肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えることで転帰が改善する可能性
世界的に肺がんはがんによる死亡原因のトップであるが、その心理的、身体的な影響についてはほとんど研究されていない。オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC-James)の研究者らは、進行した非小細胞肺がん(NSCLC)患者にとって、自分の病気や治療に対して心理的に肯定的な認識を持つことが、全身の健康にとっていかに重要であるかを示す研究を主導した。
オハイオ州立大学の心理学教授であるBarbara L. Andersen氏が率いるこの研究は、米国心理学会のHealth Psychology誌に最近掲載された。
「これまでのところ、肺がん患者がこの困難な病気をどのように理解し、受け止めているのかについてはほとんど分かっていない」と、Andersen氏は述べた。「現在、有望な分子標的治療薬や免疫療法薬が利用可能になっているが、実際にこれらの進歩した医学的治療から利益を受ける可能性を患者がどのように考えているかは不明である」。
研究者らは、自分の病気に対して肯定的な認識を持つNSCLC患者と否定的な認識を持つNSCLC患者では、治療中の転帰も異なるだろうという仮説を立てた。
試験方法と結果
OSUCCC-Jamesの研究者らは、診断時にステージ4のNSCLC患者186人を登録した。その際、患者は自分の病気についての認識、例えば、いつまで病気が続くのかや今後の治療効果についての考えなどを報告した。その後、患者は治療を開始し、その後8カ月間、毎月調査が行われ、そこで不安や抑うつのレベル、身体症状、一般的な健康状態を報告した。
集団全体では、患者が報告する不安と身体症状は軽減していたが、抑うつと痛みは治療中も改善しなかった。しかし、診断時に自分の病気や治療の有用性について最も否定的な見解を報告した患者は、すべての指標において最も悪い転帰をたどった。自分の病気や治療に対してより肯定的な認識を持っていた他の患者は、心理的症状、身体的症状の両分野でより良好な結果を示した。
これらのデータは、うつ病の症状と同様に、診断時の病気に対する否定的な認識が、治療中に特定の脆弱性を抱えるリスクのある患者の早期マーカーとなりうることを示唆している。これには、うつ病の症状や治療の副作用も含まれる。
Thomas Valentine氏も、オハイオ州立大学の博士課程在籍中に本研究の筆頭著者であった。Valentine氏は現在、米国品質保証委員会(National Committee for Quality Assurance)の行動衛生学の応用研究科学者である。
本研究は、Pelotonia社の資金援助、ハイオ州立大学の研究助成制度を介して国立がん研究所(NCI)からの資金援助を受けている。
- 監修 稲尾 崇(呼吸器内科/神鋼記念病院)
- 記事担当者 河合加奈
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- 原文掲載日 2024/11/18
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