肺がんに術前デュルバルマブ併用免疫療法が有効
MDアンダーソンがんセンター
橋渡し研究の知見が、単剤療法より併用療法を支持
早期の非小細胞肺がん(NSCLC)の術前(前外科的)療法において、抗PD-L1モノクロナール抗体のデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)と他の新規薬剤との併用免疫療法が、デュルバルマブ単独療法より効果が優れていることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによって示された。
Cancer Discovery誌に2023年9月14日に掲載されたこの知見は、2022年の米国がん学会(AACR)年次総会で最初に発表されたものである。
多施設共同ランダム化第2相臨床試験NeoCOASTでは、術前療法としてデュルバルマブ単独療法、および同剤と3つの新規免疫療法薬(抗CD73モノクローナル抗体oleclumab [オレクルマブ]、抗NKG2Aモノクローナル抗体monalizumab[モナリズマブ]、抗STAT3アンチセンスオリゴ核酸danvatirsen[ダンバチルセン])それぞれとの併用療法を評価した。本試験は統計学的に治療群を比較する検出力を有していなかったが、すべての併用療法においてデュルバルマブ単独療法よりも高い、主要な病理学的奏効率(MPR)が得られた。
「この研究は、免疫併用療法が研究対象の患者集団に対し術前療法で有効であるという、蓄積されつつあるエビデンスに基づいています」と胸部・頭頸部腫瘍内科学助教で本研究の筆頭著者であるTina Cascone医学博士は語る。「最終的には、患者にがんが再発せず延命できるチャンスを与えたいのです」。
NeoCOAST試験は、非小細胞肺がんの術前治療における最近の進歩を増進する。例えば、昨年Cascone博士が報告した二ボルマブ(販売名:オプジーボ)とイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)の併用療法で二ボルマブ単独療法よりも高い奏効が導かれることを示す第2相NEOSTAR試験の結果や、Checkmate-816試験に基づき、2022年3月に承認された二ボルマブとプラチナ製剤を中心とした化学療法との併用療法などである。第2相COAST試験で以前評価したデュルバルマブ併用療法は、切除不能なステージ3の非小細胞肺がんに有効であることが示され、より早期のステージの疾患で評価される根拠となった。
NeoCOAST試験には、2019年3月から2020年9月にかけて、未治療の切除可能(2cm超)なステージ1~3Aの非小細胞肺がん患者84人が登録された。患者の多くは男性(59.5%)で喫煙歴があった(89%)。年齢中央値は67.5歳で、人種内訳は白人が89%、黒人が6%、アジア系が2%、その他が2%であった。83人の患者は、28日間のデュルバルマブ単独または他の治療法との併用による術前化学療法を1サイクル受けた。
主要評価項目は、試験分担医師が評価する病理学的奏効率(MPR)で、手術時に切除された腫瘍組織および採取されたリンパ節に残存する残存生存腫瘍細胞が10%以下と定義された。副次的評価項目として、試験分担医師は病理学的完全奏効(pCR)、すなわち生存腫瘍細胞の完全消失を評価した。探索的評価項目は、腫瘍、糞便、血液のバイオマーカーなどであった。
すべての併用療法は、単剤療法よりもMPRおよびpCRについて数値的に高い奏効率を示し、併用療法群間で奏効率に統計学的な有意差は認められなかった。
●デュルバルマブ単剤療法を受けた患者では、MPRが11.1%、pCRが3.7%であり、これは他の単剤療法試験の結果と同等であった。
●併用療法のMPRは19%(オレクルマブ)~31.3%(ダンバチルセン)、pCRは9.5%(オレクルマブ)~12.5%(ダンバチルセン)であった。モナリズマブとの併用療法では、MPRは30%、pCRは10%であった。
デュルバルマブ単剤療法群の安全性プロファイル(34.6%の患者に治療関連有害事象が認められた)は、抗PD-1/PD-L1抗体に関する既報のデータと同程度であった。いずれの併用療法においても新たな安全性シグナルは確認されなかった(43.8%~57.1%の患者で治療関連有害事象が認められた)。
病理学的奏効(MPR)は、オレクルマブおよびモナリズマブ併用群でベースライン時の腫瘍PD-L1発現率が1%以上であることと関連していた。オレクルマブ(抗CD73)併用群では、ベースラインのCD73発現が高いことが病理学的腫瘍退縮と関連しており、治療により腫瘍細胞上のCD73発現が減少したことは、他の研究で以前に観察されたとおりであった。オレクルマブ併用療法もまた、ベースラインと比較して、治療時の腫瘍中心におけるナチュラルキラー(NK)細胞およびCD8T細胞の密度が高く、腫瘍微小環境におけるエフェクター細胞の浸潤が増加することが示唆された。
腫瘍組織と血液サンプルを用いた最新の橋渡し研究により、術前治療の免疫系への影響が明らかになった。治療前後のサンプルのトランスクリプトーム解析では、細胞毒性、三次リンパ様構造、リンパ球の増加など、免疫応答の活性化の指標に関連する遺伝子の発現増加が示された。
血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が検出されない患者数は、治療前から治療後および術後のフォローアップにかけて次第に増加し、ctDNAレベルの低下と患者の転帰の改善との関係が強調された。注目すべきは、手術がctDNAの排除をもたらす最も効果的な介入であったことである。研究者らは、有益な細菌が、MPR達成をした患者の腸内細菌叢に豊富であることも発見した。それらの細菌は以前、いくつかのがん種において良好な免疫療法反応と関連性があった。
「私たちの研究は、橋渡し研究の知見を念頭に置いてデザインされた臨床試験によって、免疫療法ベースの新規併用療法をより大規模な試験へと迅速に進めることを後押しできる、その証なのです」とCascone博士は語る。「早期の非小細胞肺がん患者の再発リスク低減と治癒率向上を目指し研究する中で、このような初期段階での知見は心強いものです」。
本研究の限界としては、評価項目の探索的性質、サンプルサイズが小さいこと、中央判定を経ずに試験分担医師が結果を評価したことなどが挙げられる。
これらの結果と最近の二ボルマブ+化学療法の術前併用療法の承認に基づき、チームは追跡調査のためのランダム化比較試験、NeoCOASTー2を開始し、Cascone博士が包括的な治験責任医師を務めている。この試験では現在、切除可能なステージ2A~3Aの非小細胞肺がん患者を登録しており、術前療法としてデュルバルマブ+化学療法+オレクルマブまたはモナリザブの併用療法を行う。その後、手術を行い、術後にデュルバルマブ+オレクルマブまたはモナリズマブの併用療法を行う。
本試験は、デュルバルマブ、オレクルマブ、モナリズマブ(モナリズマブのみInnate Pharma社との共同開発)を開発したアストラゼネカ社から資金提供を受けている。Cascone博士は、Medlmmune社/アストラゼネカ社の顧問・相談役の任務につき、企業サポートおよび研究コンサルティング契約をしていることを報告している。共著者一覧および開示情報はこちら。
- 監訳 川上正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)
- 翻訳担当者 山口みどり
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- 原文掲載日 2023/09/14
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