低線量CTによる肺癌検診は過剰診断につながる可能性

キャンサーコンサルタンツ

JAMA Internal Medicine誌に掲載された試験結果によると、低線量CT検査を用いた肺癌検診は過剰診断となる可能性がある。

米国では男女とも癌死亡の原因の第一位は肺癌である。肺癌は進行期で治療困難なステージで発見されることが多い。

癌検診には症状がまったくない人の癌を初期ステージで発見する検査も利用される。検診は、乳癌、大腸癌、子宮頸癌などに対して癌死亡率の減少に貢献してきたが、肺癌の早期発見は比較的難しいことがわかっている。検診の新たな方法が定期的臨床ケアに採用されるには、転帰が改善できるほど十分早い時期に癌を発見できて経済的に見合い、認容できる精度で癌が発見できる方法でなければならない。

低線量CT検査は放射線画像診断法の一種で、胸部X線よりも小さな結節を識別でき、肺癌検診の有力な候補となっている。低線量CT検査は肺癌の早期発見が可能であるが、臨床症状を生じないかもしれない無痛性腫瘍までも検出することになり、偽陽性結果および過剰診断につながる。過剰診断は、医療費の増加、不安、そして死にいたる合併症を引き起こす不必要な侵襲的手技につながるなど多くの点で問題がある。

研究者は過剰診断を評価するために全米肺検診試験(National Lung Screening Trial :NLST)のデータを用いた。NLST試験とはランダム化試験で、低線量CT(LDCT)と胸部X線(CXR)の2種の異なる検診手法で、肺癌リスクが非常に高い53,452人の比較を行った。参加者は過剰診断割合を評価するために6.4年間観察された。

NLST試験では、低線量CTを用いた検診によって死亡率が相対的に20%減少し、また、肺癌死を予防できる1人を検出するのに必要な参加者数は320人だった。しかしながら、検診手法が有望であったとしても、同時にリスクもある。今回の調査では、低線量CTを用いた検診で見つかった肺癌が過剰診断であった確率は18.5%であった。さらに重要なことに低線量CTで発見された非小細胞癌(NSCLC)が過剰診断であった確率は22.5%であり、低線量CTで発見された気管支肺胞癌が過剰診断であった確率は78.9%であった。NLST試験において1人の肺癌死を防ぐために必要な検診参加者数320人の中で発見された過剰診断事例は1.38例であった。

研究者は、NLST試験の中で低線量CTによって発見される全ての肺癌のうち18%を越える癌が緩慢性(進行が非常に遅いか進行しない)であると結論づけており、肺癌の低線量CT検診のリスクのひとつとして過剰診断を考慮すべきと述べている。

引用文献:
Patz EF, Pinsky P, Gatsonis C, et al. Overdiagnosis in low-dose computed tomography screening for lung dancer. JAMA Internal Medicine. Published online December 09, 2013.
doi:10.1001/jamainternmed.2013.12738

  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 大木勝弥 

監修 大渕俊朗(呼吸器外科/福岡大学医学部)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効の画像

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させるの画像

先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解(引用)
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)の画像

世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)

特集:術前・術後の免疫療法、HER2およびEGFR遺伝子変異を標的とした治療など、肺がん治療における有望な臨床的進歩テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは...
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長の画像

肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解「過去15年間にわたり、ミシシッピ・デルタ中心部における質改善の取り組みは、この高リスク集団の...