非小細胞肺癌の治療で重要な要因は年齢だけでなく全身状態

キャンサーコンサルタンツ

Journal of Clinical Oncology誌に発表された試験結果によると、NSCLC(非小細胞肺癌)の若年患者は、全身状態や予後にかかわらず、高齢患者より治療を受ける傾向が強い。

米国では、肺癌は依然として癌による死亡原因の第一である。NSCLC(非小細胞肺癌)は、肺癌の約85%の割合を占めている。

NSCLCは、65歳以上で発症するケースが多いが、高齢患者は積極的な治療に耐えられないという懸念に加え、高齢患者への最適な治療法については限られた情報しかない。その結果、高齢患者は効果を期待できる治療を受けていない場合が多い。例えば、若年患者には多剤併用化学療法が一般的であるのに対し、高齢患者には単剤化学療法が行われることなどが挙げられる。

これまでの研究では、癌であることを除き、全身状態が良好なNSCLCの高齢患者は、治療により奏効する可能性が高く、併存疾患の高齢患者(他に重篤な疾患がある)は癌治療による毒性が生じやすいため、治療に耐えられず、治療の全工程を終了できない傾向が強いと示唆されてきた。

併存疾患と年齢が治療結果に及ぼす影響を調査するために、研究者らはVeterans Affairs Central Cancer Registry(退役軍人中央がんレジストリ)のデータを用いて、20,000人を超える65歳以上のNSCLC患者が受けた治療と治療成績を分析した。研究者らによると、治療率は、癌のステージにかかわらず、併存疾患よりも加齢に伴って低下することが明らかになった。

より年齢の低い患者(65~74歳)は、併存疾患の状態にかかわらず、治療を受ける傾向が強かった。つまり、治療による効果を期待できず、不利益となる可能性の高い重篤患者は、同じ年齢層でかつ重篤な疾患のない患者とほぼ同じ割合で治療を受けていた。一方、高齢患者(75~84歳)は、併存疾患がなく、予後が良好であっても、治療を受けない傾向があった。

研究者らは、医師は他の要因を見落とし、ひたすら年齢を基準にして治療を行っていると結論付けた。患者の全身状態は、治療を決定する上で重要な要因である。つまり、全身状態が良好な75歳の患者でも治療に耐えうる可能性があり、65歳の重篤患者には耐えられない可能性があるということである。したがって、治療による効果が期待できる高齢のNSCLC患者に対しては、年齢を基準にするのではなく、患者個人の状態に合わせて治療を決定しなければならない。

参考文献:

Wang S, Wong ML, Hamilton N, et al: Impact of age and comorbidity on non-small-cell lung cancer treatment in older veterans. Journal of Clinical Oncology. 2012; 30(13): 1447-1455.


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翻訳担当者 森島由希

監修 野長瀬祥兼(社会保険紀南病院)

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