【ASCO2024年次総会】進行肺がん(NSCLC)、ロルラチニブで無増悪生存期間が最長に

ASCOの見解(引用)

「これらの長期データの結果は並外れて良く、この研究でALK陽性非小細胞肺がん患者に対する一次治療薬としてのロルラチニブ(販売名:ローブレナ)の優れた持続的有効性が確認された。しかし、ロルラチニブをクリゾチニブ(販売名:ザーコリ)よりも一般的に使用されているALK チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)と比較することは重要である。それでも、これらの知見はALK TKIで観察された中で最高の転帰である」 - David R. Spigel医師、サラ・キャノン研究所最高科学責任者

研究要旨

テーマ未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子変異を有する非小細胞肺がん(ALK陽性 NSCLC)
対象者未治療の進行ALK陽性 NSCLC患者296人
主な結果ロルラチニブ治療を受けた患者はクリゾチニブ治療を受けた患者よりも転帰が良好であった。
意義2024年に米国では新たに約234,580人が肺がんと診断され、約125,070人が死亡するとアメリカがん協会は推定している。これらの肺がん症例の大部分はNSCLCである。
ALK遺伝子再構成は通常NSCLC患者の3%から5%に認められるが、特定のグループではより多く認められる可能性がある。
これらの結果は、NSCLCでこれまでに報告された無増悪生存期間(PFS)の中で最長である。
進行NSCLCは通常、骨、リンパ節および脳に転移する。これらの結果は、ロルラチニブが頭蓋内において新たなALK陽性病変を制限し、既存の病変を制御するという大きな利益も証明している。

未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子変異を有する未治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者では、ALKチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)ロルラチニブによる治療の結果、ALK TKIクリゾチニブによる治療よりも無増悪生存期間(PFS)が長く、脳転移の制御と予防が良好であった。本研究は、5月31日から6月4日までイリノイ州シカゴで開催される2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される予定である。

研究について

「新しい世代のALK TKIで大きな進歩があったにもかかわらず、第二世代のALK TKIで治療された患者の大多数は3年以内に病勢が進行します。ロルラチニブは、5年間の無増悪生存が報告されている唯一のALK TKIであり、この期間の後でさえ、大多数の患者は、脳内病変のコントロールを含め、病勢がコントロールされ続けています。われわれの知る限り、これらの結果は転移のあるNSCLC患者に対するいかなるTKIでも前例がありません」と、筆頭著者で、オーストラリア、メルボルンのピーターマッカラムがんセンターの肺腫瘍内科部長であるBenjamin Solomon氏(MBBS、PhD)は述べた。

第3相CROWN臨床試験では、未治療の進行ALK陽性 NSCLC患者296人が、ロルラチニブ投与群(149人)とクリゾチニブ投与群(147人、うち142人が最終的に治療を受けた)に無作為に割り付けられた。参加者の約25%には試験開始時に脳転移があった。試験参加者は59.1%が女性、43.9%がアジア人、年齢中央値は59歳であった。

ALKチロシンキナーゼ阻害薬は分子標的療法の一種で、ALK陽性 NSCLCに見られるALKタンパク質に結合する。これにより腫瘍細胞の増殖を止めることができる。

主な知見

  • 2023年10月31日現在、ロルラチニブ群では50%の患者(149人中74人)が治療を継続しており、クリゾチニブ群では5%の患者(142人中7人)が治療を継続している。
  • ロルラチニブ群のPFS中央値は統計学的に未到達であるが、ロルラチニブを投与された患者の半数以上は今のところ病勢進行がない。クリゾチニブ群のPFS中央値は9.1カ月であった。
  • 5年PFSが得られた患者はロルラチニブ群で60%、クリゾチニブ群で8%であった。
  • 脳内病勢進行までの期間の中央値はロルラチニブ群では未到達であり、クリゾチニブ群では16.4カ月であった。試験開始時に脳転移がなかった患者のうち、脳転移を発症した患者はロルラチニブ群で114人中わずか4人であり、いずれも治療開始後16カ月以内であった。

治療に関連した有害事象は、ロルラチニブ服用患者の77%およびクリゾチニブ服用患者の57%に発現した。有害事象による治療中止は、ロルラチニブ服用患者の5%およびクリゾチニブ服用患者の6%に認められた。主な有害事象は、浮腫(組織に水分が滞留して腫れること)、高コレステロール、脂質値上昇(高脂血症)であった。治療中止の原因となった有害事象は、認知機能への影響、高脂血症および心臓障害などであった。

研究者らは、ロルラチニブを投与された患者がクリゾチニブを投与された患者より長生きするかどうかを評価するため、試験参加者の追跡調査を継続する。また、ロルラチニブを投与された患者をPFS中央値に達するまで追跡する予定である。

本試験はPfizer社から資金提供を受けた。

非公開アブストラクト全文はこちら

  • 監訳 稲尾 崇(呼吸器内科/神鋼記念病院)
  • 翻訳担当者 坂下美保子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024年5月31日

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性の画像

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性

世界的に肺がんはがんによる死亡原因のトップであるが、その心理的、身体的な影響についてはほとんど研究されていない。オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院および...
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライトの画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト

ESMOアジア会議2024は、アジア地域における集学的腫瘍学に特化した年次イベントである。新しい治療法、特定のがん種の管理に関する詳細な議論、アジア全域を対象とした臨床試験、アジア地域...
米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認の画像

米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認

2024年12月4日、米国食品医薬品局は、以下の成人を対象にzenocutuzumab-zbco[ゼノクツズマブ-zbco](Bizengri[販売名:ビゼングリ]、Merus NV社...
STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効の画像

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...