進行非小細胞肺がんに対する二次治療としてのニボルマブーCheckMate試験結果

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) プレスリリース

著者/所属:Antonio Passaro(ヨーロッパ癌研究所(IEO)胸部腫瘍部門-イタリア・ミラノ)およびRaffaele Califano(キャンサー・リサーチUK腫瘍内科クリスティNHS財団トラスト、南マンチェスター大学病院NHS財団トラスト腫瘍内科-ともに英国、マンチェスター)

テーマ:肺およびその他の胸部腫瘍

非小細胞肺がん(NSCLC)の治療には、いまだ課題がある。一次化学療法で効果が得られなかった場合、二次治療で得られる利益は少ない。現在、ドセタキセル、ペメトレキセド、エルロチニブが二次治療の選択肢として承認されており、平均奏効率は8~9%、全生存期間(OS)中央値は8カ月である[1]。先般報告された2件の試験において、ドセタキセルにラムシルマブ[ramucirumab]またはニンテダニブ[nintedanib]を追加することで、ドセタキセル単独での投与よりもOSがやや改善することが示された[2-3]。多くの臨床試験により、NSCLC治療に用いる抗PD1/PD-L1抗体のような免疫チェックポイント阻害薬の有効性および安全性が評価されている。

ニボルマブは完全ヒトIgG4抗PD-1抗体である。先般、治療歴のある進行扁平上皮NSCLCおよび進行非扁平上皮NSCLCに対するドセタキセルとニボルマブを比較した2件の第3相試験(CheckMate 017およびCheckMate 057)の結果が報告されている[4-5]。どちらの試験も、病勢の進行、許容できない毒性の発現または同意の撤回があるまで投与を継続した。

CheckMate 017では、扁平上皮組織型の患者272人を、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごとに投与する群と、ドセタキセル75mg/m2を3週間ごとに投与する群に無作為に割り付けた。OS(主要評価項目)中央値は、ニボルマブ群9.2カ月、ドセタキセル群6カ月であった(HR 0.59%(CI:95% CI, 0.44 to 0.79; P<0.001)。客観的奏効率(ORR)は、ニボルマブ群、ドセタキセル群でそれぞれ20%と9%であった(p = 0.008)。無増悪生存期間(PFS)中央値(3.5カ月対2.8カ月、HR 0.62; 95%CI, 0.47 to 0.81; p<0.001)および1年の時点での生存率(42%対24%)も、ニボルマブ群で改善が認められた。この試験において、全患者集団の83%でPD-L1発現の評価が可能であった(腫瘍検体は記録保管されたものおよび最新のものであった)。PD-L1の発現は、事前に規定した発現量(≥1%、≥5%および≥10%)を問わず、予後因子でもいずれの有効性エンドポイントの予測因子でもなかった。

CheckMate 057は、先日のASCOの年次総会で発表された。この試験では、治療歴のある非扁平上皮NSCLC患者582人を、ニボルマブを投与する群(n=292)とドセタキセルを投与する群(n=290)に無作為に割り付けた。この試験では、ニボルマブ群でORR(19.2%対12.4%)およびOS(12.2カ月対9.4カ月、HR 0.73, CI: 0.59-0.89; p=0.0015)の改善が認められたが、PFS(2.3カ月対4.2カ月、HR 95%, CI:95%, 0.77-1.11, p=0.3932)の差は認められなかった。奏効期間は、ニボルマブ群で有意に延長した(17.1カ月対5.6カ月)。この試験では、無作為化した患者集団の78%で定量できるだけのPD-L1発現を認めた。ニボルマブを投与したPD-L1陽性腫瘍患者では、3つすべてのカットオフ値でORRが上昇しOSが延長したが、PD-L1陰性患者ではOSに差はなかった。これらの解析の大部分が、記録保管された腫瘍検体によるものであることに注目することは重要である。そして、化学療法、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬、または放射線療法への暴露後にPD-L1発現が変化する可能性があるため、治療歴のある患者集団におけるこのバイオマーカーの価値について、確固たる結論を出すのは難しい。

どちらの試験においても、ニボルマブの安全性プロファイルはドセタキセルよりも良好であった。ニボルマブを投与した患者で免疫介在性有害事象を発症したのは10%未満であった。これらの有害事象の発症はまれで、大抵グレードも低く、どちらの試験でもグレード3~4の肺臓炎の発症率は1%であった。

これら2件のランダム化試験の結果により、扁平上皮NSCLCおよび非扁平上皮NSCLCに対する二次治療において、ニボルマブがドセタキセルより優れていることが裏づけされ、新たな標準治療が確立された。

論点

  • プラチナ製剤を基本とした一次治療後に病勢が進行しているすべての非扁平上皮NSCLC患者にニボルマブを検討すべきか、あるいはPD-L1陽性患者にのみ本剤を投与すべきか。
  • これらの試験では、病勢が進行するまでニボルマブを患者に投与することが可能であったが、より短期間の投与でも有効性は同等であると考えられるか。

Califano医師は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社から謝礼金を受け取った。Passaro医師は、利益相反はないと公表している。

この記事の内容には著者の個人的見解が反映されており、欧州臨床腫瘍学会の公式見解とは限らない。

参考文献
1. Weiss JM and Stinchcombe TE. Second-Line Therapy for Advanced NSCLC. Oncologist. 2013;18(8):947-53.
2. Garon EB, Ciuleanu TE, Arrieta O, et al. Ramucirumab plus docetaxel versus placebo plus docetaxel for second-line treatment of stage IV non-small-cell lung cancer after disease progression on platinum-based therapy (REVEL): a multicentre, double-blind, randomised phase 3 trial. Lancet. 2014 Aug 23;384(9944):665-73
3. Reck M, Kaiser R, Mellemgaard A, et al. Docetaxel plus nintedanib versus docetaxel plus placebo in patients with previously treated non-small-cell lung cancer (LUME-Lung 1): a phase 3, double-blind, randomised controlled trial. Lancet Oncol. 2014 Feb;15(2):143-55.
4. Brahmer J, Reckamp KL, Baas P, et al. Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Squamous-Cell Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2015 May 31. [Epub ahead of print]
5. Paz-Ares L, Horn L, Borghaei H, et al. Phase III, randomized trial (CheckMate 057) of nivolumab (NIVO) versus docetaxel (DOC) in advanced non-squamous cell (non-SQ) non-small cell lung cancer (NSCLC). J Clin Oncol 33, 2015 (suppl; abstr LBA109)

翻訳担当者 生田 亜以子

監修 野長瀬 祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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原文掲載日 

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