地域と学術連携により、先住民地域のラドン曝露による肺がんリスク低減に成功

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究

ASCOの見解(引用)
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。特に先住民地域で多いです。先住民地域では、検査を受けた住宅のうち55%に有害なラドンが検出され、その中には1日1箱以上の喫煙と同等の危険なレベルの高濃度ラドンが検出されたところもありましたが、地域社会と学術機関の連携によって、先住民地域におけるラドン低減に成功しました」。
--Fumiko Chino医師(MDアンダーソンがんセンター放射線腫瘍医)

**このプレスリリースには、アブストラクトの最新データが含まれています。

研究要旨

テーマ先住民地域におけるラドン曝露と低減 
対象ウィスコンシン州のストックブリッジ・マンシー族の地域にある85軒の住居
主な結果ウィスコンシン州のネイティブコミュニティの住宅では、非常に高いレベルのラドンが検出され、この集団は肺がんを発症するリスクが高いことが分かった。
意義・ラドンは岩盤から空気中に放出される無臭・無色の放射性ガスで、米国では肺がんの2番目の原因となっている。ラドンは米国の多くの地域の土壌や地下水から検出されており、住宅などの建物にも浸透している可能性がある。

・ラドン曝露後に肺がんを発症するリスクは喫煙者の方が高いが、ラドンに長期間高レベルで曝露すると、誰でも肺がんのリスクが高まる可能性がある。

・ウィスコンシン州のストックブリッジ・マンシー族のコミュニティでは、その地域の他のコミュニティよりも肺がんの発生率が高い。ラドン濃度が高いことと、ラドン低減が十分でないことが、肺がんのリスクを高めている可能性が疑われた。この地域ではラドン検査は可能だが、ラドン低減1回の費用が高額であるため、多くの住民にとって手の届かないものとなっている。

・ウィスコンシン大学とストックブリッジ・マンシー健康ウェルネスセンターは、ウィスコンシン州保健サービス局とウィスコンシン州がん共同プログラムを通じて、ウィスコンシン・ラドンプログラムと連携し、ラドンのリスクに関する地域住民への教育、ラドン検査、ラドン濃度が高いと判定された住宅でのラドン低減に取り組んでいる。

新たな研究によると、地域社会と学術機関のパートナーシップによるウィスコンシン州の先住民地域の人々に対するラドンのリスクの教育、ラドンの検査、ラドン濃度が高い住宅でのラドン低減策により、この集団における肺がん発症リスクが低減したことがわかった。調査結果は、2024年9月27日~28日にカリフォルニア州サンフランシスコで開催される2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウムで発表される。

研究について

「私たちの研究は、彼らの地域におけるがんセンターの重要性を示しています。ストックブリッジ・マンシー族と提携することで、健康格差につながる健康の社会的決定要因へのアプローチが可能となりました」と、筆頭著者であるストックブリッジ・マンシー健康ウェルネスセンターの医療ディレクター、Michael S. Lundin医師は述べた。

提携の一環として、合計85個のラドン検査キットが配布された。検査対象の住宅の10%でラドン濃度が高い可能性が疑われた。

主な知見

検査キットは全て返却され、47件(55.3%)で住宅内のラドン濃度が高いことが判明した。ラドン濃度は、ウィスコンシン州の平均的な住宅よりもはるかに高かった。
先住民地域で、ラドン濃度が高いとされた住宅のラドン濃度平均値は11.9pCi/Lであった。最も高い値は111.6pCi/Lで、これは推奨される曝露レベルの25倍を超える値である。

研究の一環として、ラドン濃度が高いすべての住宅で、専門家によるラドン低減策が実行された。参加者全員が、自分たちだけではラドン対策の費用を支払うことはできなかったと述べていた。このプロジェクトでは、先住民地域の人々にラドン低減についての教育も行った。

「私たちはこの地域でラドンに関する知識を広めることができましたが、何よりも重要なのは、このプロジェクトの支援がなければ、彼らにラドン低減策を行う金銭的余裕がなかったことです。この地域は、何世代にもわたって住民の間でがんの発生率が高いことが指摘されており、人々は自分たちの土地が汚染されているのではないかと懸念していました。彼らは正しかったのです」と、 筆頭著者であるNoelle LoConte医師(FASCO、ウィスコンシン大学マディソン校医学部准教授)は述べた。

次のステップ

このプログラムをウィスコンシン州の他の先住民地域にも拡大することが検討されている。

この研究は、マリオット・ドーターズ財団、カタレント財団、ウィスコンシン大学カーボンがんセンターのガード・アゲインスト・キャンサー基金の資金援助を受けた。

  • 監修 稲尾 崇(呼吸器内科/神鋼記念病院)
  • 記事担当者 平沢沙枝
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  • 原文掲載日 2024/09/23

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