(経口薬)について、ALK融合遺伝子が陽性の非小細胞肺がん患者のうち、クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)による治療中に病勢進行が認められた、または、クリゾチニブに対し不耐性を示す患者の治療薬として、優先審査の対象品目に指定した。アレクチニブは、クリゾチニブによる治療中にがんの進行が認められたALK陽性の非小細胞肺がんの治療薬として、既にFDAより画期的治療薬指定(Breakthrough Therapy Designation)を受けている。

優先審査制度とは、疾患の治療、予防または診断において著しい改善が見込まれる薬剤を優先審査の対象として指定する制度である。一方、画期的治療薬制度は、重度または命を脅かす疾患の治療薬の開発および審査を促進し、FDAの迅速な承認によりできる限り早く患者が治療を受けられるようにすることを目的としている。

世界中で肺がんは依然として、がん患者の死因第1位である。また、米国における肺がん患者のうち、75〜80%が非小細胞肺がんであると言われている。近年、治療成績は改善してはいるものの、進行した肺がん患者の大多数が肺がんにより死亡している。新たな治療法の必要性はきわめて高い。

今回の優先審査指定は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で発表された2つの臨床試験の結果に基づき決定された。

両方の臨床試験において、クリゾチニブ投与中に進行したALK陽性の非小細胞肺がん患者に対するアレクチニブの効果をそれぞれ評価している。1番目の臨床試験では、47.8%の患者で腫瘍の縮小が認められるとともに、非小細胞肺がんからの転移が多く、また、治療が難しいことが知られている中枢神経系においてもアレクチニブの活性が示された。

2番目の臨床試験では、全奏効率50%の結果が得られ、この試験でも中枢神経系における腫瘍の縮小が報告された。また、患者のアレクチニブに対する忍容性は高く、どちらの臨床試験でも顕著な副作用の発現は認められなかった。

なお、現在は国際共同ランダム化第3相試験ALEX臨床試験が実施されており、免疫組織化学染色法コンパニオン診断薬(IHC)検査によりALK融合遺伝子が陽性であると識別された進行非小細胞肺がん患者の一次治療として、アレクチニブとクリゾチニブによる効果を比較している。


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翻訳担当者 山口真奈美

監修 吉松由貴(呼吸器内科/淀川キリスト教病院)

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