アバスチンの併用投与は非小細胞肺癌(NSCLC)の高齢患者の生存率を改善しない

キャンサーコンサルタンツ

非小細胞肺癌の標準化学療法レジメンに対するアバスチン(ベバシズマブ)の併用投与は65歳を超える進行非小細胞肺癌患者の生存率を改善しない。この研究結果はJournal of the American Medical Association誌上で発表された。[1]

米国では、肺癌は未だに癌による死亡の首位を占めている。非小細胞肺癌は肺癌の約85%の割合を占めている。

アバスチンはVEGF(血管内皮増殖因子)蛋白の結合を阻害する、分子標的薬である。VEGFは血管新生の主要な調節因子である。アバスチンはVEGFを阻害することにより、癌への栄養および酸素の供給を断ち、成長を阻害する。

標準化学療法レジメン(カルボプラチン+パクリタキセル)にアバスチンを併用投与することにより、非小細胞肺癌の患者の生存率が改善されることが、今までの研究により報告されている。しかし、これらの結果は高齢患者においては得られていない。ダナファーバー癌研究所の研究者らは、このレジメンの高齢患者に対する有効性を検討するために2002から2007年の期間で、メディケアにおいて、非小細胞肺癌でIIIBまたはIVのステージにあると診断された、65歳以上の4,168人の患者のデータを調査した。

彼らは、患者を次の3群に分けて、生存率を計算した。
1)アバスチン+カルボプラチン/パクリタキセルを投与した患者
2)2006-2007年の間にカルボプラチン/パクリタキセルを投与した患者
3)2002-2005年の間にカルボプラチン/パクリタキセルを投与した患者

全生存期間の中央値は、アバスチン+標準療法による治療群9.7カ月、2006-2007年の期間の標準療法群8.9カ月、2002-2005年の期間の標準療法群8.0カ月であった。1年後の生存確率はアバスチン+標準療法群39.6%、2006-2007年の期間の標準療法群40.1%、2002-2005年の期間の標準療法群35.6%であった。

研究者らは、65歳を超える患者にアバスチンを標準化学療法に併用投与しても、生存率に重要な改善をもたらさない、と結論付けている。彼らは、非小細胞肺癌の高齢患者に対し、アバスチンを機械的に標準化学療法に加えるべきではなく、高齢患者においては、個々の症例に応じて治療レジメンを決定すべきであると提言している。

参考文献:

[1] Zhu J, Sharma DB, Gray SW, et al. Carboplatin and paclitaxel with vs without bevacizumab in older patients with advanced non–small cell lung cancer. JAMA. 2012; 307(15): 1593-1601.


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翻訳担当者 古屋千恵

監修 大渕俊朗 (呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部)

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