長期のスタチンの使用により肺がん死のリスクが低下

米国がん学会の論文誌であるCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌にて発表された研究によると、肺がんと診断される前後の年にスタチンを使用した肺がん患者では、この疾患による死亡のリスクが減少した。

「われわれの研究により、スタチンを使用する肺がん患者で肺がん死のリスクが減少するエビデンスがある程度示される」と北アイルランド、クイーンズ大学ベルファスト、Centre for Public Healthの医療統計学の上級講師であるChris Cardwell博士は述べた。

「相関の大きさはすべての観察研究と同様に比較的小さく、交絡の可能性もある。すなわち、シンバスタチン(スタチンの一種)の服用患者と、服用していない患者ではがんによる死を抑制する過程が異なる可能性があることを意味し、われわれはこれを補正することができなかった。しかし、本知見は観察研究でさらに調査する価値がある」とCardwell氏は述べた。

「もしさらなる観察研究において同様の結果が再現された場合、肺がん患者におけるシンバスタチンのランダム化対照比較試験の実施を支持するエビデンスが得られる」とCardwell氏は付け加えた。

Cardwell氏らは英国がんレジストリデータからの1998年~2009年に肺がんと新規に診断された患者約14,000人のデータを使用した。彼らは臨床データベースであるU.K. Clinical Practice Research Datalinkの患者の処方記録およびイギリス国家統計局の2012年までの死亡率データを収集した。

診断後に6カ月以上生存した患者の中で、肺がん診断後にスタチンを使用した患者では、統計的に有意ではないが、肺がん特異的死亡が11%減少した。12回以上のスタチン処方をされた患者では、肺がん特異的死亡が有意に19%減少し、シンバスタチンなどの脂溶性のスタチンを使用した患者でも肺がん特異的死亡が19%減少した。

本研究のすべての患者間で、肺がん診断前の年にスタチンを使用していた患者は肺がん特異的死亡が有意に12%減少した。

本研究において、非小細胞肺がん患者と小細胞肺がん患者間で転帰に違いはなかったとCardwell氏は指摘した。

「われわれは北アイルランドの肺がん患者における同様の大規模コホート分析の実施を望んでいる」とCardwell氏は追述した。

本研究は北アイルランド、Public Health Agency のHealth and Social Care Research and Development Divisionから資金提供を受けた。Cardwell氏は利益相反は無いと公表している。

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 廣田 裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

【ASCO2024年次総会】進行肺がんの早期緩和治療で遠隔医療と対面ケアの有効性は同等の画像

【ASCO2024年次総会】進行肺がんの早期緩和治療で遠隔医療と対面ケアの有効性は同等

ASCOの見解(引用)「進行非小細胞肺がん患者において、早期の緩和ケアは生存期間を含む患者の転帰を改善することが研究で示されています。この大規模ランダム化試験で、遠隔医療による...
【ASCO2024年次総会】進行肺がん(NSCLC)、ロルラチニブで無増悪生存期間が最長にの画像

【ASCO2024年次総会】進行肺がん(NSCLC)、ロルラチニブで無増悪生存期間が最長に

ASCOの見解(引用)「これらの長期データの結果は並外れて良く、この研究でALK陽性非小細胞肺がん患者に対する一次治療薬としてのロルラチニブ(販売名:ローブレナ)の優れた持続的...
【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性の画像

【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性

ASCOの見解(引用)「LAURA試験は、切除不能なステージIII疾患におけるEGFR標的療法の役割を明確にした最初の試験である。本試験ではオシメルチニブと現在の標準治療である...
周術期ニボルマブ+化学療法が肺がんの転帰を改善の画像

周術期ニボルマブ+化学療法が肺がんの転帰を改善

周術期におけるニボルマブ+化学療法併用により、化学療法単独と比較して疾患の再発、進行、または死亡の確率が有意に低下することが第3相試験で明らかに

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター...