グレシラシブがKRAS G12C変異陽性進行肺がんの治療に有望
ASCO専門家の見解
「今回の発表で、KRAS G12Cを阻害する複数の薬剤は、同程度に有効であるというデータを得ることができました。中国以外の国での臨床現場を変えるには、 この薬剤が、 たとえば、忍容性、投与量、有害事象、頭蓋内浸透性といった特性など、意義のある形で他の承認薬と差別化される必要があるでしょう。ここで重要なのは、前治療が行われた領域で活性を示す新たな薬剤が登場したということです。本薬は、消化管関連の有害事象の発生率が低く、有望な安全性プロファイルを示しており、他のKRAS G12C阻害薬とは一線を画す可能性があります」。
–肺がん分野のASCOエキスパート、Charu Aggarwal医師
KRAS G12C阻害薬であるglecirasib [グレシラシブ]は、KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対して有望な転帰を示した。これらの結果は米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズの2024年4月のセッションで発表される。
KRAS G12C変異は、中国におけるNSCLC症例の約4.3%に認められるが、現在中国ではこのタイプの変異に対して承認された標的治療薬はない。中国の43施設で実施されたこの第2相単群試験により、化学療法および免疫療法による標準治療後に進行した患者に対する、グレシラシブの有効性に関する新たなデータが得られた。
本試験には、プラチナ製剤および免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けたことのある進行期のNSCLC患者119人が登録された。主要評価項目は全奏効率(ORR)で、副次的評価項目は奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)であった。
主な知見
・グレシラシブは47.9%のORRと86.3%の病勢コントロール率を達成した。
・PFSの中央値は8.2ヵ月、OSの中央値は13.6ヵ月であり、国際的な標準と比較しても良好な数字であった。
・本治療の忍容性は良好で、治療関連有害事象(TRAE)により治療を中止した患者はわずか5%であった。最も多かった治療関連有害事象は貧血とビリルビン値の上昇であった。
・著者らによれば、最も注目すべき点は、特にFDAに承認されている他のKRAS G12C阻害薬と比較した場合、胃腸毒性が低いことであった。
「中国では、KRAS G12C遺伝子変異を有する患者さんに対する標的薬は少ないです。グレシラシブは、
現在中国でNSCLCを対象に臨床開発中のKRAS G12C阻害薬の中で、最新の薬剤です。この重要な臨床試験の速報結果では、FDA承認のKRAS G12C阻害薬であるソトラシブおよびアダグラシブと比較して良好な有効性が示され、観察された消化管毒性プロファイルも低く、経口治療に対する患者のコンプライアンス向上に役立つと思われます」と、筆頭著者である中国医学科学院(北京)のYuankai Shi医師は述べた。
抄録と発表は、2024年4月30日15:00(米国東部時間)にこちらで公開される。
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著者の開示情報は原文を参照。
- 監訳 吉松由貴(呼吸器内科/University of Greenwich, Queen Elizabeth Hospital)
- 翻訳担当者 平沢沙枝
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- 原文掲載日 2024/04/29
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