ペメトレキセドのFDA承認
原文 2013/07/03更新
商標名:アリムタ®
・非扁平上皮非小細胞肺癌の維持治療薬として承認(2009/7/2)
・非扁平上皮非小細胞肺癌の治療薬として承認(2008/9/26)
・悪性胸膜中皮腫への承認(2004/2/4)
臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。
非扁平上皮非小細胞肺癌の維持治療薬
2009年7月2日、米国食品医薬品局(FDA)は、局所進行性または転移性の非扁平上皮・非小細胞肺癌(NSCLC)患者で、プラチナ製剤を用いた一次治療の化学療法を4サイクル実施した後に癌の進行が認められなかった患者に対する維持治療薬として、ペメトレキセド・ニナトリウム注射剤(アリムタ潤・Aイーライリリー社製造)を承認しました。今回の承
認は、局所進行性または転移性の非扁平上皮NSCLCにおけるペメトレキセドの3回目の承認適応となります。ペメトレキセドは扁平上皮癌のNSCLC患者の治療に対して適応がありません。
プラチナ製剤を用いた2剤併用導入化学療法を4サイクル実施した後に癌の進行が認められなかったNSCLC患者を対象に、維持療法としてのペメトレキセドに適切な対症療法を併用した群と、プラセボに適切な対症療法を併用した群とを比較した二重盲検試験が行われました。本試験の目的は、アリムタを用いた治療の無増悪生存期間および全生存期間(OS)のプラセボに対する優越性を実証することでした。FDAにより指定された試験の主要目的はOSでした。
500 mg/m2のペメトレキセドを、癌の進行が認められるまで、21日を1サイクルとして1日目に10分間静注しました。ペメトレキセドによる毒性を軽減するために、全患者に対し葉酸、ビタミンB12、およびコルチコステロイドを補給投与しました。
ITT解析(intent-to-treat)による患者のOS中央値は、ペメトレキセド投与群は13.4カ月だったのに対し、プラセボ投与群では10.6カ月でした[ハザード比(HR)0.79, (95%信頼区間(CI):0.65~0.95、p=0.012)]。非扁平上皮・非小細胞肺癌患者のOS中央値は、ペメトレキセド投与群およびプラセボ投与群でそれぞれ15.5カ月と10.3カ月でした[HR=0.70, (95%CI: 0.56~0.88)]。非小細胞肺癌の扁平上皮癌患者のOS中央値は、ペメトレキセド投与群では9.9カ月であったのに対し、プラセボ投与群では10.8カ月でした[HR=1.07, (95%CI: 0.77~1.50)]。
ITT解析による患者集団のペメトレキセド投与による維持療法群はプラセボ投与群と比較し、無増悪生存期間(PFS)において統計学的に有意な延長が認められました。PFS中央値は、ペメトレキセド投与群では4.0カ月であったのに対し、プラセボ投与群では2.0カ月でした[HR=0.60, (95%CI: 0.49~0.73、p < 0.00001)]。さらに組織型による交互作用(treatment-by-histology interaction)解析を行いPFSを比較しました。非扁平上皮・非小細胞肺癌患者のPFSは、ペメトレキセド投与群では4.4カ月であったのに対し、プラセボ投与群では1.8カ月でした[HR=0.47, (95%CI: 0.37~0.60)]。扁平上皮・非小細胞肺癌患者のPFSは、ペメトレキセド投与群では2.4カ月であったのに対し、プラセボ群では2.5カ月でした[HR=1.03, (95%CI: 0.71~1.49)]。
ペメトレキセド治療をおこなった患者に対する安全性解析の結果は、単剤療法としてのペメトレキセドの添付文書にすでに記載されてある安全性プロファイルと一致します。ペメトレキセド投与群において高頻度(>5%)にみられた有害反応は、血液毒性、肝酵素上昇、倦怠感、胃腸毒性、末梢神経障害、および皮疹でした。
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栃木和美 訳
小宮武文(呼吸器内科/NCI Medical Oncology Branch)監修
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扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌
2008年9月26日、米国食品医薬品局(FDA)は、局所進行あるいは転移した、扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌(NSCLC)患者の初期治療としてペメトレキセド二ナトリウム注射剤をシスプラチンと併用使用することを承認しました。ペメトレキセドは肺の扁平上皮癌患者の治療には適用されません。
2004年8月19日、FDAは局所進行あるいは転移した非小細胞肺癌患者が以前に化学療法を受けた後ペメトレキセド・二ナトリウム注射剤を単独投与することに対する加速承認を最初に認可しました。しかし、後に行われた試験によりFDAは、ペメトレキセド単独使用は以前に化学療法を行った後の肺扁平上皮癌患者には適用されないという修正を行いました。
