新ALK阻害剤は脳転移を有するNSCLC患者にも効果

キャンサーコンサルタンツ

新規分子標的薬AP26113は、クリゾチニブ(ザーコリ)による治療後に脳転移が認められた患者をはじめ、クリゾチニブ抵抗性およびクリゾチニブ未治療の非小細胞肺癌患者に強い抗腫瘍効果を示すことがわかった。

肺癌は米国および世界中で、癌による死亡原因の第1位であり、効果的な治療法を新たに発見することが重要である。非小細胞肺癌(NSCLC)の最大7%に未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子変異がみられる。このような遺伝子変異を有する肺癌は通常は非喫煙者において発症する。遺伝子変異は癌細胞の増殖や発現の原因となっている。クリゾチニブはNSCLC治療に使用される別のALK阻害剤であるが、患者の大半がこれに抵抗性を示すようになると思われる。

AP26113はチロシンキナーゼ阻害剤として知られる新規分子標的薬であり、未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子変異(ALK+)や上皮成長因子受容体遺伝子変異(EGFRm)を強力に阻害するが、野生型のEGFRは阻害しない。

研究者らは、AP26113に関して多施設共同非盲検の第1/2相試験を実施した。この試験は用量増量試験として3+3デザインで行われた。第1相試験では、30~300mg/日の範囲で投与量が検討され、第2相試験において180mg/日を経口投与することが決定された。第2相試験は、5つのコホート(計85人のNSCLC患者から成る4つのコホートと、他のALK陽性腫瘍患者20人から成るもう1つのコホート)を対象として行われた。

AP26113はほとんどの場合、忍容性がきわめて高かった。頻繁にみられたすべてのグレードの有害事象には、悪心(38%)、疲労感(34%)および下痢(32%)などがあり、12%には肝酵素値の上昇がみられた。治療によって発現したグレード3以上の有害事象がすべての投与量レベルで2%から4%にみられ、その症状は呼吸困難、疲労感、下痢、低酸素症および肺臓炎などであった。25人中3人の患者において、180mg/日の投与量レベルで肺症状が早期にみられたが、低用量ではほとんどみられなかった。このような症状は薬剤の中止で回復し、一部の患者は減量して継続できた。今後の試験ではステップアップ方式を取り入れ、180mg/日にまで投与量を増やす前に90mg/日を7日間にわたり投与する。

客観的奏効は、ALK陽性NSCLC患者34人のうち22人(65%)にみられた。奏効率はクリゾチニブによる治療歴がある患者において61%であり、クリゾチニブ未治療の患者3人がすべて奏効し(100%)、1人には完全奏効がみられた。脳転移がある患者10人のうち8人(80%)ではX線画像において病変消退が示され、40週間以上にわたり改善していることが報告された。

研究者らはデータが十分でないことについて言及しているが、患者の80%が治療後6カ月時点で引き続き治療を受けており、脳転移に対する著明な奏効も認められている。

研究者らは、AP26113がクリゾチニブ未治療およびクリゾチニブ抵抗性のNSCLC患者に対して引き続き抗腫瘍効果を示しALK陽性脳転移にも有効であると結論づけ、臨床的に有意義な持続的奏効を明らかにした。

参考文献:
Camidge DR, Bazhenova L, Salgia R, et al. Updated results of a first-in-human dose-finding study of the ALK/EGFR inhibitor AP26113 in patients with advanced malignancies. 2013 European Cancer Congress. Abstract 3401.


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翻訳担当者 寺本瑞樹

監修 後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)

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