治療困難なKRAS変異肺がんモデルにおいて、活性型RAS阻害薬が抗腫瘍効果をもたらす

ある種のKRAS G12C阻害薬に対する耐性は、活性のあるGTP結合型RASの蓄積に起因する可能性があり、これはがん患者の腫瘍増殖を促進させる。したがって、活性型RASを効果的に阻害することが極めて重要になる。最近の研究で、Ferdinandos Skoulidis医学博士とHaniel Araujo医師が率いる研究者らは、活性型RASタンパクを標的とする新しいクラスの阻害薬(RMC-7977:KRAS/HRAS/NRASのpan-RAS阻害薬、RMC-4998:RAS G12C選択的阻害薬)の抗腫瘍効果を評価した。活性型RAS阻害は、治療困難な複数の治療抵抗性肺がんモデルにおいて、強固で持続的な腫瘍縮小をもたらした。2つの阻害薬を組み合わせることにより、いくつかのモデルで治癒がみられた。さらに、本研究では、腫瘍細胞の粘液を発現するプログラムが RAS 阻害薬耐性を支持し、進行した KRAS G12C 変異非小細胞肺がん患者において、 FDA 承認の KRAS G12C 阻害薬ソトラシブ(販売名:ルマケラス)またはアダグラシブ[adagrasib](販売名:Krazati)に対する反応性不良を予測する可能性を示した。これらの知見は、肺がん患者に対する個別化治療計画の開発やRAS阻害薬治療の改善に役立つ可能性がある。詳しくはCancer Discovery誌を参照のこと。


MDアンダーソン研究ハイライト:2024/07/11特集
がんの発生と進化における発見、ユーイング肉腫、乳がん、肺がんの治療法の改善、新しい疾患分類

テキサス大学 MD アンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、MD アンダーソンの専門家による最近の基礎研究、トランスレーショナル研究、臨床がん研究の概要を紹介している。これらの進歩は、世界をリードするMDアンダーソンの臨床医と科学者による、垣根を超えた継ぎ目のない連携によって可能となり、研究室から臨床へ、そしてまた研究へと発見がもたらされる。

MDアンダーソンにおける最近の進展は、代謝プログラミングと細胞老化を制御するメカニズムに関する洞察、ユーイング肉腫患者に対する新たな治療選択肢、肺がんにおけるRAS阻害薬の有効性を高める個別化治療戦略、BRCA関連乳がんに対する実行可能な治療選択肢としての乳房温存療法、抗腫瘍活性を損なうことなく重篤な免疫療法の副作用を軽減すること、骨髄性腫瘍の新たな疾患分類などである。

  • 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2024/07/11

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