以前に化学療法を受けていないステージIIIb/IVのNSCLC患者1725人を対象とした多施設ランダム化非盲検試験が実施され、ペメトレキセドとシスプラチン併用(AC)と、ゲムシタビンとシスプラチン併用(GC)治療による、全生存期間の比較が行われました。生存期間の中央値はAC群で10.3カ月、GC群でも10.3カ月でした[調整ハザード比0.94(95%信頼区間:0.84,1.05)]。無増悪生存期間の中央値はAC群で4.8カ月、GC群で5.1カ月でした[調整ハザード比1.04(95%信頼区間:0.94, 1.15)]。全奏効率はAC群で27.1%、GC群で24.7%でした。
この試験では、NSCLCの組織型が全生存期間に及ぼす影響に対し、事前設定された分析が行われ、組織型により臨床的有意な生存期間の差が認められました。つまり、扁平上皮癌以外のNSCLC患者群では生存期間の中央値はAC群で11.0カ月、GC群で10.1カ月でした[未調整ハザード比0.84(95%信頼区間:0.74, 0.96)]。
これに対し、扁平上皮の組織型では、生存期間の中央値はAC群で9.4カ月、GC群では10.8カ月でした[未調整ハザード比1.22(95%信頼区間:0.99, 1.50)]。
扁平上皮癌におけるペメトレキセド投与による生存期間への好ましくない影響は、以前の化学療法を受けたステージIII/IVのNSCLC患者を対象としたペメトレキセド対ドセタキセル単独投与のレトロスペクティブ解析でも認められました。ペメトレキセドの単剤としての使用は、積極的治療を受けた肺癌患者のために2004年に承認されましたが、現在の製品の添付文書は改訂され、ペメトレキセドは以前に化学療法が行われた肺扁平上皮癌患者にも適用しないことが推奨されています。
ペメトレキセドとシスプラチン併用投与を受けたNSCLC患者で最も一般的な(>20%)有害反応は嘔気(56%)、倦怠(43%)、嘔吐(40%)、貧血(33%)、好中球減少(29%)、食欲不振(27%)および便秘(21%)でした。
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西川百代 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科)監修
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悪性胸膜中皮腫
2004年2月4日FDAはペメトレキセド注射用(イーライリリー社製造)を治癒可能な手術の適用のない悪性胸膜中皮腫患者の治療に、シスプラチンとの併用で承認しました。
安全性と有効性は多施設共同無作為化試験で456人の患者において、アリムタとシスプラチンの併用とシスプラチン単独の比較で証明されています。ビタミン12と葉酸の補給は副作用の緩和のために試験の間に開始された。結果としてその前に登録された患者も含めて、すべての患者がビタミンの補給を受けました。
無作為化されて治療を受けたすべての患者の解析によって、アリムタとシスプラチンの併用はシスプラチン単独より生存率において統計的に有意な改善が見られました。生存の中央値はそれぞれ12,1カ月対9,3カ月でした。(p=0.020)併用群でのこのような優越性は、十分にビタミンを補給されたサブグループにおいても証明されました。生存の中央値は併用治療グループとシスプラチン単独グループではそれぞれ13,3カ月と10カ月でした。(p=0.051)。
アリムタ+シスプラチン療法の主な副作用は骨髄抑制(骨髄が血液細胞をより少なく生産すること)疲労感、吐き気、むかつきそして呼吸困難でした。ほとんどのグレード3~4の副作用が、ビタミンの補給により治療効果を減らすことなく緩和することができました。
アリムタ500mg/m2は100mlの生理的食塩水で薄め、10分間で静脈に注入されました。アリムタを投与して約30分後に、シスプラチン75mg/m2を2時間かけて投与されました。両方の薬剤とも21日ごとに投与でした。
葉酸350~1000マイクログラムは経口で毎日、最初の化学療法での服用に1~3週間先立ち開始され、治療停止後1~3週間まで毎日服用を続けられました。ビタミンB12注入は、1000マイクログラムを筋肉注射により最初の化学療法に1~3週間先立って投与され、約9週ごとに治療停止まで繰り返されました。
デキサメタゾン4mg(あるいは同等のコルチコステロイド)は皮膚の発疹を予防するために一日2回、アリムタ投与一日前、当日および一日後に、全患者に投与されました。
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内村美里人 訳
島村義樹(薬学)監修
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。 FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。 |
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