アファチニブは進行肺癌の増悪までの期間を延長する

キャンサーコンサルタンツ

第48回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会(イリノイ州シカゴ市)で発表された試験結果によると、初回治療に分子標的薬アファチニブを使用すると、標準化学療法使用時と比較して、上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル伝達経路変異陽性進行肺癌患者の無増悪生存期間(PFS)が延長する。

肺癌は依然として米国における癌による死因の第1位である。非小細胞肺癌は、肺癌全体の約85%を占める。ある非小細胞肺癌のサブタイプは、EGFRシグナル伝達経路変異により生じる肺癌の一種である。毎年米国では、18,000人超が、EGFRシグナル伝達経路変異陽性非小細胞肺癌と診断される。EGFRシグナル伝達経路変異陽性非小細胞肺癌は、非喫煙者とアジア人に認められる。

EGFRは、癌増殖に関与する多数の癌細胞表面に存在するタンパク質である。分子標的薬は、EGFRシグナル伝達経路を阻害することで、癌増殖抑制を促す。アファチニブは臨床試験用分子標的薬で、EGFRシグナル伝達経路の他に、HER2(ErbB2)やHER4(ErbB4)などのEGFRシグナル伝達経路と関連する受容体であるErbBファミリーを阻害する。アファチニブは、他の分子標的薬と比較して、EGFRシグナル伝達経路を最も強力に阻害するとみられている。

本試験には、EGFRシグナル伝達経路変異陽性進行非小細胞肺癌患者345人が参加した。上記の患者は、アファチニブ投与患者と標準化学療法使用患者にランダムに割り付けられた。中央値8カ月間の追跡調査を経て、アファチニブは、標準化学療法と比較して、増悪までの期間を4カ月以上延ばした。―PFSは、アファチニブ投与患者で11.1カ月、一方、標準化学療法使用患者で6.9カ月であった。

アファチニブは、全EGFRシグナル伝達経路変異の約90%を占める高頻度で発生する変異(Del19変異やL858R変異)2種類のうちの1種類を有する患者308人に対して、特に有効であった。アファチニブ投与患者では、その殆どでPFSが標準化学療法使用患者の約2倍に延長した。―PFSは、アファチニブ投与患者で13.6カ月、一方、標準化学療法使用患者で6.9カ月であった。

アファチニブ投与患者は、標準化学療法使用患者と比較して、生活の質が良好であった、また、咳や呼吸困難などの肺癌の症状の悪化が遅くなった。

本試験由来の全生存期間のデータは、約2年間は利用できる。この点において、研究者らは、アファチニブは、他の分子標的薬と比較して、EGFRシグナル伝達経路を、より広範にかつより効果的に阻害する可能性が高いと推測する。また、アファチニブは臨床における初回治療のオプションになるだろうと結論づけた。アファチニブにより、EGFRシグナル伝達経路変異陽性非小細胞肺癌患者は増悪せずに、より長期間生存できる可能性がある。その上、アファチニブは経口薬であるため、通院回数が減り、また、生活の質が改善される可能性がある。

参考文献:

Yang JCH, Schuler MH, Yamamoto N, et al. LUX-lung 3: A randomized, open-label, phase III study of afatinib versus pemetrexed and cisplatin as first-line treatment for patients with advanced adenocarcinoma of the lung harboring EGFR-activating mutations. Presented at the 2012 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology, June 1-5, 2012, Chicago, IL. Abstract LBA7500.


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翻訳担当者 渡邊 岳

監修 大渕俊朗(呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部)

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