【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性
ASCOの見解(引用)
「LAURA試験は、切除不能なステージIII疾患におけるEGFR標的療法の役割を明確にした最初の試験である。本試験ではオシメルチニブと現在の標準治療である免疫療法との比較はしなかったが、今回のデータは患者と腫瘍医の双方にとって大きな意味を持ち、EGFR遺伝子変異を有する患者の標準治療を変えることになるであろう」
- David R. Spigel医師(テネシー州ナッシュビル、サラ・キャノン研究所、最高科学責任者)
研究要旨
目的 | 上皮成長因子受容体変異(EGFR遺伝子変異;EGFRm)を有する非小細胞肺がん(NSCLC) |
対象者 | 切除不能なステージIIIのEGFRm NSCLC患者216人 |
主な結果 | 化学放射線療法後のオシメルチニブは、切除不能なステージIIIのEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者に対する新たな治療選択肢である。 |
意義 | 免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブは、切除不能なステージIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、化学放射線療法後に病勢が進行しない場合に使用される、現在の標準治療である。しかし、この治療法はEGFR遺伝子変異を有する患者には概して有効ではない。 オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異を有するステージ4のNSCLCの治療薬として、またEGFR遺伝子変異を有するステージIB、II、IIIAの切除可能なNSCLCに対する術後補助療法としてすでに承認されている。 |
オシメルチニブは、化学放射線療法を受けた切除不能なステージIIIのEGFR変異陽性NSCLC患者の無増悪生存期間を改善し、この集団の新たな標準治療となる可能性がある。本研究は、5月31日から6月4日までイリノイ州シカゴで開催される2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。
研究について
「現在のところ、切除不能なステージIIIのEGFRm NSCLCに特化して承認された標的治療薬はありません。LAURA試験で得られた優れた有効性と確実で多大な有益性により、オシメルチニブはこの患者集団における深刻なアンメットニーズ(必要な医療の未充足)の解決策となります」と、筆頭著者であるエモリー大学ウィンシップがん研究所(ジョージア州アトランタ)のSuresh Ramalingam医師(FACP, FASCO)は述べた。
国際共同第3相LAURA試験は、EGFR遺伝子変異を有する切除不能なステージIIIのNSCLCで、プラチナ製剤をベースとする化学放射線療法の治療中または治療後に病勢進行のない患者を登録した。参加者はオシメルチニブ投与群(143人)とプラセボ投与群(73人)に2対1の割合で無作為に割り付けられた。
参加者の年齢中央値はオシメルチニブ群で62歳、プラセボ群で64歳であった。参加者の大多数は女性(オシメルチニブ群63%、プラセボ群58%)、アジア人(オシメルチニブ群81%、プラセボ群85%)、喫煙経験なし(オシメルチニブ群63%、プラセボ群67%)であった。
主な知見
オシメルチニブはプラセボと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。PFS中央値はオシメルチニブ群で39カ月であったのに対し、プラセボ群では6カ月であった。
オシメルチニブ群では、12カ月後にがんの増悪がみられなかった参加者は74%、24カ月後にがんの増悪がみられなかった参加者は65%であった。これに対して、プラセボ群ではそれぞれ22%、13%であった。
オシメルチニブはプラセボと比較して、治療によりがんが30%以上縮小したことを意味する客観的奏効率が高かった(57%対33%)。
脳への新たな転移率は、プラセボ群(29%)と比較してオシメルチニブ群(8%)では低かった。
研究者らは、化学放射線療法の種類や患者のステージがIIIA期かIIIB/IIIC期かの違いなど、サブグループ間の比較も行った。オシメルチニブ群で認められた無増悪生存への有益性は、すべての解析サブグループで認められた。プラセボ群で病勢進行した患者のうち、81%がオシメルチニブ投与に移行した。
オシメルチニブの有害事象プロファイルは、これまでの研究で指摘されているものと概ね一致していた。本試験の両群で最も多くみられた副作用は、放射線性肺臓炎(胸部への放射線療法により肺に生じる炎症)、下痢、発疹であった。放射線性肺臓炎症例の大半は軽度から中等度であった。オシメルチニブ群では13%の患者が有害事象により治療を中止したのに対し、プラセボ群では5%であった。
次のステップ
研究者らは、オシメルチニブが全生存期間、脳転移、その他の転帰に影響を及ぼすかどうかを解明するため、引き続き参加者の追跡調査を行なう予定である。
本試験は AstraZeneca社から資金提供を受けた。
- 監訳 田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 呼吸器内科学分野)
- 記事担当者 山田登志子
- 原文を見る
- 原文掲載日 2024/06/02
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
肺がんに関連する記事
免疫療法薬2剤併用+化学療法はSTK11/KEAP1変異肺がんに有効
2024年11月18日
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる
2024年11月7日
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)
2024年10月17日
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長
2024年10月16日