進行非小細胞肺がん治療に関するASCOガイドラインの改訂

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は本日、ステージIV非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する全身療法に関する診療ガイドラインの改訂版を発行した。ガイドラインでは、一次治療、二次治療、三次治療における化学療法および標的療法の使用に関する、エビデンスに基づいた推奨事項を記載している。

本ガイドラインを作成したASCO専門家委員の共同代表であるGregory Masters医師は、「ステージIV非小細胞肺がん患者では治癒はありませんが、がんをより長期にコントロールする手助けとなる、さまざまな治療オプションがあります」と述べた。「このガイドラインは、医師が、腫瘍の生物学的性質と患者の全般的な健康状態に基づいて、もっとも適切な治療を選択する際に役立つでしょう」。

この診療ガイドライン改訂を作成するにあたり、ASCO専門家委員会は、2007年1月から2014年2月の間に発行された関連する医学文献の正式なシステマティック・レビューを行った。

改訂されたガイドラインの主な推奨事項は以下のとおりである。

  • 一次(初回)治療
    •  腫瘍にEGFR、またはALK遺伝子変異がない、全身状態(PS)スコアが0から1の患者には、細胞毒性型化学療法剤の併用療法が推奨される。全身状態(PS)スコアが2の患者に対しては、化学療法または緩和ケアを単独で用いてもよい。
    • 腫瘍に感受性のあるEGFR遺伝子変異を有する場合は、アファチニブ[afatinib]、エルロチニブ、またはゲフィチニブが推奨される。
    • 腫瘍にALKまたはROS1 の遺伝子の再構成がある場合、クリゾチニブが推奨される。
  • 維持療法(一次治療に対する初期反応が認められた後の治療)
    • 他のレジメンへの切り替え、一次治療の継続、もしくは化学療法の休薬のいずれかが推奨される。
  •  二次治療
    • ドセタキセル、エルロチニブ、またはゲフィチニブが選択肢となる。非扁平上皮がん患者に対しては、ペメトレキセドがさらなる選択肢となる。
    • EGFRの遺伝子変異を有する患者には、初期反応に基づいて、化学療法または新たな別のEGFR阻害薬が投与できる。
    •  ALKの遺伝子の再構成を有する患者には、化学療法またはセリチニブ[ceritinib]を投与してもよい。
  • 三次治療
    • エルロチニブまたはゲフィチニブによる治療を受けていない、全身状態(PS)スコアが0から3の患者には、エルロチニブを投与してもよい。
  • 本ガイドラインでは引き続き、治療法を選択する際に、年齢のみを要因とするべきではないと強調している。
  •  抗腫瘍療法とともに早期の緩和ケアを受けることが推奨される。

「早期緩和ケアの導入は、進行肺がん患者の生存率改善と関連します」と、ASCO専門家委員の共同代表であるDavid H. Johnson氏は述べる。「ホスピスケアの導入は、患者の生活の質が向上し、介護者の苦痛を軽減することにもつながります」。

改訂されたガイドラインは本日Journal of Clinical Oncology誌で発行され、www.asco.org/guidelines/nsclcで参照できる。

肺がんに関する患者向けの情報は、http://www.cancer.net/lungで参照できる。

ASCOは、ASCOガイドラインWiki(www.asco.org/guidelineswiki)を通して、腫瘍専門医、臨床医、患者からこのガイドラインへのフィードバックを奨励する。

翻訳担当者 星野 恭子

監修 廣田 裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効の画像

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させるの画像

先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解(引用)
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)の画像

世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)

特集:術前・術後の免疫療法、HER2およびEGFR遺伝子変異を標的とした治療など、肺がん治療における有望な臨床的進歩テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは...
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長の画像

肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解「過去15年間にわたり、ミシシッピ・デルタ中心部における質改善の取り組みは、この高リスク集団の...