OncoLog 2014年11-12月号◆House Call「禁煙のすすめ」

MDアンダーソン OncoLog 2014年11-12月号(Volume 59 / Number 11-12)

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House Call「禁煙のすすめ」


補助薬が禁煙に役立つ

喫煙が肺癌の第一の原因であることはおそらくもうご存知だろう。喫煙が、心疾患や脳卒中、肺気腫などの肺疾患の原因になっていることもご存じかもしれない。しかし、こうした疾患の診断を受けた人でも、禁煙することで大いに恩恵を得られる、という話はどうだろうか。また、禁煙に挑戦している時、市販の補助薬や処方薬が役立つことはご存じだったろうか。

禁煙の効用

禁煙により得られる利益には、短期的なものと長期的なものがある。ほとんどの喫煙経験者は、タバコを止めてから2、3カ月もすると、血液循環や肺機能が改善し、咳も減ってくる。

一つの集団として考えると、1年間の禁煙によって、喫煙者と比べ心疾患リスクがちょうど半分に下がり、禁煙5年目になると、そのリスクは喫煙歴がまったくない人と同等になる。また、禁煙から5年経つと、喫煙と関連する癌(肺癌、口腔癌、咽頭癌、食道癌、頸癌、膀胱癌)のリスクが、喫煙者の半分まで下がり、禁煙15年目で喫煙歴のない人と同等になる。

癌と診断された後でも、禁煙するのに遅くはない。複数の研究から、癌治療を受けながらも喫煙を続けている肺癌患者は、禁煙した患者と比べ、治療による副作用が重いうえに奏効率も低く、さらに5年生存率は低く、2次癌のリスクや肺癌再発リスクも高いことが示されている。

禁煙補助薬

禁煙は重要なことだが簡単ではない。ニコチンは、タバコに含まれている依存性の物質で、その作用が強力である。その上、喫煙に結びつく行動は日常生活に根深く組み込まれている。タバコ中毒を克服するには決意がいるが、意思の力だけを頼りにする必要はないのである。禁煙に役立つ補助薬がいくつかある。

ニコチン置換療法

ニコチン置換療法は、少量のニコチンを補充することでゆっくりとニコチン中毒からの離脱を図る方法である。補充するニコチン量は、徐々に減らすことができる。ニコチン量を少しずつ減らしていくと身体が慣れ、タバコへの欲求がおさまり、離脱症状も緩和される。複数の研究によると、ニコチン置換療法で禁煙成功率が2倍に上昇するという。これらの補助薬は、タバコに含まれる発癌性化学物質や有害化合物を含まないため、比較的安全性が高いと考えられている。

ニコチンパッチやガム、トローチ剤などの一般的なニコチン置換療法剤は、処方箋なしで入手でき、薬局や食料雑貨店でも購入することができる。ヘビースモーカーにはニコチンパッチが最も簡単な選択肢だ。低用量のニコチンを安定して補充することができるからである。ガムやトローチ剤は、離脱症状を和らげ、タバコを吸うことなく口寂しさを紛らわせることができるため、食後あるいは朝のコーヒーのお供として習慣的に喫煙する人には特に有効である。

電子タバコ(e-シガレット)はタバコに似てはいるがタバコの葉は入っていない。銘柄によってニコチン量やその他の添加物が異なる。e-シガレットの安全性は確立されておらず、米国食品医薬品局(FDA)はニコチン置換療法として承認していない。

ニコチン置換療法薬の中には処方薬として購入できるものもある。点鼻式ニコチンスプレーは、鼻づまりやアレルギーの際に使う鼻スプレーと同じで、1回のスプレーですぐに効果が現れる量のニコチンを補給する。決められた間隔でも喫煙の欲求を感じた瞬間にでも使うことができる。ニコチン吸入薬は、口に軽くくわえて噴霧するとニコチンが口腔内から吸収されるしくみだ。点鼻式スプレーと同じように、一定量のニコチンを補給し即効性がある。

いずれのニコチン置換療法薬を使用するかを検討する際には、これらの薬品もタバコ同様、一部の人には副作用を引き起こす可能性があるニコチンを含有していることに留意したい。いずれのニコチン置換療法薬を選ぶにしても、使用前にかかりつけ医に相談することだ。

ニコチン不使用の禁煙薬

医師によっては、ニコチン置換療法の代わりに、あるいは置換療法と併用してニコチン不使用の禁煙補助薬を処方することもある。これらの薬は、ニコチンへの欲求や禁断症状を和らげ、使わなかった場合よりも禁煙成功率が高いことが複数の研究からわかっている。

禁煙補助用に最も一般的に処方されるのは、ブプロピオン(商品名:Zyban)やバレニクリン(商品名:Chantix)である。これらの補助薬を服用すると、悪心や不眠、気分の浮き沈みなどの副作用を起こす人もいる。副作用については、かかりつけ医もしくは薬剤師から詳しい説明があろう。また、薬を服用中は医師が十分に経過観察してくれるだろう。

ニコチン置換療法薬やニコチン不使用の禁煙補助薬は、行動修正療法と組み合わせて使うと高い効果が得られる。これらの補助薬は喫煙の衝動を和らげるのに役立ちはするが、禁煙に成功するか否かは最終的には本人次第だ。喫煙のきっかけとなる行動や喫煙習慣の継続につながる行動を、なんとしても変えるのだという固い決意を持たなければならない。生活習慣の修正は簡単ではないが、これは自分の生命を守るための変化の第一歩なのである。

— S. Moreau

禁煙プログラムの詳細は、かかりつけ医または713-792-QUITまでご相談ください。またwww.mdanderson.org/quitnow.でもご覧になれます。

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翻訳担当者 菊池明美

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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